- 公開日:2024.03.29
- 更新日:2024-04-17
【動画でも解説】睡眠薬マイスリーはどんな薬?効能効果や依存性について
睡眠薬は十数種類あり、成分によって作用機序や作用時間などが異なります。今回は、睡眠薬の中でも処方頻度が高いマイスリー(一般名:ゾルピデム酒石酸塩錠)について、作用機序や効能効果、副作用などを解説します。
マイスリーとは
非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬であるマイスリーについて、効能効果や作用機序をお伝えします。
効能効果
マイスリーは、非ベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬です。脳の活動を抑えて眠りやすくする薬で、睡眠薬の中では超短時間型の薬剤に分類されます。
作用機序
種類の豊富な睡眠薬ですが、作用機序の観点からベンゾジアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬の4つに分けられます。
それぞれの作用機序は下記の通りです。
マイスリーが該当する非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の作用機序は、GABA系の抑制機構を働かせて中枢神経の抑制を促すものです。ベンゾジアゼピン系睡眠薬との作用機序における違いはありません。
なお、現在の臨床現場では、呼吸中枢の抑制や依存性などの副作用の懸念から、不眠症の治療にバルビツール酸系睡眠薬を用いることは稀です。そのため、ベンゾジアゼピン系睡眠薬や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が不眠症治療の主軸となっています。
投薬対象者
マイスリーは、統合失調症や躁うつ病に伴う不眠に用いることはできません。有効性を裏付ける根拠に乏しいためです。なお、マイスリーは不眠症の中でも入眠が困難な方に用いることが一般的です。
高齢者に投与する場合には、転倒やふらつきなどの副作用リスクに配慮し、標準用量の半量から開始します。
マイスリー錠 添付文書|アステラス製薬 医療従事者向け情報サイト
睡眠薬酒石酸ゾルピデム(マイスリー錠®)の薬理学的特性と臨床効果 日本薬理学雑誌|J-STAGE
マイスリー錠5mgの基本情報|日経メディカル 処方薬事典
睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドラインー出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアルー 厚⽣労働科学研究班・⽇本睡眠学会ワーキンググループ|一般社団法人 日本睡眠学会
マイスリーの用法用量
ここからはマイスリーの用法用量を解説していきます。
成人
1回5~10mgを就寝直前に内服します。効果がどのくらい現れるかは個人差が大きいため、基本的に少量からの開始とし、高齢者の場合は必ず5mgから開始します。
小児や妊婦・授乳婦
小児等を対象とした、有効性と安全性を指標とした臨床試験は未実施の薬です。そのため、小児に対するマイスリーの適用はありません。
妊娠中の女性では、有用性が上回る場合のみ投与が可能です。ただし、妊娠後期にマイスリーを投与した場合、出生した児に呼吸抑制、痙攣、振戦、易刺激性、哺乳困難等の離脱症状があらわれることもあります。
マイスリーの有効成分であるゾルピデムは、母乳中に移行することが知られており、授乳中における同薬の使用は、新生児の嗜眠を誘発することもあります。そのため授乳婦の方は、授乳を避ける必要があります。
マイスリー錠 添付文書|アステラス製薬 医療従事者向け情報サイト
睡眠薬酒石酸ゾルピデム(マイスリー錠®)の薬理学的特性と臨床効果 日本薬理学雑誌|J-STAGE
マイスリー錠5mgの基本情報|日経メディカル 処方薬事典
マイスリーの禁忌・副作用・使用上の注意
ここでは、マイスリーの禁忌や副作用、使用上の注意について解説していきます。
禁忌
禁忌とされているのは過敏症のある方に加えて、下記の症状や疾患のある患者さまです。
併用注意
併用注意は下記の薬です。投与の際は慎重な投与が必要となります。
種類 | 症状 |
麻酔剤 | 呼吸抑制が見られる場合がある |
中枢神経抑制剤 (フェノチアジン誘導体やバルビツール酸誘導体など) | 中枢神経抑制が増強する場合がある |
リファンピシン | マイスリーの血中濃度が低下して効果が減弱する場合がある |
アルコール | 精神機能や運動機能、知覚機能の低下が懸念される |
副作用
マイスリーの服用による副作用としては、下記の症状が生じる場合があります。
依存性についても注意が必要な薬のため、次で解説していきます。
マイスリー錠 添付文書|アステラス製薬 医療従事者向け情報サイト
睡眠薬酒石酸ゾルピデム(マイスリー錠®)の薬理学的特性と臨床効果 日本薬理学雑誌|J-STAGE
マイスリー錠5mgの基本情報|日経メディカル 処方薬事典
マイスリーに依存性はある?睡眠薬の依存性とは
