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  • 公開日:2022.09.14

【薬剤師向け】舌下免疫療法を詳しく解説!適切な服薬指導のために

【薬剤師向け】舌下免疫療法を詳しく解説!適切な服薬指導のために

アレルギー性鼻炎や花粉症の症状が生活に支障をきたし、病院・薬局に訪れる患者さまは多いもの。舌下免疫療法は、そうした患者さまにも根本的な体質改善が期待できる治療法として注目されています。しかし、長期的な治療が必要となることも多く、薬剤師による患者さまへの継続的なサポートが欠かせません。

この記事では、舌下免疫療法とはどのような治療法なのか、舌下免疫療法を行うことによるメリット・デメリット、舌下免疫療法にかかる費用、薬剤師が留意すべき調剤時の注意点について詳しく解説します。

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舌下免疫療法とは

舌下免疫療法とは

舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)は、舌の下へ治療薬を投与するアレルゲン免疫療法の一種として、日本では2014年から一般治療が開始されました。舌下免疫療法が登場する前のアレルゲン免疫療法では、注射による皮下免疫療法が用いられてきましたが、通院が必要になることや痛みを伴うこと、アナフィラキシーなどの重篤な副作用の懸念もあり、一般的な治療法とはいえませんでした。

対して舌下免疫療法は、自宅でも治療が可能です。花粉症やアレルギー性鼻炎に悩む方は多く、また現在は症状がなくても今後発症する可能性もあるため、実はとても身近な治療法といえるでしょう。

治療の効果と対象

舌下免疫療法では、涙目や目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといったアレルギー症状の軽減・根治が期待できます。現在、舌下免疫療法が行えるのは、5歳以上で以下いずれかの症状を持つ患者さまです。

  • スギ花粉症
  • ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎(ダニアレルギーによる鼻炎)
  • 治療の期間

    舌下免疫療法は短期間の治療では十分に効果が得られません。治療期間は少なくとも2年以上、一般的に3~5年が推奨されています。舌下免疫療法の長期的な有効性を検討した研究結果によれば、3年間の治療を受けた人は、その後7年間にわたり症状の改善が得られ、4~5年間の治療を受けた人は、8年間にわたり症状の改善が得られたと報告されています。

    なお、通年を通して治療開始が可能なダニアレルギーとは異なり、スギ花粉症の場合は花粉が飛散している時期には治療が開始できないため、6〜12月頃から治療を開始することを覚えておきましょう。

    舌下免疫療法にかかる費用

    舌下免疫療法は長期にわたる治療のため、費用を気にする患者さまは少なくありません。薬剤師は、あらかじめ舌下免疫療法に伴う費用も確認しておきましょう。なお、舌下免疫療法は検査・治療ともに保険適応です。ここでは患者数の多い「スギ花粉症」を取り上げ、治療薬には「シダキュアスギ花粉舌下錠」を用いるケースで解説します。

    検査にかかる必要

    治療を行うには、血液検査によるアレルギーの確定診断が必要です。具体的な金額は医療機関によって異なりますが、患者さまが3割負担であれば約2,500~5,000円程度が負担額の目安となるでしょう。

    薬価

    スギ花粉症に用いる医薬品「シダキュアスギ花粉舌下錠」は、1日1回1錠を服用します。最初はスギ花粉エキスの含有量が2,000JAUのものを、2周目以降からは5,000JAUのものに切り替えます。シダキュアスギ花粉舌下錠の薬価は2,000JAU1錠が58.5円、5,000JAU1錠が146.1円です。初年の1年間に換算すると、おおよそ以下のような費用計算になります。

    1週間:58.5円×7日=409.5円

    2週目以降:146.1円×358日=52,303.8円

    →合計:年間52,713.3円

    1週目を除くと、1ヵ月あたりの費用は4,383円(30日の場合)です。舌下免疫療法は保険適応なため、薬代が3割負担であれば1ヵ月あたりの費用は1,314.9円となります。

