業界動向
  • 公開日:2021.06.09

2021年度介護報酬改定!背景や改正内容を徹底解説

2021年度介護報酬改定!背景や改正内容を徹底解説

令和3年1月18日、厚生労働省は「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」を公表しました。新型コロナウイルス感染拡大や頻発する大規模災害の影響により、介護事業者にも厳しい状況が続いていますが、改定率は全体で+0.70%とされ、前回に続きプラス改定となりました。

この記事では、令和3年度の介護報酬改定について、改定が行われた背景や目的から具体的な内容、今後の影響について解説していきます

▼参考記事はコチラ
厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項」
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介護報酬とは?

介護報酬とは、介護事業者が要介護者や要支援者などの利用者に対して介護サービスを提供した場合に、その対価として支払われるサービス費用のことをいいます。介護報酬はサービスごとに設定されており、提供にかかる基本的費用に加え、各事業所のサービス提供体制や利用者の状況に応じて、加算・減算が行われる仕組みです。

介護サービスの具体例は、自宅で利用できる訪問介護や訪問入浴介護、訪問リハビリテーションをはじめ、自宅から通う通所介護(デイサービス)や認知症対応型通所介護、短期入所療養介護(ショートステイ)や小規模多機能型居宅介護、福祉用具貸与などがあります。

近年では、薬剤師が患者さまの自宅や施設において服薬管理を行う機会も増えており、介護においても大きな役割が期待されるようになりました。「在宅患者訪問薬剤管理指導料」として医療保険が適用されることもありますが、要介護認定を受けている方においては、「介護予防居宅療養管理指導費(要支援1~2)」や「居宅療養管理指導費(要介護1~5)」として介護保険が適用されます

介護報酬改定の背景

介護報酬改定の背景

近年の介護報酬改定では、地域包括ケアシステムの推進や介護サービスの安定性・持続可能性の確保などを目的として、プラス改定が続いていました。平成30年度の改定では+0.54%、さらに令和1年10月には消費税の増税にあわせた報酬改定と特定処遇改善加算の創設が実施され、+2.13%の改定が行われています。

令和3年度の介護報酬改定においても、団塊の世代のすべてが75歳以上となる2025年のみならず、高齢者人口(65歳以上)がピークになると予想される2040年も見据えたうえで、介護職員の人材確保・処遇改善に配慮しつつ、介護事業者の経営を巡る状況などをふまえて、改定率は全体で+0.70%とされました

特徴的な内訳としては、新型コロナウイルス感染拡大や大規模災害が発生するなかで、「感染症や災害への対応力強化」が計画されたことです。新型コロナウイルス感染拡大に対応するためかかり増しの経費が必要となることなどをふまえ、特例的な評価として0.05%が含まれています。

期間は令和3年9月末までと定められていますが、同年10月以降については、この措置を延長しないことを基本の想定としつつ、感染状況や地域における介護の実態などを踏まえ、必要に応じ柔軟に対応することが示されています

令和3年度介護報酬改定の内容

令和3年度介護報酬改定の内容

令和3年度介護報酬改定の要点は、5つの軸です。ここでは、それぞれの概要について詳しくみていきます。

➀感染症や災害への対応力強化

感染症や災害が発生した場合であっても業務を継続し、利用者に必要なサービスを提供できる体制を構築することが求められます。たとえば研修や避難訓練の実施などもそのひとつです。日頃からの備えと業務継続に向けた取り組みを推進していかねばなりません。

➁地域包括ケアシステムの推進

住み慣れた地域において、利用者の尊厳を保持しつつ、必要なサービスが切れ目なく提供されるような取り組みが必要です。たとえば薬剤師は、居宅療養管理指導において、医師や管理栄養士などとの多職種連携の推進を求められています。

➂自立支援・重度化防止の取り組みの推進

各制度の目的に沿ったうえで、質の評価やデータ活用を行うなどして、科学的に効果が裏付けられた高品質なサービス提供が求められます。具体的には「寝たきり防止など、重度化防止の取り組みの推進」や「介護サービスの質評価と科学的介護の取り組みの推進」に加えて、「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取り組みの連携・強化」があげられました。

➃介護人材の確保・介護現場の革新

業界全体の重要な課題として、介護人材の確保・介護現場の革新に対応することが求められています。介護事業者による職場環境改善の取り組みをより実効性が高いものとするために、「特定処遇改善加算の介護職員間の配分ルールの柔軟化による取得促進」や「ハラスメント対策の強化」などが推進されています。

➄制度の安定性・持続可能性の確保

必要なサービスは確保しつつ、評価の適正化・重点化により、「区分支給限度基準額の計算方法の一部見直し」や「居宅療養管理指導の居住場所に応じた評価の見直し」「生活援助の訪問回数が多い利用者等のケアプランの検証」などが求められます

介護報酬改定による薬剤師への影響は?

介護報酬改定による薬剤師への影響は?

①居宅療養管理指導の居住場所に応じた評価の見直し

令和3年度の介護報酬改定において、薬剤師に大きくかかわる内容は、居宅療養管理指導の居住場所に応じた評価の見直しです。単一建物居住者が1~9人の住宅や施設では単位が加算される一方、単一建物居住者が10人以上の施設では減算が行われます。

<居宅療養管理指導>
例:薬局の薬剤師が行う場合
■単一建物居住者が1人
現行:509単位/回
改定後:517単位/回

■単一建物居住者が2~9人
現行:377単位/回
改定後:378単位/回

■単一建物居住者が10人以上
現行:345単位/回
改定後:341単位/回

②情報通信機器を用いた服薬指導の評価

近年ではテクノロジーの活用や人員・運営基準の緩和を通じた業務効率化・業務負担軽減の推進にも注目が集まっています。薬剤師による居宅療養管理指導について、情報通信機器を用いた服薬指導の評価が新設されたことも、本改定におけるポイントの一つです

<居宅療養管理指導>
例:薬局の薬剤師が行う場合

情報通信機器を用いた場合
45単位/回(新設)
※月1回まで算定可能

<算定要件>
1.対象者
1-1.在宅時医学総合管理料に規定する訪問診療の実施により、処方箋が交付された患者さま
1-2.居宅療養管理指導費が月1回算定されている患者さま
2.薬機法施行規則および関連通知に沿って実施すること
3.訪問診療を行った医師に対して、情報通信機器を用いた服薬指導の内容に関する情報提供を行うこと

在宅医療でも活躍できる薬剤師を目指して

この記事では、令和3年度の介護報酬改定について、改定が行われた背景や目的から具体的な内容、今後の影響について解説してきました。新型コロナウイルス感染症の急速な拡大により、介護事業者は深刻な状況にありますが、本改定では基本報酬の見直しで多くのサービスの基本報酬が引き上げられることとなりました。

現在の介護制度下において、薬剤師の存在感は決して大きいとはいえませんが、地域医療の窓口として活躍する薬局や薬剤師も増えつつあります。超高齢化社会の到来に向けた在宅医療の推進を背景に、よりいっそう力を発揮することが期待されています。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2021/06/09

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