- 公開日:2024.03.14
【飲み合わせ一覧表】小児の粉薬に合う飲食物の飲み合わせと粉薬の飲ませ方について
子どもの粉薬は基本的に甘く作られていますが、抗生剤や抗ウイルス薬などは少し苦味が残り、飲みにくいものもあります。また粉薬は成分によって飲み合わせが良いものと悪いものがあり、組み合わせにより味が大きく変わってきます。
そのため、子どもに薬を飲ませなければならない親御さんからの相談や質問も多いでしょう。今回は、飲み合わせ一覧表とともに、小児の粉薬の飲ませ方を解説します。
苦くて飲みにくい?小児の粉薬における特徴とは
小児の粉薬にはどのようなものがあるのか、小児の粉薬における特徴をそれぞれ解説します。
【一覧表】よく処方される小児の粉薬と味
よく処方されやすい小児の粉薬と、味の特徴を表にまとめました。
薬の種類 | 薬の名前 | 味 |
抗菌剤 | セフゾン細粒 | 甘い |
セファクロル細粒 | 甘い、やや苦い | |
メイアクト細粒 | やや苦い | |
ワイドシリン細粒 | 甘い | |
解熱鎮痛薬 | カロナール細粒 | 甘いが後に苦い |
抗アレルギー薬 | シングレア細粒 | わずかに甘い |
気管支拡張薬 | メプチン顆粒 | 甘い |
薬は苦いイメージがあるかもしれませんが、小児の粉薬のほとんどは、甘く飲みやすいように作られています。抗生剤はほかの粉薬に比べると、後味が残るようなやや苦味のあるものも多く、苦手な子どもも、多いです。
小児の粉薬は服薬補助食品と合わせるのがおすすめ
苦味のある薬は「服薬補助食品」と呼ばれるものと合わせて内服するのがおすすめです。服薬補助食品とはヨーグルトやプリン、ゼリーやアイスクリームなど、薬と一緒に飲むと飲みやすくなる食品を指します。
しかし、服薬補助食品のなかにも混ぜると苦味が増すものや、効果が低下する恐れがあり、混ぜてはいけないものもあるため、注意しましょう。
下記が味に変化が現れて内服しやすくなる服薬補助食品です。
※()表記は味の変化がなく、飲みやすくなるわけではない食品のこと
薬の種類 | 薬の名前 | おすすめの服薬補助食品 |
抗菌剤 | セフゾン細粒 | ココア、プリン、牛乳、アイス、お茶、ヨーグルト、りんごジュース、オレンジジュース、乳酸菌飲料、スポーツ飲料 |
セファクロル細粒 | プリン、牛乳、ヨーグルト、(ココア) | |
メイアクト細粒 | ココア、牛乳、アイス、お茶、オレンジジュース、(ヨーグルト) | |
ワイドシリン細粒 | 牛乳、アイス、お茶、ヨーグルト、りんごジュース、オレンジジュース、乳酸菌飲料、スポーツ飲料、(ココア、プリン) | |
解熱鎮痛薬 | カロナール細粒 | 牛乳、アイス、(ココア、プリン、アイス、乳酸菌飲料) |
抗アレルギー薬 | シングレア細粒 | 牛乳、ヨーグルト |
気管支拡張薬 | メプチン顆粒 | プリン、アイス、乳酸菌飲料、(ココア、牛乳、お茶、ヨーグルト、りんごジュース、オレンジジュース、スポーツ飲料) |
そのほかの細かな飲み合わせについては下記参考資料を確認してください。
服薬補助食品を使う場合の注意点
服薬補助食品と混ぜ合わせた薬は、時間を置かずにすぐに飲むようにします。混ぜてから時間を置いてしまうと、苦くなったり効果が低減したりしてしまう薬もあるためです。
また新生児や幼児の場合、ミルクや離乳食に混ぜるのはおすすめしません。薬が入っていることが分かると、食事をあまり食べなくなってしまう恐れもあるので、避けるように伝えましょう。
小児患者の服薬コンプライアンス向上にむけて ~自験例における工夫の提示を通じて~ |J-STAGE 小児における服薬支援 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター|J-STAGE
小児の粉薬の内服における注意点
ここからは小児の粉薬の内服における注意点を解説していきます。主な注意点は下記の3つです。
それぞれ解説していきます。
毎食後など決まった時間での内服が難しい場合
小児の場合、成人とは異なり、毎食後の内服や朝夕の内服など、決まった時間に薬が飲めないこともあります。薬の味が嫌で飲まないケースや、保育園や学校があり、昼の薬を持っていくのを忘れてしまうなど、起こりうるでしょう。
例えば1日3回飲む必要がある薬は毎食後ではなく、朝、学校帰宅後、就寝前のタイミングで飲むようにするなど、それぞれの起こりうる事案に対して、親御さんと薬剤師で相談して対応を考えるようにしましょう。
小児の適応がないとされる薬を使用するケースもある
実際に小児に使用される薬でも、医師の判断のもと、添付文書上などには、小児に適応がない薬が処方されることもあります。
適切な用法用量がわからないというケースも生じるため、さまざまな書籍や事例などから薬剤師も学びながら、小児や親に対して症状や処方経緯について、ヒアリングしていく必要があるでしょう。
小児の食物アレルギーに注意が必要
小児に処方される薬のなかには、卵や牛乳、ゼラチンなどのアレルギーに注意が必要なものもあります。しかし、アレルギーの有無について聞かれると、薬剤アレルギーについての回答をされる場合もあるため、食物アレルギーに関してもしっかりと確認しましょう。
粉薬と服薬補助食品の飲み合わせのご紹介|国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児患者の服薬コンプライアンス向上にむけて ~自験例における工夫の提示を通じて~ |J-STAGE 小児における服薬支援 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター|J-STAGE
【質問集】先輩薬剤師に聞く!小児の粉薬の内服方法
ここでは、小児の粉薬の内服について親が抱える疑問点や内服の難しさから、薬局で聞かれやすい質問について回答していきます。
Q.学校や習い事の関係で内服時間がずれてしまいます。
A.完璧な間隔で内服させる必要はありません。
前の薬と最低でも◯時間程度開けてほしいといった適切な間隔が各薬にあるため、何時間開けてどのタイミングで飲むかなどを、提案してあげられると良いでしょう。
Q.薬を飲んでからお腹の調子が悪いみたいですが、関係ありますか?
