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  • 公開日:2023.01.16

退院時カンファレンスにおける薬剤師の役割とは?スムーズな在宅医療移行のためにできること

退院時カンファレンスにおける薬剤師の役割とは?スムーズな在宅医療移行のためにできること

近年では病院薬剤師と調剤薬局の薬剤師(以下、薬局薬剤師)による「薬薬連携」が注目を集めており、患者さまに継続した薬物療法を安心安全に提供することが期待されています。「退院時カンファレンス」は、とくに入院治療から自宅での療養などに切り替えるケースなどで重要な役割を果たしています。

この記事では、退院時カンファレンスの概要や流れ、薬剤師の役割について解説していきます。

退院時カンファレンスとは?

退院時カンファレンスとは?

退院時カンファレンス(退院前カンファレンス)とは、患者さまの入院中に院内スタッフと在宅サービスを担当するスタッフが情報共有を行い、現在の治療状況や退院に向けての方針などを共有する場のことを指します。適切な情報共有を経て患者さまを入院医療から在宅医療へと引き継ぐことにより、安心・安全な療養生活ができるように支援することが目的です。ただし、必ず行われるわけではなく、病院側の判断に応じて開催が決定します。

多くの場合、退院時カンファレンスを主催するのは、入院している医療機関の医療ソーシャルワーカー(MSW)です。参加する職種としては、病院側の医師や看護師、薬剤師、栄養士、リハビリスタッフに加えて、在宅サービス側のかかりつけ医、訪問看護師、ケアマネジャー、薬局薬剤師、歯科医師、訪問リハビリスタッフ、へルパーなどがあげられます。

退院時カンファレンスには、患者さま本人やその家族が参加する場合もあります。今後の治療に対する希望や意見を伺うほか、事前に在宅サービス側の担当者を紹介し、病院と在宅サービスの連携状況を確認してもらうことでスタッフとの信頼関係の構築や在宅療養への安心感につなげることが期待されているのです。

退院時カンファレンスの具体的な流れ

退院時カンファレンスの流れ

退院時カンファレンスの具体的な流れについて、一般的な例をあげて解説していきます。

1.日程調整

病院の退院調整担当者によって、日程調整が行われます。参加できないスタッフがいる場合には、患者さまや家族の了承を得たうえで、作成した記録を各担当者へ送り情報共有を行います。

2.出席者の紹介

出席者の紹介と、会議開催の目的について説明します。また、会議終了時刻についても事前に確認しておきます。

3.入院後の病状経過について

主治医や担当看護師より、病状の状況や経過、予後、医師より疾病管理における留意点などについて、情報共有が行われます。

4.現在の生活における自立度について

担当看護師やコメディカルから、現状の日常生活動作(ADL)や栄養、精神などの心身の状態をはじめ、服薬管理の状況などの情報共有が行われます。

5.患者さまや家族の希望のヒアリング

患者さまや家族から、退院後の希望や意見、現状の心配ごとなどについて聞き取りを行います。当事者の希望を優先して伺うことが重要です。

6.専門職からの今後の方針の共有

薬剤師を含む各担当コメディカルから、退院後に目指すべき指標について解説します。食事や入浴、排泄、移動などの日常生活動作(ADL)のなかでできるものとできないもの、また、入院中にできるようになったことがあれば具体的に説明します。

7.在宅療養における現状の課題や今後の方針について

担当看護師から、病気の管理に関する現状の課題と、可能な限り今後の方針について説明します。課題は、患者さまのセルフケア能力に関する課題はもちろん、介護や在宅医療を行う際の環境面の課題についても話し合っておくことが重要です。

8.在宅でのケアプランや方針について

担当ケアマネジャーより、今後のケアプランや介護サービスの内容について大まかに説明します。

9.在宅での服薬・薬剤管理や服薬支援について

担当看護師や薬剤師から、在宅での服薬および薬剤管理や服薬支援の方針について情報共有を行います。その際、薬局薬剤師からの意見も聞き取ります。

10.病院スタッフや在宅スタッフへの質問

最後に、病院スタッフおよび在宅スタッフから、お互いに質問がないか確認します。

退院時カンファレンスにおける薬剤師の役割とは?

退院時カンファレンスにおける薬剤師の役割とは?

退院時カンファレンスにおいて、薬剤師に期待されている役割にはどのようなものがあるのでしょうか。

退院後の処方案の確認

病院と在宅での療養では使用できる薬剤が異なるだけでなく、入院時のように服薬介助を受けられない場合もあるため、処方の再設計が必要なケースも少なくありません。退院後の処方案を薬物治療の専門家の視点から確認し、必要に応じて服薬回数の減少や剤形の変更など、患者さまが安心して治療を継続できる処方提案を行えると良いでしょう。

入院中の処方や退院後に必要な医療資材についての共有

退院時カンファレンスにおいて、主治医や担当看護師からは患者さまの治療経過や今後の予後、病状管理の注意点についての情報共有が行われます。薬剤師は入院中の服薬状況や退院後に必要な医療資材についての情報共有を行うほか、薬局薬剤師との連携を図り、より良い薬物治療を目指します。

薬物治療の切れ目ない継続のサポート

退院後から在宅医療が開始するまで、切れ目のない薬物治療を提供するためには、患者さまや在宅サービスを担当するスタッフがこれまでの治療計画を把握していることが重要です。患者さまや家族、薬局薬剤師に対して直接説明することにより、治療への理解度の促進や信頼関係の構築が期待されています。

日頃から医療機関との連携が重要!

日頃から医療機関との連携が重要!

退院時カンファレンスは、入院を終えた患者さまが在宅医療へとスムーズに移行できるようにするための大切な場です。入院中と在宅医療では患者さまを取り巻く環境が大きく異なるため、患者さま本人の生活様式や服薬能力に合わせて薬物治療をサポートしていくことが求められています。

しかし、薬局薬剤師の退院時カンファレンスへの参加は、まだまだ多くの地域で進んでいないのが現状です。退院時カンファレンスに呼ばれず、ケアマネジャーなどからの情報により患者さまの退院を知った、という経験のある薬剤師も少なくないのではないでしょうか。

退院時カンファレンスに参加するためには、多職種との綿密なコミュニケーションを通して、医療機関と日頃から連携しておくことが重要です。多職種が参加する地域の会議や勉強会に出席するほか、病院で入退院の調整を行う部門へアプローチし、積極的につながりをもちましょう。

薬局薬剤師と医療機関の連帯があってこそのサポート

この記事では、退院時カンファレンスの概要や流れ、薬剤師の役割について解説していきました。近年の診療報酬改定においても、入院時から退院後の生活を見据えた退院支援や、医療・介護を通じた多職種連携の強化が推進されており、退院時カンファレンスは非常に重要な役割を担っています。

一方で、薬局薬剤師が退院時カンファレンスに参加することはまだまだ少ないのが現状です。薬局薬剤師は、医療機関との日頃の連携を通して信頼関係を構築し、積極的に介入していくことが求められています。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2023/01/16

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