厚⽣労働科学研究・障害者対策総合研究事業が作成した睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドラインによれば、日本人では睡眠薬の依存性に対して不安を抱いているケースが多いと報告されています。
日本では、過去にバルビツール酸系の睡眠薬が用いられていたこともあり、睡眠薬による副作用や依存性の多くは、同薬のイメージによる影響が強いと言えるかもしれません。
一方で、現在の不眠症治療で用いられているベンゾジアゼピン系薬剤や、マイスリーのような非ベンゾジアゼピン系薬剤は、バルビツール酸系の薬剤と比べると、安全性が高いと言えます。
とは言え、睡眠薬で生じる依存の発生頻度は個人差も大きく、非ベンゾジアゼピン系薬剤のマイスリーであっても、依存を発現することがあります。
また、マイスリーは減量時や中止時に不安やイライラなどの離脱症状が生じる場合もあり、継続的な服用を促してしまう要因の一つと考えられます。そのため適切な用法用量を守った使用はもちろん、長期にわたり漫然と投与しないよう、離脱症状の有無を確認しながら、不眠症状に応じた減薬もしくは投与中止を検討する必要があります。
懸念されている睡眠薬乱用
睡眠薬を処方される人が増えている一方で、多剤併⽤や長期使用による潜在的な薬物有害事象、睡眠薬の過剰服用による不適切使用なども問題視されています。
そのような状況の中で、睡眠薬の使用にあたっては、処方を受けている患者さまの服薬状況(残薬等)や、併用薬の有無を確認するなど、薬剤師の評価や介入も重要となってくるでしょう。
マイスリー錠 添付文書|アステラス製薬 医療従事者向け情報サイト
睡眠薬酒石酸ゾルピデム(マイスリー錠®)の薬理学的特性と臨床効果 日本薬理学雑誌|J-STAGE
マイスリー錠5mgの基本情報|日経メディカル 処方薬事典
睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドラインー出口を見据えた不眠医療マニュアルー 厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ|一般社団法人 日本睡眠学会
マイスリーの服薬指導のポイント
マイスリーの服薬指導を行う際は、主に以下のポイントに注意しましょう。
必ず就寝直前に内服するように伝える
禁忌でも解説したように、内服後は中途覚醒時の健忘やもうろう状態、睡眠随伴症状(夢遊症状等)がみられる場合があるため、絶対に自動車を運転してはいけません。服薬指導の際は、内服後は外出をせず就寝するように伝えましょう。
また、初めて睡眠薬を内服する場合は、できるだけ家族などが見守れる環境で内服・就寝するように促します。
日中まで眠気が持続するなら主治医へ相談するよう伝える
睡眠薬を飲むと「日中でも眠くなるものだ」と考えて、傾眠の副作用を我慢してしまう患者さまもいます。しかし日中まで眠気が持続すると、生活に悪影響を与えてしまうため、投与量の減量や処方変更などの相談を医師とするように伝えましょう。
漫然的な使用や乱用を避けるためにいつから内服しているか確認する
前述のように、マイスリーにも長期的な使用による依存性は確認されています。
病院を変更してからも処方され続けている患者さまや、年単位で処方され続けている患者さまの場合は、いつからマイスリーを服用しているのか、薬歴や持参のお薬手帳を確認する必要があります。
マイスリーの長期的な使用が判明した際には、転院を繰り返したり、主治医が頻繁に変わっているなど、漫然的な投与のきっかけとなり得る状況の有無を確認し、必要に応じて処方元の病院やクリニックと情報共有する必要があるでしょう。
マイスリーは、依存性への懸念からも長期間の服用は避けたい薬です。薬剤師による介入が重要な薬であることを薬剤師自身が認識しておきましょう。
マイスリー錠 添付文書|アステラス製薬 医療従事者向け情報サイト
睡眠薬酒石酸ゾルピデム(マイスリー錠®)の薬理学的特性と臨床効果 日本薬理学雑誌|J-STAGE
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マイスリーを動画でわかりやすく解説!
マイスリーについて、「マイスリーの特徴、副作用・注意点、禁忌」などを4分で解説している動画もありますので、動画で確認したいという方は、下記関連動画をご覧ください。
マイスリーの服薬指導が正しくできるようになろう
今回の記事ではマイスリーについて、使用前に必要な情報や効能効果、作用機序や副作用などを改めて紹介していきました。
マイスリーは依存性や漫然的な使用にも注意が必要な薬です。また、初めての睡眠薬の内服には戸惑う患者さまも多いため、薬剤師として服薬指導の際に不安を取り除けるようにしていけると良いでしょう。
服薬指導のポイントを参考に、患者さまが安心・安全に使用できるようにしましょう。
監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん
2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。
主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』