- 公開日:2021.06.28
世界初、経口投与が可能なGLP-1受容体作動薬「リベルサス錠」を解説【薬剤師向け】
糖尿病治療には、インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬が用いられます。これらはいずれも注射薬でしたが、新たにノボノルディスクファーマ社の開発した経口投与できるGLP-1受容体作動薬「リベルサス錠」の製造販売が承認されました。経口投薬は注射薬と比較して利用が容易であり、画期的な新薬剤の登場といえるでしょう。
ここではGLP-1受容体作動薬に関する基本的な知識をおさらいしつつ、この「リベルサス錠」についても詳しく解説します。
GLP-1受容体作動薬とは?
GLP-1受容体作動薬はインスリン製剤と同様に、糖尿病治療に用いられる薬剤です。GLP-1は食事によって食べ物が体内に入ると小腸から分泌される、消化管ホルモンであるインクレチンの一種。すい臓のGLP-1受容体と結合し、インスリンの分泌を促すことで血糖値を下げる働きがあります。
しかし、GLP-1は体内の酵素によってすぐ分解されてしまいます。そのため、働きを持続させるため開発されたのが「GLP-1受容体作動薬」という薬剤です。
インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬の違い
同じ糖尿病治療に用いられる注射薬であるインスリン製剤と、GLP-1受容体作動薬。これらは、いずれも糖尿病治療に用いられる注射薬です。しかし、その働きや使用対象などには違いがあるので、しっかり覚えておきましょう。
インスリン製剤の概要
インスリン製剤は「インスリン注射」と呼ばれることもあり、1型と2型糖尿病に使用可能です。投与によりインスリン自体を補うことができますが、体重が増えたり低血糖になったりする可能性があるので注意しましょう。
なお、インスリン製剤には以下の種類があり、それぞれ作用の持続時間や注射に適したタイミングが異なります。
GLP-1受容体作動薬との違い
一方GLP-1 受容体作動薬は、投与によってインスリンの分泌を促す薬剤です。インスリン製剤と異なり、2型糖尿病だけに使用できます。つまり1型糖尿病の治療には、インスリン製剤が必須といえるでしょう。
GLP-1受容体作動薬は、食事などで血糖値が上がったときにのみ働くので低血糖のリスクは低くなります。また、食欲抑制作用により体重減少が見られやすいこともインスリン製剤との違いです。なお、低血糖のリスク低下や体重減少について、インスリン製剤と併用した際はこの限りではありません。
前述の通り、これまでインスリン製剤とGLP-1受容体作動薬は、いずれも注射薬のみで用いられてきました。
【世界初】経口GLP-1受容体作動薬「リベルサス錠」とは
世界で初めて製造承認された経口投与可能なGLP-1受容体作動薬「リベルサス錠(一般名:セマグルチド[遺伝子組換え])」について、詳細を見ていきましょう。
経口投与が可能な仕組み
これまで、ペプチドであるGLP-1受容体作動薬は、分子量が大きく消化管での上皮細胞透過性が低いことや、胃の消化酵素で分解され吸収できないことから経口投与に適さないとされていました。
リベルサス錠には吸収促進剤のサルカプロザートナトリウム(SNAC)が含まれています。これにより、服用したGLP-1受容体作動薬が分解されることなく胃から吸収されるため、経口投与が可能になったのです。
臨床試験の概要
2型糖尿病の患者さまを対象として、国内外で臨床試験が行われました。単独療法のほか、インスリンなどと併用しての治療でもその有効性や安全性を検証。その結果、アメリカやカナダ、スイス、EUでの承認を経て、日本でも製造承認を得ています。
適応と用法用量
リベルサス錠は2型糖尿病のみに適応した薬剤です。3mg・7mg・14mgと3つの種類があり、成人は1日1回7mgを維持用量とします。ただし、1日1回3mgから開始し、4週間以上投与したあと、7mgに増量する必要があります。
1日1回7mgを4週間以上投与しても効果が十分でない場合は、同条件で14mgに増量可能です。ただし、14mgの代わりに、7mgを2錠服用することは避けなくてはいけません。
胃の内容物によって吸収が低下するため、空腹である起床時に、120ml以下の水と服用します。服用後30分は、飲食を控える必要があるため注意して指導しましょう。
投与に伴う副作用や禁忌は?
副作用
リベルサス錠の重大な副作用として、低血糖や急性膵炎が報告されています。また、悪心や下痢、便秘、腹部不快感などの消化器症状もあります。
症状の程度は患者さまによって異なりますが、続く場合には受診勧奨を行うなど適切に対応しましょう。低血糖症状は体の震えや動悸、冷や汗などがあげられるので、サインとして覚えておくとよいでしょう。
禁忌
リベルサス錠は、その成分に対し過敏症の既往歴がある患者さまや妊婦の患者さまには使用できません。
また、インスリン製剤による治療が必須である糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡、1型糖尿病の患者さまや、インスリン製剤による血糖管理が必要な重症感染症、手術等の緊急の場合も適していません。
そのほかにも注意が必要な患者さまがいるので、添付文書をよく確認しましょう。
糖尿病治療において画期的な経口投与。今後の動きにも注目
これまでインスリン製剤、そしてGLP-1受容体作動薬の注射薬が用いられてきた糖尿病の治療。これら2つの薬剤には、適応疾患や仕組みなどいくつかの違いがあります。
さらに新しく、GLP-1受容体作動薬には世界初となる経口投与の可能な「リベルサス錠」が登場しました。これは糖尿病治療において、大変画期的なことといえるでしょう。
ただしほかの薬剤も同様ですが、服用には副作用が生じる可能性があります。これを十分に理解したうえで、医師の指示・処方に従った服用が大切です。
ファルマラボ編集部
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