- 公開日:2020.08.06
石原さとみさんインタビュー「薬剤師って本当にかっこいい」~ドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』~
現在放送中のフジテレビ系連続ドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』は、日本の連続ドラマでは史上初めて病院薬剤師を主人公にした作品です。
「アンサング(称賛されない、知られざる)」の名の通り、裏方として患者さまを支えるため、なかなかスポットが当たりにくい病院薬剤師。
ドラマでは知られざる薬剤師の仕事や病院の舞台裏がリアルに描かれ、SNSを中心に大きな話題となっています。
本作の主人公・葵みどりを演じるのが石原さとみさん。薬剤師を演じたことで起きた気持ちの変化や、ドラマを通して伝えたいメッセージをお聞きしました。
薬剤師からの反響は想像以上だった
2020年7月16日に放送がスタートしましたが、薬剤師の方から反響はありましたか?
友人に、病院薬剤師8年目の「まさしく葵みどりです」という感じの子がいるんですが、その子から来たメールが本当に嬉しかったです。
日々さばいていく処方箋の先には一人ひとりの患者さまやご家族がいるんだとドラマを観て改めて気づいたと、送ってくれました。
また、現在はコロナ禍で病棟に行けず、患者さまと会う機会がほとんどなくなってしまったみたいなんです。ただそのなかでも患者さまに寄り添うために、医師や看護師、栄養士など医療従事者の皆さんと、チーム医療で何ができるか考えることができたとも。すごく感動しました。
ドラマを見たファンからの反応はいかがでしょうか。
ドラマを観てくださった薬剤師の方に「患者さまから『ありがとう』と言われる回数が増えた」とコメントをいただいたことをマネージャーさんに聞きました。届いてほしい人たちにちゃんと届いている気がして、とても嬉しかったですね。共演者の皆さんにも話すと、すごく喜んでくれました。
薬剤師の人対人のお仕事は尊くてかけがえのないものなんだと伝わったらいいなと思っていたので、想像以上の反響があったのは感慨深いです。
薬剤師の仕事はドラマのように「アンサング(称賛されない、知られざる)」なことが多いですが、ご自身のお仕事のなかで同じように感じたエピソードはありますか?
たとえば、スポーツ選手は試合中に「頑張れ!」とか、ゴールした瞬間に「おめでとう!」「すごい!」って声が本人に届くと思うんです。でも女優のお仕事はなかなかそういうことはなくて。
映像を通して間接的に届けているので、直接声援をいただくことや、「ありがとう」って言われることがあまりないんですよね。舞台ではリアルタイムの反応があったり、ファンレターをいただいたりすることもありますが、やっぱり応援してくださる方に直接会うことはなかなかないので......「ちゃんと届いているのかな」と思うことはありますね。
また、私のことではないですが、マネージャーさんや事務所の方、ドラマのスタッフさんなどは"アンサング"ですよね。 さらにこうして今取材いただけることも、記事が校閲されることも、紙面に載ることも、多くの方たちに支えられて皆さんにお届けできているんだなと、この作品にたずさわってしみじみと感じますね。
薬剤師を演じることで、当たり前の大切さに気づくことができた
これまでに演じられてきた医療従事者と薬剤師の違いは感じますか?
まずはセリフの中に薬名がすごく多いですね(笑)。それから、薬剤師さんは薬を通じていつまでも患者さまと関わっていく存在なんだと感じています。病気を治すためのサポートはもちろん、その後の生活も豊かに、当たり前に送れるかというところまで。一過性ではなく、未来を見据えて患者さまを支えるのは薬剤師さんのとても大切なお仕事なんだと思いました。そこはドラマでも1話ごとにしっかり描いているので、注目してほしいですね。
演じる前後では、薬剤師に対する気持ちやイメージに変化はありましたか?
すごくあります。ドラッグストアで歩いている薬剤師さんを見るだけで、「すばらしい(拍手)、いつも大変ですよね、本当にありがとうございます」と無闇に薬剤師さんに感謝するようになりました。本当に、なんなんでしょう、この思い入れ(笑)。あと「ドラマも観て!」と同時に思っています(笑)。
それから、薬を渡してくださる際の、渡し方や輪ゴムの巻き方などをすごく見るようになりました。輪ゴムひとつをとってもこんなに丁寧に巻いてくださっているとか、キレイに薬袋を折ってくださっているとか、ちゃんとこの向きで入れてくださっているとか。そういうことって当たり前じゃないんですよね。
薬剤師さんの役を演じたからこそ、これまで当たり前だったことの大切さに改めて気づけました。飲んだ薬がちゃんと効いて、息ができること、歩けること、走れること、会話ができること、食べられること......当たり前に日々を過ごせるのは素晴らしいことなんだなと。知らないことがまだまだ多すぎたな、感謝できる人たちがまだまだたくさんいると思いましたね。
すべての科をまたぐ薬剤師だからこそ、多角的な提案ができる
ドラマでは医師と対立する場面も見られます。本作を通じて、それぞれの医療従事者が協力してチーム医療を行うポイントはどのあたりにあると思いますか?
