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  • 公開日:2019.06.05

【日本調剤の教育担当者が伝授!】薬効を最大限に引き出す服薬指導のコツは?-ファーマシーセミナーレポート-

【日本調剤の教育担当者が伝授!】薬効を最大限に引き出す服薬指導のコツは?-ファーマシーセミナーレポート-

かかりつけ薬剤師の制度化、服薬期間中のフォローの義務化など、薬剤師を取り巻く環境の変化に伴って、患者さまとの密なコミュニケーションがこれまで以上に求められる時代に突入しました。今後さらに服薬指導の重要性は増していくと考えられます。

一方で、患者さまは十人十色であると分かりながらも、「いつも同じような指導になってしまう」といったように服薬指導に苦手意識がある方も少なくありません。薬の効果を最大限引き出すためには、服薬指導において一体なにを心がければよいのでしょうか?

今回は、2019年2月17日に行われた、メディカルリソース主催『第1回 実践ファーマシーセミナー』の内容を一部ご紹介します。講師にお迎えしたのは、日本調剤株式会社の教育担当・田井中絹代さんと髙木沙織さん。服薬指導の意義や薬歴の重要性など、これからの時代に薬剤師に求められることについてお話しいただきました。

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対人スキルが求められ、服薬指導が重要に

患者に服薬指導を行う薬剤師のイメージ

服薬指導とは、単に処方薬の用法・用量を説明して終わりではありません。併用薬の確認、他科受診の確認、副作用有無の確認など、様々な内容を含んでいます。

同じ薬でも、患者さまとの会話の中で引き出した情報によって指導内容を変えたり、必要に応じて医師に処方の変更を申し出たりする必要もあるでしょう。

これまでの薬剤師は、医師の処方箋にもとづいて正しく医薬品を調剤することを中心に業務を進めていました。しかし、「かかりつけ薬剤師・薬局」制度の開始などに伴い、薬剤師の仕事は加速度的に対人業務へシフトしてきています。

また、2019年10月の薬機法改定でも、服薬期間を通じた患者フォローが義務化されるなど、薬剤師として活躍するには高い対人スキルが求められるようになっていきます。だからこそ、服薬指導の重要性はますます高まっているのです。

適切な服薬指導のためには、会話の中で患者さまの情報を収集することと、得た情報をきちんと整理して薬歴管理することが大切です。

患者さまの情報収集は、具体的に質問することが大切

患者の情報収集を行う薬剤師のイメージ

服薬指導は、なるべく多くの患者さま情報を集めることが大切です。初回と再来で伺うべき情報は変わるため、ポイントをおさえて適切な指導を行いましょう

質問のポイント-初回患者さまの場合-

1.受診理由の確認

治療目的や患者さまが治したい自覚症状について伺います。これにより、処方薬から連想される、患者さまの症状に対する思い込みを避けることができます。

2.医師の説明の確認

病名や治療の方針について、どのように説明を受けたか確認します。これにより、医師と薬剤師の説明が食い違わないようにし、患者さまの混乱防止に繋げることができます。

3.プロフィール情報の確認

併用している薬、喫煙や飲酒の状況など、薬効に関わるようなプロフィール情報もしっかり伺うことが大切です。

<質問に活かせる!> オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョン

患者さまとスムーズなコミュニケーションを取るために役立つのが、「オープン・クエスチョン」と「クローズド・クエスチョン」です。

オープン・クエスチョンは、YES/NOで答えられない質問を指します。薬剤師の質問に対して、患者さまには自由な表現でお答えいただきます。

例えば、「どのような症状が出ていますか?」と質問すれば、「熱っぽさやだるさです」といった返答を患者さまからいただくことができるでしょう。他にも、「医師からはどのような説明がありましたか?」などの質問が当てはまります。

クローズド・クエスチョンは、YES/NOで答えられる質問です。回答の負担を少なくできますし、短時間で目的の回答を得ることもできます。例えば、「他に服用しているお薬はありますか?」「○○の症状はありますか?」などの質問です。

質問のポイント-再来患者さまの場合-

1.処方変更があった場合、理由の確認

処方の変更には必ず理由があります。患者ニーズや治療状況など、指導に必要な情報が含まれているのです。「薬が合わなかった(副作用が現れた)」「薬が効かなかった/効きすぎた」などを確認しましょう。

2.コンプライアンスの確認

良い・悪いだけでなく、残薬の有無など具体的な服用状況についても確認しましょう。「飲み忘れてしまう」などコンプライアンス不良の場合は、その原因まで把握して問題が解決できるように指導する必要があります。

