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業界動向
  • 公開日:2018.10.18

患者さまのセルフメディケーションを助ける漢方薬剤師になる方法

患者さまのセルフメディケーションを助ける漢方薬剤師になる方法

平均寿命が長くなり、国民の健康意識が高まる昨今、自身で健康を管理し治療を行うセルフメディケーションを行う人が増えているようです。

そうした中、注目されているのが"漢方"。漢方は個人の体質や症状に応じて使い分ける必要があるため需要が高く、漢方に特化した「漢方薬剤師」を目指す人も増えています。

この記事では、そもそも漢方とはどういったものなのか、どんなスキルを磨いていけば漢方薬剤師になれるのかをお伝えしていきます。

そもそも漢方って、西洋薬とどう違うの?

現在用いられている西洋薬のほとんどは、人工的に化学合成された物質。多くは単一の成分で構成されており、一つの症状や疾患に対して、強い薬理作用を示します。原因が明らかで治療方法が確立している疾患には、一般的には西洋薬の方が優れています。

一方で"漢方"とは、植物や動物、鉱物などの薬効となる天然の素材を組み合わせて作られたもの。5~6世紀以降に中国から伝わった漢方処方をもとに、日本の気候や風土、日本人の体質やライフスタイルに合わせて発展してきました。ある意味、「日本独自の医学」ともいえるでしょう。

天然の成分でつくられた漢方には複数の成分が含まれており、ひとつの処方で複数の病状に対処することができます。検査にあらわれないちょっとした不調や不定愁訴など、西洋薬が苦手な分野でも力を発揮するのです。

セルフメディケーションで注目株の漢方薬

漢方は医療用医薬品にとどまらず、一般用医薬品(OTC医薬品)としても幅広く用いられています。セルフメディケーションにおいても、これまでの西洋薬治療では治せなかった症状にも効果を発揮します。そんな漢方は、今後どう展望していくのでしょうか。

・ますます用いられるようになっていく漢方

日本は世界の中でも有数の「長寿国」として知られています。しかし、高齢化が急速に加速することによって、老人病や慢性病の有病率も年々増加。一部の病気においては西洋医学では治療が難しく、漢方の効果が期待されているのです。厚生労働省も、薬用植物の国内生産拡大に向けて、さまざまな取り組みを行っています。事実、漢方の生産金額はピークの1991年から一時期は低下したものの1999年から徐々に回復を遂げ、2015年には1,600億円を突破しています。

※参照データ 日本漢方生薬製剤協会「漢方整剤等の生産動態」

・高まる漢方薬剤師の需要

セルフメディケーションや慢性病の治療により、漢方の人気はとどまるところを知らず、多くの患者さまが漢方の可能性に大きな期待を抱いています。しかし、数ある漢方の中から自分に合った処方を選択するためには、中医学をはじめとした専門知識に精通していなくてはなりません

そのため、漢方薬剤師をはじめとする専門家の助言が必要とされており、今後も需要は高まっていくでしょう。漢方薬剤師に興味があるのであれば、今から挑戦することがおすすめです。

診察も処方もすべて自分で!"漢方薬剤師"を知ろう

漢方治療は専門的な知識が必要不可欠で、薬剤師が力を発揮できる領域。ですが、実は"漢方薬剤師"になるための資格というものはありません。知識を身に着け、経験を積むことで漢方薬剤師となることができるのです。

ここでは、漢方薬剤師がどういった仕事をしているのかみていきましょう。

・患者さまの治療の中心的役割を担うのが漢方薬剤師

一般的な薬剤師は、医師の発行した処方せんをもとに調剤を行うため、受け身の業務が中心となることもあります。

しかし漢方薬剤師は患者さまから相談を受け、適切な漢方を選択することが主な業務であり、治療の中心的役割を担うことができます。もちろん一定の責任はありますが、やりがいのある仕事として人気です。

・西洋医学だけでなく、中医学の知識も活かせる

漢方を考えるときに必要な知識として、「中医学」というものがあります。西洋医学が症状ごとの治療をおこなう一方で、中医学では身体全体のバランスを考えて治療を行います

「弁証」による問診をおこない、「気・血・水」によって人体をとらえることも特徴の一つ。また「未病先防(みびょうせんぼう)」が重視されていることも特徴で、病気としてあらわれるよりも前から"予防"を考えることも、今求められているセルフメディケーションに適した考え方といえるでしょう。

  • ※弁証...漢方では、"四診"という五感を使った身体診察法をもちいます。患者の見た目や声、匂いなどから得た情報を総合的に分析し、答えを導く方法。
  • ※気・血・水...気はエネルギー、血は血液、水は体内の水分のこと。

・いま注目の「漢方薬・生薬認定薬剤師」とは?

