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  • 公開日:2019.11.29

【日本調剤の教育担当者が伝授!】薬剤師なら知っておきたいポリファーマシーと減薬提案-ファーマシーセミナーレポート-

【日本調剤の教育担当者が伝授!】薬剤師なら知っておきたいポリファーマシーと減薬提案-ファーマシーセミナーレポート-

複数の医薬品を服用することで健康被害などを引き起こす「ポリファーマシー」が問題になっています。厚生労働省も2019年6月14日に『高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)』を公表しました。今後、高齢者に対するポリファーマシーの議論が進むものと思われます。

今回は、2019年10月6日に行われた、メディカルリソース主催『第3回 実践ファーマシーセミナー』の内容を一部紹介します。講師としてお迎えしたのは、日本調剤株式会社の教育担当・加村潤さんと渡邉泰崇さん。ポリファーマシーの形成過程や解決法などについてお話しいただきました。

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「ポリファーマシー」とは

ポリファーマシーとは、多剤服用や多剤併用により、副作用などの有害事象を引き起こすことです。何剤以上がポリファーマシーという明確な定義はありませんが、日本調剤が調査した2018年2月のデータでは、6~7剤の処方箋応需枚数が最も多く、厚生労働省のデータでは6剤以上が有害事象を起こしやすいことがわかっています。そのため、6剤以上の処方箋を受け取った時、どう対応すべきか考えることが必要です。

ポリファーマシーによって引き起こされる有害事象は様々です。高齢者に多い順で挙げると、「意識障害」「低血糖」「肝機能障害」「電解質異常」など。ふらつき・転倒といった事象もよく見受けられます。こうした有害事象を引き起こす可能性がある処方箋を受け取った際は、薬剤師として適切な対処が求められます。

ポリファーマシーが形成される過程について

ポリファーマシーとは

ポリファーマシーが形成される原因として、多くの疾患を持つことによる複数の診療科・医療機関受診がありますが、その後に複数の薬局を利用することで、処方薬の全体を一元的に管理できていないことがあげられます。結果として、「薬物有害事象」や「服薬アドヒアランス低下」などの問題まで発生してしまうのです。

また、薬の副作用や相互作用を、新たな疾患・症状と医師が勘違いし、新たな薬物の処方をくり返す「処方カスケード」も起こり得ます。最終的に重症化し、救急車で搬送されるということもあり得ない話ではありません。

これらの解消には、かかりつけ医・かかりつけ薬剤師などによる、薬剤処方状況の把握が求められています。薬局の場合、処方薬の一元管理、市販薬の服薬状況、お薬手帳の有効活用...などに積極的に取り組む必要があるでしょう。

「服用薬剤調整支援料」の概要や算定要件について

2018年度診療報酬改定によって新設された、「服用薬剤調整支援料(125点)」。6種類以上が処方されていた患者さまに対し、2種類以上減らす取り組みを薬局が医療機関と連携して行った際に評価するものです。条件を満たせば所定点数を算定できます。

基準となる薬剤の種類数は、「服用を開始して4週間以上経過した内服薬」です。服用を開始して4週間以上経過した内服薬が6種類以上ある患者さまが、薬局薬剤師による働きかけで2種類以上減少。そして、その状態が4週間継続してはじめて、服用薬剤調整支援料が算定されます。なお、屯服薬は対象とはなりません。

服用薬剤調整支援料の算定には、「トレーシングレポート」など文書を用いて、薬局薬剤師から病院などの医療機関に情報提供することが必要とされています。「トレーシングレポート」を用いた情報提供の方法については、【<ポリファーマシー解決に向けて>薬剤師にできること】にて解説します。ぜひ、ご確認ください。

<ポリファーマシー解決に向けて>薬剤師にできること

ポリファーマシーとは

① 処方箋を応需したら

まずは、予防薬のエビデンスが適切か確認しましょう。処方薬の効果が出ているか確認するために、患者さまへヒアリングすることも大切です。「症状が変わらない」といった場合には、薬物療法以外の方法も検討してください。

こうした流れの中で大切なのは、患者さまのご意向をしっかりと確認することです。病態など状況は患者さまによって異なるからこそ、「患者さまにとって有益かどうか」を軸に判断することが必要となっています。そのことを忘れずに取り組みましょう。

ご意向を伺えたら、医師や病院薬剤師に情報提供できる環境を整え、要点をまとめて情報提供を行うようにしてください。

② 情報提供の流れ

まずは、情報提供ができる環境を整える必要があります。病院や病院薬剤師などの医療関係者に対して、「トレーシングレポートを受け入れてもらえるか」などを伺います。受け入れてもらえるのであれば、『いつ誰から得た情報か』『具体的にどのような状況か』『薬局でどのように対応したか』など患者さまに関する情報を提供しましょう。

ただ患者さまの希望を書くだけではなく、薬剤師の目線を持って情報を提供することが大切です。たとえば、患者さまが減薬を希望していると伝えるだけではいけません。薬剤師の目線で見た時に、なぜ減薬が必要なのかという根拠を添えて、「...だから患者さまのためにも減薬が必要と考えます」と伝えることがポイントです。

情報を提供するだけで医師に丸投げにならないようにしてください。薬剤師による提案も、ポリファーマシーの解決に向けて欠かせないプロセスのひとつです。

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患者さまや地域の医療機関と関係強化を

多剤服用や多剤併用により、副作用などの有害事象を引き起こす「ポリファーマシー」。この解決に向けて、薬剤師の積極的な取り組みが求められています。

患者さまからのヒアリングや、医師や病院薬剤師に対する情報提供以外にも、医療機関ごとに点在する患者さまの病気に関する情報を収集することも欠かせません。だからこそ、薬剤師は地域の医療機関との関係強化も大切な仕事と言えるでしょう。

処方箋を応需したら、ふと立ち止まって自分の仕事の進め方について振り返ってみてください。その処方箋は、患者さまにとって有益な内容になっているでしょうか。それを確かめるためにも、患者さまや地域の医療機関との関係強化を目指していきましょう。

実践ファーマシーセミナー
  • 実践ファーマシーセミナー
  • -ポリファーマシーと減薬提案-
  • 2019年10月6日(日)
  • 講師:日本調剤株式会社 教育情報部
  • 課長 加村様/係長 渡邉様

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2019/11/29

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