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  • 公開日:2022.12.07

オンライン服薬指導の実施要件まとめ<2022年10月最新版>

オンライン服薬指導の実施要件まとめ<2022年10月最新版>

オンライン服薬指導は、移動時間や待ち時間が軽減できること、感染リスクを避けられること、ご自宅での患者さまの状況が確認できること、また周囲を気にせず相談できることなどさまざまなメリットがあり、ますます注目度が高まっています。

最近では、2022年9月30日に医薬品医療機器等法(以下、薬機法)施行規則を一部改正する省令が厚生労働省から発出され、オンライン服薬指導は薬局以外の場所でも実施できるようになりました。

この記事では、オンライン服薬指導の概要やこれまでの法改正の流れ、実施要件を解説していきます。実施フローや留意点についても、あわせてみていきましょう。

オンライン服薬指導とは?

オンライン服薬指導とは?

オンライン服薬指導とは、スマートフォンやタブレットなどの通信機器を使って患者さまの状態を確認しながら行う服薬指導のことです。長年、医薬品が処方された場合には、原則として薬剤師の対面による服薬指導が薬機法や薬剤師法によって義務づけられていました

しかし、医療体制が整っていない離島やへき地に住む方、または何らかの理由によって通院・来局が困難な患者さまに対する医療ニーズに加え、新型コロナウイルス感染症の流行などによる社会のニーズに応えるため、オンライン服薬指導が解禁されたのです

オンライン服薬指導、これまでの法改正の流れ

オンライン服薬指導、これまでの法改正の流れ

もともとオンライン服薬指導は、2019年の改正薬機法により、2020年9月の施行が予定されていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に、2020年4月に時限的・特例的な対応としてオンライン服薬指導を解禁する「0410通知」が厚生労働省から発出されました。つまり、従来のオンライン服薬指導の実施要件を一時的に緩和し、予定していたよりも早くオンライン服薬指導が行われることとなったのです(下表参照:0410対応)。

その後、2022年3月31日に厚生労働省より発出・施行された『薬機法施行規則の改正および施行通知』では、さらにオンライン服薬指導の規制緩和が行われました。具体的には、0410対応と同様に、初回からオンライン服薬指導が可能になったほか、処方箋の原本が届くまでの間はメールやファクシミリで送られた処方箋を基に調剤できるようになりました。また、服薬指導計画書の作成が不要(0410対応では規定なし)、オンライン診療や訪問診療など診療形態に関わらず、オンライン服薬指導ができるようになりました(下表参照:改正後)。

ただし、通信方法は「映像および音声」が求められ、0410対応では可能であった音声のみ(電話)は不可となっています。また、この改正では、薬局内が薬剤師によるオンライン服薬指導の実施場所とされていました。

2022年9月30日より薬局以外の場所でのオンライン服薬指導が可能に

そんな中、2022年9月30日に厚生労働省から『オンライン服薬指導の実施要領について』が発出され、患者さまの求めがある場合や患者さまの異議がない場合に薬剤師は薬局以外の場所からオンライン服薬指導ができるようになったのです。今後、さらにオンライン服薬指導がスタンダードな方法となるよう、さまざまな改正が引き続き行われていくでしょう。

<2022年10月最新>オンライン服薬指導の実施要件

<2022年10月最新>オンライン服薬指導の実施要件

ここではオンライン服薬指導の実施要件を表で紹介します。薬機法改正前/改正後/0410対応とそれぞれ記載しているので、表を参考に変更点や実施要件の違いを整理しておきましょう。