チーム医療だからこそ1人では見えなかったことに気づけたり、治療の幅が広がったり、患者さまと色々な関わり方ができたりしますよね。病気を診る役割と患者さまを診る役割といったように、それぞれの得意分野や専門性を尊重することが大事ではないでしょうか。
チーム医療の中で、薬剤師はどのような役割を果たすでしょうか?
専門の科がなくすべての科をまたぐ薬剤師さんは、広い視点でさまざまな可能性を提案できる重要な役割を担っていると思いますね。
また、薬剤師さんのなかでもそれぞれの特性をいかせたらいいですよね。ドラマの薬剤部チームも、処方箋を淡々とさばいてくれる刈谷さん(薬剤部主任)や瀬野さん(薬剤部副部長)がいるからこそ、葵みどりができることがあると思うので。
薬剤師の仕事は本当にかっこいいんだと伝えたい
薬剤師になりたい子どもが増加しているというデータ※1もありますが、もしご自身のお子さんが薬剤師になりたいと言ったらどう思いますか?
どんなお仕事でも、自分では意識していなくても、人の役に立てるお仕事に就いてほしいと思います。直接「ありがとう」と言ってもらえる仕事もあれば、病院薬剤師のように称賛されにくいお仕事もありますよね。でもこの役を演じたからこそ、もし親になったら、「そういう人たちに支えられてあなたは生きている」と自信を持って言えますし、薬剤師、おすすめしたいですね。
このドラマを通じて、どのようなことを伝えたいですか?
薬剤師さんには、「皆さんのお仕事は本当にかっこいい」と私自身も制作チームもみんな思っているので、その尊敬や感謝が伝わったら嬉しいです。
薬剤師さんではない方にも、全話通して薬剤師のお仕事をちゃんと知ってもらえたらいいなと思いますね。患者さまの立場だと、医師や看護師を頼るケースが多いと思うんですが、薬剤師さんも、医師や看護師と同じように相談していい相手なんだと分かってもらいたいな。
それから薬剤師さんの仕事は、ミスが許されない厳しさがあります。薬を安心して飲んでもらうために、薬剤師さん含め色々な人たちの頑張りがあるんだと気づいてもらえれば。正しい薬を安全に飲めていることを当たり前と思うのではなく、感謝する人たちが増えたら、やっている意味があるのかなと思いますね。
まとめ
石原さんからは、薬剤師への尊敬と感謝の気持ちがひしひしと伝わってきました。 患者さまを裏から支える縁の下の力持ちだからこそ、なかなか本来の役割が伝わりにくい薬剤師。しかしドラマを通じて、石原さんと同じように、薬剤師へのイメージが変わったという声も徐々に増えてきているようです。
薬剤師にとっても、『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』が、自分の仕事の重要性や価値に改めて気づくきっかけになるでしょう。 石原さん演じる葵みどりが病院でどのように奮闘し活躍していくのか、一視聴者として楽しみにしたいと思います。
※1:日本FP協会 小学生『将来なりたい職業』ランキングより
-
撮影:岡田晃奈
メイク:猪股真衣子(TRON)
スタイリング:外山由香里
『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』
2020年7月16日より放送中!フジテレビ系連続ドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』オフィシャルサイトはこちら
CAST
葵みどり...石原さとみ 相原くるみ...西野七瀬 小野塚 綾...成田 凌 刈谷奈緒子...桜井ユキ 羽倉龍之介...井之脇 海 工藤虹子...金澤美穂 販田聡子...真矢ミキ 辰川秀三...迫田孝也 七尾 拓...池田鉄洋 荒神寛治...でんでん 瀬野章吾...田中 圭 ほか
STAFF
原作...『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』 荒井ママレ/医療原案:富野浩充(『月刊コミックゼノン』連載/コアミックス) 脚本...黒岩 勉 主題歌...DREAMS COME TRUE『YES AND NO』 音楽...信澤宣明 プロデュース...野田悠介 演出...田中 亮、相沢秀幸 制作著作...フジテレビ第一制作室