漢方薬・生薬認定薬剤師制度は、公益財団法人日本薬剤師研修センターと日本生薬学会が認定する資格制度。漢方薬や生薬に関する専門的知識を修得し、能力と適性を備えた薬剤師であることを証明します。

漢方の販売や情報提供において必須の資格ではありませんが、漢方の知識を高めるためにはおすすめの資格です。研修会へ参加して試験に合格すれば、"漢方薬・生薬認定薬剤師"と認定されます。

・治療への取り組み方は自分次第

漢方薬剤師には、保険薬剤師のように明確に定義された役割や働き方というものがありません。「治療を重視したい」「健康の増進に貢献したい」など、自分自身で仕事の取り組み方を変えることができます。会社や薬局によっても、漢方薬に対するスタンスが違うため、「漢方薬を通して患者さまとどのように関わりたいのか」ということを自分の中でしっかりと掘り下げた上で、勤務先を判断しましょう。

漢方薬剤師を目指すために必要な3つのスキル

ニーズが高まっている漢方業界。漢方薬剤師を目指すためには、日々知識を習得し、どのようなスキルを磨いていけばいいのでしょうか。

・医療用漢方の知識

漢方薬剤師を目指すためには、まずは身近な医療用漢方の知識を身につけましょう。たとえば、様々なメーカーから販売されている漢方。パッケージの裏に書いてある表記部分を見る際には、適応症だけでなく配合されている成分に目を向けてみましょう。それぞれの成分にどんな役割があるかを知ることが、漢方薬剤師の第一歩となります。

・中医学の知識

漢方を理解するためには、中医学の知識は必要不可欠。「整体観」や「弁証論治」によって体の状態を見極め、適切な漢方処方を選択しなければなりません。また、「五臓六腑」や「八綱分類」、「気・血・水」といった概念も押さえましょう。「黄帝内経」や「傷寒論」といった古典にならうことも大切です。

聞きなれない上に漢字ばかりで難しそうだと感じてしまうかもしれませんが、勉強をはじめれば漢方の奥深さに魅了されることでしょう。

  • ※整体観...体の中全ての臓器や部位は、それぞれ関連しあいながら動いているという考え方。
  • ※五臓六腑...肝・心・脾・肺・腎 の五臓、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦(リンパ管)の六腑のこと。
  • ※八綱分類...治療の方針を立てるために、患者さま症状を「病位、病性、病勢」に分類し、把握するもの。
  • ※黄帝内経...中医学のもととなった、中国最古の医学書。
  • ※傷寒論...後漢末期から三国時代につくられた中国医学の古典。

・コミュニケーション能力

漢方薬剤師を目指すならば、コミュニケーション能力は必須のスキル。

漢方は同じ症状であっても、患者さまの体質や体調によって使い分けなくてはならないもの。そのため、いかに患者さまの"悩み"や"訴え"を聞き出すことができるかで治療の質が決まってしまいます。また、漢方治療には時間を要するものもあり、患者さまからの信頼も重要です。 患者さまになんでも相談してもらえるよう、密なコミュニケーションを目指していきましょう。

ニーズが高まっている今こそ、漢方薬剤師を目指そう!

漢方の概要や業界の今後の展望、漢方薬剤師になるために磨くべきスキルについてご紹介しました。

漢方治療は薬剤師の専門的知識や職能を発揮できる分野であり、将来性が高い領域でもあります。また「漢方は副作用がない」と誤解している患者さまも多く、正しい知識を啓発していくためにも、漢方薬剤師の役割は非常に大切です。

漢方薬剤師に興味がある方は、今のうちから勉強をはじめ、挑戦してみましょう!

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ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2018/10/18

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