- 公開日:2023.04.26
【2023年版】医薬品販売の規制緩和で、薬剤師はどうなる?-課題とこれから-
医薬品販売の規制緩和が進むにつれ、薬剤師に求められる役割も変化しています。規制緩和の最新動向と今後の薬剤師業務について解説します。
医薬品販売規制緩和の最新動向(令和5年3月)
まずは、令和5年3月時点での医薬品販売に関する規制緩和の動向についてご紹介します。現在、OTC医薬品販売における薬剤師の常駐規制や要指導医薬品のインターネット販売の可否について検討が進められています。
スイッチOTC医薬品が抱える課題
医療用医薬品のうち比較的安全性が高いと認められ、市販薬に転用された医薬品はスイッチOTC医薬品と呼ばれます。もともとは医師の処方がなければ使用できなかった医薬品であり、適切に販売・使用されるよう注意を払わなければなりません。
スイッチOTC医薬品は要指導医薬品として3年間対面販売された後にインターネット販売が可能な一般用医薬品(第1類医薬品)に移行します。しかし、現状は対面販売が維持される制度ではなく、安易に販売されたり薬剤師による適切な受診勧奨が行われなくなったりすることが懸念とされています。セルフメディケーション推進のため多くの医療用医薬品のスイッチOTC化が期待されているものの、なかなか進みづらい理由の一つと言えるでしょう。
また、スイッチOTC化においては医薬品の販売体制、薬事規制に対する意見も提示されていることから、医薬品の販売区分や販売方法についても再考する必要があります。以下に記した薬剤師の常駐規制緩和の検討なども進んでいます。
OTC医薬品販売における薬剤師の常駐規制緩和
令和4年12月21日、政府のデジタル臨時行政調査会が開かれ、「OTC医薬品の販売を行う薬剤師等の常駐」について、2024年(令和6年)6月までに見直しを実施することが示されました。
現行の医薬品医療機器等法施行規則等では、薬局等でOTC医薬品を販売する場合には開店時間の半分以上は薬剤師や登録販売者を配置するよう求められており、この常駐規制によって利用者が深夜・早朝など緊急で医薬品を入手したい時に医薬品を入手しづらいという現状があります。
それに対し、業界団体は有資格者が店舗外でもオンラインで患者さまの相談を受けたうえでOTC医薬品を販売し、在庫のある最寄りの店舗で医薬品を受け取る仕組みなどを提案してきました。
今後、常駐規制の緩和に向けて、デジタル技術を利用して有資格者が販売店舗外にいる場合でも利用者が安心して医薬品を購入できる制度設計が検討されます。
要指導医薬品のオンライン服薬指導に関する検討
令和5年3月に実施された第2回医薬品の販売制度に関する検討会では、要指導医薬品のオンライン服薬指導について話し合いがされました。
要指導医薬品とは、以下のような特徴をもつ医薬品です。
(医療用医薬品を経ずに直接OTC医薬品として承認された品目)
(スイッチ直後品目)
平成25年の薬事法改正により一般用医薬品のインターネット販売が可能となった一方、要指導医薬品の販売については現在も薬局または店舗において薬剤師による対面での服薬指導が必須となっています。
処方箋にもとづいて調剤された薬剤のオンライン服薬指導が可能になったことを踏まえ、要指導医薬品についてもオンライン服薬指導の可否が検討されるようになりました。
しかし、要指導医薬品の対面販売においては使用者本人以外による購入や大量購入、受診勧奨の拒否などの問題が報告されており、要指導医薬品のインターネット販売が可能となれば、今まで以上に安易に販売されることが危惧されています。
薬剤師による受診勧奨や適正販売をどのように行うかが、今後の要指導医薬品のインターネット販売における課題となっています。
医薬品販売規制緩和のこれまでと課題
規制緩和の流れ
平成21年6月より施行された改正薬事法は、セルフメディケーション推進の環境整備のために導入された制度です。
医薬品をリスク別に3つに分類し、リスクにあった安全な販売方法を確立することで、リスクはあるもののより効果の高い医薬品をOTC医薬品として使えるようにすることを目的としています。
改正薬事法の導入にあたっては、ネット販売業者等が医薬品販売の制限を不服として裁判にまで発展するなど大きな波紋を呼びました。
その後、ネット販売による利便性の向上と安全性の担保について議論が重ねられ、平成25年の薬事法改正により、一般用医薬品のネット販売が可能となりました。
現在では一般用医薬品の販売だけでなく、オンライン服薬指導や電子処方箋の導入も進み、Amazonが令和5年から処方薬のネット販売への参入を検討していることも話題となっています。
規制緩和が抱える課題
規制緩和を進めるにあたっては、ネット販売賛成派と反対派の主張が対立していました。
<賛成派の主張>
<反対派の主張>
こうした意見の対立は現在も完全になくなったわけではありませんが、時代の変化とともに販売規制が緩和され、一般用医薬品のネット販売や処方薬のオンライン服薬指導が可能となりました。
医薬品の販売体制は「安全性」「有効性」「利便性」を担保できるものでなくてはなりません。ネットの利便性を享受しながらも、下記のようなこれまで対面販売で行ってきた安全性・有効性を担保する取り組みを継続していく必要があります。
リスクの高い医薬品を安全に販売できる環境を整えることこそが、セルフメディケーションの推進につながるのではないでしょうか。
規制緩和後の薬剤師に求められること
令和4年6月7日に閣議決定された「規制改革実施計画」においては、薬剤師の地域における対人業務の強化に焦点が当てられました。 薬局の調剤業務の一部を外部委託できるようにし、対人業務に重心をシフトしていくことが明示されたのです。
その後、政府の規制改革推進会議は令和4年9月22日の作業部会で薬局の調剤業務を外部委託できるようにする案を協議し、11月28日には調剤業務の一部外部委託に関する今後の対応についての案が出されるなど、調剤業務の外部委託について検討が進んでいます。
厚生労働省が掲げている「患者のための薬局ビジョン」では、「2025年(令和7年)までに、すべての薬局はかかりつけ薬局としての機能をもつことを目指す」ことが期待されています。
薬剤師が専門性を地域医療に活かしていくためには対物業務から対人業務へと業務をシフトさせていく必要があります。しかし、超高齢社会のいま、一包化のニーズも高まっており、対物業務に時間がとられてしまうケースも珍しくありません。
調剤業務の外部委託によって対物業務の効率化が進めば、薬局薬剤師は対人業務を充実させることができるのです。
薬剤師に期待されている対人業務としては、以下のようなものが考えられます。
薬剤師の業務の中心が調剤だった時代は終焉を迎えようとしています。 今後は患者さまへのフォローアップや病院との連携など、高度な専門知識を活かして地域医療に貢献するという役割が比重を増していくでしょう。
ファルマラボ編集部
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