        
改正前 改正後(令和4年3月31日[下線]・9月30日改正[太字]) 0410対応
実施方法 初回は対面(オンライン服薬指導不可) 初回でも、薬剤師の判断と責任に基づき、オンライン服薬指導の実施が可能
※薬剤師が責任を持って判断する上で必要な情報などについて例示
初回でも、薬剤師の判断により、電話・オンライン服薬指導の実施が可能
※薬剤師が判断する上で必要な情報などについて例示
通信方法 映像および音声による対応(音声のみは不可) 映像および音声による対応(音声のみは不可) 電話(音声のみ)でも可
薬剤師 原則として同一の薬剤師がオンライン服薬指導を実施※やむを得ない場合に当該患者に対面服薬指導を実施したことのある当該薬局の薬剤師が当該薬剤師と連携して行うことは可 かかりつけ薬剤師・薬局により行われることが望ましい かかりつけ薬剤師・薬局や、患者の居住地にある薬局により行われることが望ましい
診療の形態 オンライン診療または訪問診療を行った際に交付した処方箋
※介護施設等に居住する患者に対しては実施不可
どの診療の処方箋でも可能(オンライン診療または訪問診療を行った際に交付した処方箋に限られない) どの診療の処方箋でも可能(オンライン診療または訪問診療を行った際に交付した処方箋に限られない)
薬剤の種類 これまで処方されていた薬剤またはこれに準じる薬剤(後発品への切り替えなどを含む。) 原則としてすべての薬剤(手技が必要な薬剤については、薬剤師が適切と判断した場合に限る。) 原則としてすべての薬剤(手技が必要な薬剤については、薬剤師が適切と判断した場合に限る。)
服薬指導計画 服薬指導計画を策定した上で実施 服薬指導計画と題する書面の作成は求めず、服薬に関する必要最低限の情報などを明らかにする 特に規定なし
セキュリティ等の留意事項 服薬指導計画に、セキュリティリスクに関する責任の範囲およびそのとぎれがないことなどの明示 ・オンライン服薬指導実施にあたり、患者さまに対して、情報の漏洩などに関する責任の所在を明確にする
・対面と同様に、初診時の要件遵守の確認(麻薬や向精神薬の処方は行わないなど)
初診時の要件遵守の確認(麻薬や向精神薬の処方は行わないなど)
実施場所 患者さま:プライバシー配慮。清潔かつ安全。
薬剤師:その調剤を行った薬局内の場所とすること。この場合において、当該場所は、対面による服薬指導と同程度にプライバシーに配慮する
患者さま:プライバシー配慮。ただし、患者さまの同意があればその限りではない。
薬剤師:患者さまの求めがある場合または患者さまの異議がない場合には、薬局以外の場所でも可能。当該場所は、調剤を行う薬剤師と連絡をとることが可能であるとともに、対面による服薬指導が行われる場合と同程度に患者さまのプライバシーに配慮する。
薬剤師:その調剤を行った薬局内の場所とすること。

引用元:厚生労働省『オンライン服薬指導について』

オンライン服薬指導の調剤報酬

2022年度の診療報酬改定では、オンライン服薬指導の見直しにあわせて、調剤報酬における評価も見直されました。「服薬管理指導料」が新設され、従来の「薬剤服用歴管理指導料」とは点数や要件、施設基準にも変更があり、対面での服薬指導と同等の要件になっています。具体的な点数の変更内容は以下の通りです。

改正前 改正後
情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合 【薬剤服用歴(薬歴)管理指導料】43点 【服薬管理指導料】原則3ヶ月以内に再度処方箋を提出した患者さま:45点
上記以外の患者さま:59点

引用:厚生労働省『令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)』

さらに、麻薬等加算や乳幼児服薬指導加算などの各種加算が算定可能となったことや厚生局への届け出の必要がなくなったこと、施設基準がなくなったことにより、オンライン服薬指導の服薬管理指導料を算定しやすくなりました。

また、注意すべき点として、電話で服薬指導を行う場合には、0410対応にあわせた取り扱いが必要となるため、改定前の薬剤服用歴管理指導料を算定しなければなりません。つまり、映像および音声による対応が必要となる「オンライン服薬指導」で算定できる服薬管理指導料とは点数が異なる点にも注意が必要です。

オンライン服薬指導の実施フロー

オンライン服薬指導の実施フロー

ここでは、オンライン服薬指導の実施フローについて確認していきます。

1.診察

患者さまが対面またはオンライン診療により、医師の診察を受けます。

2.処方箋の送付

患者さまの希望にもとづいて、指定された薬局に医療機関から処方箋がメールやファクシミリなどで送付されます(原本は事後送付)。薬剤師は、患者さまの服薬情報や処方薬の確認を行ったうえで、薬学的知見からオンライン服薬指導の実施が可能であるかどうかを判断します。