3.来局間隔の確認

投薬日数と来局日にずれがある場合は、理由を確認しましょう。例えば、来局間隔が早いと過剰服用の可能性が、来局間隔が遅いと過少服用の可能性があります。それぞれの理由に応じた服薬指導を行いましょう

4.副作用の有無の確認

何が副作用なのか分からない患者さまも多くいらっしゃいます。副作用が現れていても、自覚がないため見逃してしまっている恐れがあります。薬剤師が質問する際は、「口が渇いたり、眠くなったりしませんでしたか?」など、患者さまがピンとくる具体的な表現を使って質問してください。また、薬歴に記載する際は、「特になし」のような書き方ではなく、「眠気なし・口渇なし」など具体的に明記しましょう。

5.病状・自覚症状の確認

体調の良し悪しという漠然とした確認ではなく、具体的な症状をあげて確認することが大切です。例えば、「お薬を飲んで、血圧の値はどうなりましたか?」「喘息発作は、何回くらいありましたか?」などといった聞き方をしましょう。

6.前回指導内容の確認(リターン)

過去に実施した指導内容を理解しているか、守っているか確認します。また、前回の薬歴を確認し、記載されている申し送り事項があれば合わせて確かめましょう。例えば、「前回お薬の量が増えていましたが、その後の症状はいかがですか?」など。

充実した薬歴管理のために必要な『POS』と『SOAP』

薬歴を記録する薬剤師のイメージ

患者さまから得た情報は薬歴にしっかり落とし込みましょう。薬歴の代表的な記録方法は、『SOAP』(Subjective/Objective/Assessment/Plan)です。中でも、鍵を握るAssessment(アセスメント)は、患者さまから伺った情報から薬剤師がどのような解釈や判断を行ったかを示すもの。つまり、指導内容の根拠を表す重要な項目です。

SOAPの実施には欠かせない思考法もあります。続いては、それらをご紹介します。

【ポイント①】患者さまの問題点を見つけて解決に導く思考法『POS』

まずは、『POS(Problem Oriented System(問題志向型システム)」という考え方を知りましょう。POSとは、収集した患者さま情報の中から抽出した健康問題を、合理的・系統的に解決していくための思考法です。

ある問題に対して、以下4つのサイクルを繰り返しながら解決に近づけていきます。

①情報収集
②問題の明確化
③解決のための計画立案
④計画の実施

患者さまが抱える問題点はひとつとは限りません。まずは、患者さまから伺った情報から、問題点を具現化・明確化していきましょう。そして、その問題を解決するにはどうすべきか。それとも、他の問題を解決すべきかと色々な角度から考えてください

多角的に情報を捉える『POS』に沿って考えられるようになれば、適切な服薬指導ができるようになるでしょう。

【ポイント②】POSを実践するための記録方法、『SOAP』を理解する

POSに沿って得た情報や考え出した問題点や対策法などは、しっかりと薬歴に記録しましょう。薬歴の記録には、『SOAP』という形式を使うのが一般的です。

SOAPは以下単語の頭文字を取ったもの。これに沿って記録すると、患者さまの問題点や指導内容の根拠、実際の指導内容などが可視化された薬歴が作成できます

S:Subjective(患者さまの主観的情報)
O:Objective(薬剤師が見た患者様の客観的情報)
A:Assessment(SとOに対する薬剤師の解釈や判断。服薬指導の根拠)
P:Plan(計画)

POSを理解すれば、SOAPに沿った薬歴作成のイメージも湧くでしょう。SOAPに沿った薬歴の書き方や事例については別の記事で詳しく説明しています。ぜひ、ご確認ください。

▼関連記事はこちら
【SOAP薬歴の記入事例】薬歴を速くわかりやすく書く方法を徹底解説
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患者さまのためになる服薬指導をするために

患者と笑顔で会話する薬剤師のイメージ

適切な服薬指導に大切な、情報収集と薬歴管理について解説しました。

差の出にくい調剤業務に比べ、服薬指導や薬歴に記載する内容は薬剤師の個性が表れます。すべての患者さまが服薬期間中に問題なく過ごせるように。そして、薬の効果をしっかりと感じられるように、適した服薬指導を心がけたいですね。

ご紹介した情報収集のポイント『POS』『SOAP』は、すぐに使いこなすのには難しく、練習が必要になるはずです。しかし、一度身につけば、長く使うことのできるもの。ぜひ業務に取り入れてみてはいかがでしょうか。

▼服薬指導についてはこちらもご覧ください。
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  • 2019年2月17日(日)
  • 講師:日本調剤株式会社 教育情報部
  • 主任 田井中様/主任 髙木様

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2019/06/05

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