- 公開日:2020.01.21
「薬剤師外来」とは?その現状や今後について解説
近年では、医薬品の進歩や薬物療法の高度化を背景に、抗がん剤治療や緩和薬物治療、C型肝炎治療を外来で行うことも可能になりました。経口薬でありながら、注射剤と同等以上の効果を持つ治療薬も多く、これまで以上に服薬アドヒアランスやコンプライアンスが重要視されています。そうした中で、医薬品の専門家である薬剤師が積極的に介入するために、「薬剤師外来」を設置する病院が増えつつあるのです。
この記事では、【薬剤師外来の概要/現状や実績/今後の展開】について解説します。
薬剤師外来とは?
薬剤師外来とは、「外来患者さまに最適な薬物療法を実施し、有効性・安全性の向上を目指して薬剤師が服薬指導などを通じて治療に介入する取り組み」のことを言います。
診療科が細分化され、一人の患者さまが複数の医療機関を受診することもある現代では、服薬アドヒアランス不良や多剤併用・重複投薬などのポリファーマシーが問題視されています。抗がん剤治療や緩和薬物治療、C型肝炎治療などの高度な薬物治療を提供している施設では、副作用や相互作用についても気を配らなくてはなりません。これらの解決策として、薬剤師外来の活用が期待されています。
そのほか、手術前や検査前の持参薬確認でも薬剤師外来が力を発揮することがあります。患者さまのアレルギー歴をはじめ、併用薬やサプリメントなどの服用歴を確認し、影響ある薬剤を服用されている場合は、手術や検査の日程にあわせて休薬を指示します。医師や看護師などと情報を共有し、手術の延期や麻酔方式の変更を提案する場合もあるでしょう。患者さまが安心・安全に手術や検査を行えるよう、さまざまな角度からサポートしているのです。
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▼参考記事はコチラ>薬剤師外来(川崎市立 多摩病院)
薬剤師外来を行う医療機関は増えつつある
今のところ、薬剤師外来はすべての病院で実施されているわけではありません。しかし、高度な取り扱いを要する医薬品を用いた外来治療は確実に増えており、薬剤師外来を設ける医療機関は増えつつあります。
たとえば、がん医療においても、「外来がん化学療法」が主流となりました。都道府県がん診療連携拠点病院・国立がん研究センター東病院では、2009年6月に薬剤師外来が開設。主な役割として、経口抗がん剤治療を在宅で行う患者さまの治療をサポートします。
医師から依頼を受けた薬剤師外来は、投与スケジュールや投与量をはじめ、減量基準などを確認して服薬指導を行います。また、2回目以降の受診となる患者さまには、医師の受診予約の30分前に薬剤師外来の予約を入れてただき、採血結果の待ち時間を利用して副作用の状況やアドヒアランスを確認するようにしているのだとか。その時に得た重要な情報を踏まえて、医師や看護師などの他職種に情報共有や処方提案をすることもあるそうです。
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▼参考記事はコチラ>「薬剤師外来の実際と今後に向けて」国立がん研究センター東病院薬剤部 松井礼子
<事例紹介>薬剤師外来の具体的実践事例
ここでは、一般社団法人 日本病院薬剤師会が報告している『外来患者への薬剤師業務の進め方と具体的実践事例(Ver.1.0)』を参考に、薬剤師外来の実践事例をご紹介します。
国立がん研究センター東病院では、胃癌術後補助化学療法のS-1単剤治療を行う患者さまを対象に、継続した薬学的管理を実施。すると、副作用による緊急入院の割合が減少した事例が報告されています。薬剤師未介入群では8.8%の患者さまが緊急入院を要した一方で、薬剤師介入群は緊急入院が0%であったことから、薬剤師外来の有用性が読み取れるでしょう。
また、KKR高松病院では薬剤師外来の介入により、中止および減量に関する処方変更の割合が非介入群に比べ高かったことが報告されています。処方変更件数・変更率は、薬剤外来介入群が93 件(18.0%)でしたが、薬剤師外来非介入群では76 件(10.1%)でした。このことから、薬剤師外来の取り組みはポリファーマシーに対しても有効であるとわかります。
薬剤師外来は患者さまの安全性確保に必要
近年、薬物療法は高度化・複雑化しています。新しい作用機序の薬剤や重篤な副作用を引きおこす可能性のある薬剤が、発売と同時に臨床で使用されるように。また、一人の患者さまが多くの医療機関を受診することで、薬剤の併用による相互作用も問題となっています。
このような状況が続くと予想される中、ハイリスクな薬剤を使用する患者さまの安全性を確保し、円滑な治療継続をサポートしていかなければなりません。だからこそ、薬剤師外来のように医薬品の専門家である薬剤師が、これまで以上に介入していく必要があるのです。
さらに今後は、地域の保険薬局は専門医療機関の医師や薬剤師と連携し、抗がん剤治療などを受ける患者さまをサポートしていくことが求められています。2019年3月に与党部会審査を通過した改正薬機法案では、がんなどの専門的な薬学管理に他医療機関と連携して対応できる、「専門医療機関連携薬局」の必要性が明示されました。つまり、医療機関の薬剤師外来と地域の保険薬局が連携していくことが期待されているのです。
「薬薬連携」により、薬局薬剤師にも役割が期待されるように
この記事では、【薬剤師外来の概要/現状や実績/今後の展開】について解説しました。医薬品の高度化や薬物療法の進歩を背景に、外来で治療を行う患者さまは急速に増えています。そこで、医薬品の専門家である薬剤師が積極的に介入することで、薬物療法を安心・安全なものにしていくことが求められているのです。
薬剤師外来を担うのは病院薬剤師だけではありません。「薬薬連携」により、保険薬局の薬剤師にもさまざまな役割が期待されています。薬剤師を含めた他職種が協力して、地域の医療を支えていかなくてはならない時代が目前に迫っているのです。
ファルマラボ編集部
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