3.オンライン服薬指導の実施

スマートフォンやタブレットなどの情報通信機器を活用し、服薬指導を実施します。

4.会計

料金を確認後、クレジットカードなど薬局指定の方法で会計を行います。

5.薬剤の交付

後日、薬局から患者さまの自宅まで調剤済みの医薬品を配送します。調剤した薬剤は品質を確保した状態で届けられるよう薬剤師が必要な措置を講じる必要があります。配送完了後は患者さまに確実に薬剤が届けられたかを確認しましょう。

6.薬剤使用期間中のフォローアップ

次回来局までの薬剤使用期間中、適切な使用を維持するため必要に応じて患者さまへフォローアップを行いましょう。

オンライン服薬指導を実施するうえでの留意点

オンライン服薬指導を実施するうえでの留意点

オンライン服薬指導を実施するうえで留意すべき点について、厚生労働省の『オンライン服薬指導の実施要領について』をもとに解説していきます。

患者さまに対し事前に説明すべきこと

薬剤師が薬学的知見に基づき「オンライン服薬指導の実施ができない」と判断した場合は、患者さまへ理由を添えて丁寧に説明し、対面による服薬指導への切り替えや受診勧奨を行いましょう。また、オンライン服薬指導時の情報漏洩などについても、責任の所在を明確にしておかなければなりません。

服薬アドヒアランスの低下などを防ぐためにすべきこと

服薬アドヒアランスの低下を防ぎ、薬を適正に使用してもらうため、処方された薬剤の性質や患者さまの状態などみたうえで、必要に応じて以下の対応を行います。

  1. ・事前に薬剤情報提供文書などを患者さまに送付したり、画面に表示したりしながら服薬指導を行う
  2. ・薬剤の使用方法を説明する
  3. ・スケジュール通りに服薬できているか、副作用の有無などを確認する
  4. ・患者さまの服薬状況などの情報を処方医にフィードバックする

訪問診療を受ける患者さまへの対応で確認すること

介護施設など複数の患者さまが生活する施設では、オンライン服薬指導の実施可否を一人ひとり判断する必要があります。また、プライバシーの確保に配慮しなければなりません。

本人確認について

原則、患者さまと薬剤師双方で身分確認書類を用意し、薬剤師であること、患者さま本人であることを確認しましょう。ただし、それが明確な場合には毎回本人確認を行う必要はありません。

薬剤師に必要な知識や技能の確保

オンライン服薬指導を行う際は、薬学的知識はもちろん、情報通信機器の使用や情報セキュリティなどの知識も不可欠です。薬局開設者はオンライン服薬指導を行う薬剤師に対し、適切な教育環境を充実させる必要があります。

急速に環境整備が進むオンライン服薬指導、今後も動向に注目しましょう

この記事では、オンライン服薬指導の概要とこれまでの法改正の流れ、実施要件などについて詳しく解説していきました。自宅で服薬指導を受けられるオンライン服薬指導は、その利便性の高さが注目されていますが、通信環境や情報セキュリティ、配送方法など課題もまだまだ多いのが現状です

しかし、2022年9月の改正省令では、薬局以外の場所でのオンライン服薬指導が解禁されたことで薬剤師が自宅から服薬指導を行えるようになるなど、確実に実施しやすい環境が整備されてきています。将来、日本の薬剤師、薬局のあり方に大きな影響を与えるオンライン服薬指導、今後も動向に注目していきましょう。

前原 雅樹さんの写真

監修者:前原 雅樹(まえはら・まさき)さん

有限会社杉山薬局小郡店(福岡県小郡市)勤務。おもに精神科医療に従事し、服薬ノンアドヒアランス、有害事象、多剤併用(ポリファーマシー)などの問題に積極的に介入している。

2019年、英国グラスゴー大学大学院臨床薬理学コースに留学(翌年、同コース卒業)。日本病院薬剤師会精神科専門薬剤師、日本精神薬学会認定薬剤師。

そのほか、大学非常勤講師の兼任、書籍(服薬指導のツボ 虎の巻、薬の相互作用としくみ[日経BP社])や連載雑誌(日経DIプレミアム)の共同執筆に加え、調剤薬局における臨床研究、学会発表、学術論文の発表など幅広く活動している。

記事掲載日: 2022/12/07

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