A.便秘や下痢など、何らかの消化器官に、副作用が生じているかもしれません。
患者さまが辛い場合は、再度受診をご提案するのも良いでしょう。
副作用が重くなければ、「このまま治療を優先することも可能ですが、ご希望はございますか?」と患者さまにお伝えしてあげましょう。
Q.「苦い」という理由で、どうしても薬を飲んでくれません。
A.薬について、味の面で拒薬が生じるケースはめずらしくありません。
服薬補助食品の提案など、子どもの年齢や好みに合わせて、飲ませ方を提案してあげると良いでしょう。
粉薬と服薬補助食品の飲み合わせのご紹介|国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児患者の服薬コンプライアンス向上にむけて ~自験例における工夫の提示を通じて~ |J-STAGE 小児における服薬支援 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター|J-STAGE
小児の粉薬の内服に関する服薬指導のポイント
小児の粉薬の内服に関する服薬指導を行う際は、主に以下のポイントに注意しましょう。
小児の好みによって飲み方を考える
前述の通り、粉薬が苦手な方には服薬補助食品の使用を検討したり、服薬ゼリーなどの使用を検討したりしていきます。しかし、ここで重要なのは、一括りに「小児だから粉薬が苦手」と考えないようにすることです。同じ小児であっても、個々の得意・不得意を尊重した服薬指導を意識しましょう。
実際にすべての小児が粉薬を嫌う訳ではなく、粉薬を飲むのが得意な子もいます。子どもそれぞれの好みによって飲み方を考える必要があるため、薬剤師は親御さんや小児との対話のなかで特性を把握し、飲み方のアドバイスをしていきましょう。
病院と薬局間の連携の重要性を伝える
患者さまによっては、複数の病院を定期的に受診していたり、病院を変更したりして、さまざまな病院から薬が処方されているケースもあります。
小児の場合はとくに薬物動態に関して予測が難しく、アレルギー情報の共有や薬の飲み合わせにも敏感になる必要があります。
そのため、親御さんへ病院と薬局間の連携の重要性を伝えて、必ずほかの病院や薬局での処方があるかどうかを、お薬手帳などを通じて共有してもらうようにしましょう。
薬の管理に気をつけて誤飲を必ず防いでもらう
家族の中に、種類の異なる粉薬を内服している方がいるケースもあります。粉薬は見た目だけでは違いがわからないものもあり、注意が必要です。
小児が成人の粉薬の量を間違って内服することは、非常に危険であるため、必ず指定した容器に保管したり、小児と大人の薬の保管場所を分けたりなど管理を徹底するよう伝えましょう。
実際に国立成育医療研究センターにおける小児の服薬支援の資料において、2018年度の医薬品・医薬部外品の誤飲は109例(全体の17.4%)とタバコの誤飲に次いで高い数値となっています。小児とその親だけでなく、同居する家族全員に誤飲が危険なことを知らせるように指導しましょう。
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小児の粉薬の内服に関する注意点を知り、服薬指導が正しくできるようになろう
記事内では小児の粉薬の味と飲み合わせについてや、内服の注意点、小児の粉薬の内服に関する服薬指導のポイントなどを紹介してきました。
小児の服薬指導では、それぞれの特性を理解した上で、適切な服薬指導をする必要があります。飲み合わせの良い服薬補助食品もあるため、お子さまの好きなものを教えていただき、アドバイスするのも良いでしょう。
服薬指導のポイントを参考に、小児の患者さまが安心・安全に粉薬を内服できるようにしましょう。
監修者:藤原 智沙恵(ふじわら ちさえ)さん
メーカーでヘルスケア用品の研究に従事し、商品開発から薬事申請、特許出願まで幅広く携わる。転職して5年間薬局薬剤師として勤務したのち、薬剤師ライターとして独立。
研究職の経験から徹底したリサーチが得意であり、エビデンスの高い記事を書くライターとして定評がある。
アトピー性皮膚炎の新規治療薬の探索に関する海外での学会発表や、化粧品成分をノロウイルス不活化製剤に応用した技術で特許を取得するなど、研究分野で幅広い実績を持つ。