    薬剤師が留意すべき処方時の注意点

    薬剤師が留意すべき処方時の注意点

    舌下免疫療法は辛いアレルギー症状を根本的に改善する治療として普及が期待されていますが、患者さまが服用するにあたって注意点もあります。この章では、薬剤師が留意しておくべき舌下免疫療法の注意点について解説します。

    処方医が「受講修了医師」であるかを確認する

    舌下免疫療法の減感作療法薬として用いられる『シダキュアスギ花粉舌下錠』や『アシテアダニ舌下錠』『ミティキュアダニ舌下錠』には、アレルゲンが含まれており、重篤な副作用の恐れがあります。そのため、処方医は免疫舌下療法に関するeラーニングを受講し、「受講修了医師」として登録をしなければいけません。

    また、減感作療法薬を調剤する薬剤師は、処方医が「受講修了医師」であるかどうかの確認を行う必要があります。もし処方医が「受講修了医師」であることを確認できない場合、調剤を拒むことは薬剤師法(昭和35年法律第146号)第21条において、正当な理由にあたると通知されています。

    処方患者に対する「患者携帯カード」携帯の指導・記載内容の確認

    「患者携帯カード」は、アナフィラキシーなど重篤な副作用の発現時に速やかな対応を補助するために処方医師から交付されます。患者さまが「患者携帯カード」を携帯しているか確認し、携帯していない場合には常に携帯するよう指導を行いましょう。また、処方医から交付されていない場合では、患者さまから医師に交付を依頼してもらうよう伝えます。

    服薬指導における注意点

    舌下免疫療法は、長期の治療を行うことで効果が期待できます。しかし、服用にあたって次のような副作用が起きる可能性があります。

  • 口の中、唇、目、耳の痒み
  • 蕁麻疹
  • 口の中や喉の違和感
  • 腹痛や嘔吐
  • 下痢 など
  • こうした副作用の発現により、服用を自己判断で中止してしまうケースは少なくありません。とくに初期は軽度の副作用が起こりやすいため、患者さまへ副作用についての説明を丁寧に行う必要があります。

    また、服薬の前後2時間ほどは、激しい運動や入浴、飲酒が禁止されています。そのため、服薬のタイミングには留意しなければならない点はもちろん、もし重篤な症状が見られた場合はすぐに医療機関を受診するよう指導しましょう。

    舌下免疫療法のメリット・デメリットまとめ

    舌下免疫療法のメリット・デメリットまとめ

    舌下免疫療法は2014年から開始された比較的新しい治療法であるため、まだ治療法を知らない患者さまも少なくありません。舌下免疫療法のメリット・デメリットについて、患者さまへの説明に活用できるようにしておきましょう。

    メリット

    ①自宅で治療できる
    ②根本的なアレルギー体質の改善に繋がる
    ③内服薬のため痛みがない

    デメリット

    ①長期間の服薬が必要
    ②禁忌事項がある
    ③副作用の可能性がある
    ④治療が長期になるため費用が高額になりやすい

    舌下免疫療法には長期的な薬剤師のサポートを

    舌下免疫療法について、メリットやデメリットを踏まえながら詳しく解説しました。スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎に悩まされている患者さまは多く、薬剤師として理解しておきたい治療法といえるでしょう。

    とくに治療期間は長期に及ぶため、費用を気にする患者さまは少なくありません。保険適応であることと共に、おおよその負担額についても説明できるようにしておくことで、患者さまに安心して治療を受けていただけるようになります。

    また、長い治療では服薬を忘れてしまう可能性も考えられるため、薬剤師による適切な服薬サポートは欠かせません。本記事で解説した内容を、ぜひ日々の業務に役立ててください。

    青島 周一さんの写真

    監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

    2004 年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012 年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

    主な著書に『OTC医薬品 どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学: 存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

    記事掲載日: 2022/09/14

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