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  • 公開日:2024.07.05

ヒルドイドが子供の医療費無償化対象外になる!?後発医薬品についても確認。

ヒルドイドが子供の医療費無償化対象外になる!?後発医薬品についても確認。

湿疹や乾燥肌など、様々な皮膚疾患に用いられる外用剤として、ヒルドイド(一般名:ヘパリン類似物質)を挙げることができます。保湿作用のあるヒルドイドは、皮膚科外来でも処方される頻度が高く、同薬の必要性が低い軽症例にも処方されることが多々ありました。

このような現状を踏まえ、ヒルドイドの自己負担額が2024年10月より増額されます。同薬の適正使用の推進と、安価な後発医薬品への移行を促すことで、医療費を抑制することが目的です。

一方で、これまでヒルドイドを継続的に使用してきた患者さまの中には、自己負担額の増加や、後発医薬品への切り替えに戸惑いを感じられる方もいるかもしれません。

今回は、ヒルドイドに関する基本的な情報や、自己負担額が引き上げられることとなった背景、薬剤師としてどう対応すべきかなど、詳しく解説していきます。

ヒルドイドの主成分と作用

まずは、ヒルドイドの主成分や作用などの基本情報をおさらいします。

効能効果

ヒルドイドに含まれるヘパリン類似物質は、皮膚の保湿と血行促進を目的として使用される成分です。皮膚の水分保持能力を高めることで乾燥を防ぎ、健康な皮膚状態を維持するのに役立つとされています。

また、ヘパリン類似物質は皮膚のバリア機能を高めることで、抗炎症作用をもたらします。実際、湿疹に対するヘパリン類似物質の有効性を検討した研究データの解析で、痒み症状の緩和が示されています。特に、皮膚の乾燥や荒れが原因で生じる肌トラブルに対して処方される機会が多く、幅広い年齢層の患者さまに使用されている薬です。

作用機序

ヘパリン類似物質の作用機序は明確に特定されていません。ただし、前述のように血行を促進することによって、正常な皮膚を維持する役割があると考えられています。具体的には、皮膚内の微小な血管の血流を改善し、皮膚組織へ酸素と栄養素の供給を促進する作用が期待できます。また、ヘパリン類似物質は、皮膚の角層に水分を引き込みつつ、水分を保持することで、バリア機能を強化し、外部の刺激から皮膚を保護作用が期待できます。これらの作用が、皮膚の乾燥や刺激による炎症を軽減し、健康な肌の状態を維持する効果をもたらすと考えられます。

ヒルドイドの患者負担額の増加と後発医薬品の利用を勧める背景

ヒルドイドの患者負担額の増加と後発医薬品の利用を勧める背景

ヒルドイドの自己負担額が増加することによって後発医薬品の使用が促進され、医療費の削減が期待できる一方、ヒルドイドを希望する患者さまにとっては、自己負担額が増加します。以下では、自己負担額が増額される背景や課題について解説します。

医療費の削減政策と後発医薬品

国民の医療費負担の軽減と、国の医療費支出の持続可能性を目指すためには、医療費の削減が重要な政策課題です。この課題を解決する手段の一つが、後発医薬品の普及政策です。

政府は、病院や薬局などの医療機関に対して、価格が安い後発医薬品の処方割合を高めることを推奨しており、これによって国民全体の医療費の削減を図っています。

ヒルドイドの美容目的の不適切な利用と是正措置

ヒルドイドは、多くの皮膚疾患の治療に用いられると前述しましたが、その汎用性の高さや保湿効果への期待から、美容を目的とした不適切使用が問題視されている薬でもあります。

厚生労働省は、貴重な医療資源の利用を最適化する目的で、2024年10月から実施される長期収載品の選定療養において、ヒルドイドを対象薬剤に含めました。

選定療養とは、保険適用外の治療にかかわる費用を患者さまが自己負担し、保険適用内の治療と併用できる医療サービスのことです。また、長期収載品とは、既に後発医薬品が存在している先発医薬品を指すことが一般的です。薬価基準に長期間収載されていることから「長期収載品」と呼ばれます。

長期収載品の選定療養が導入されることにより、ヒルドイドもまた、治療上の必要性が高い場合を除き、自己負担額が増加します。そのため、同薬の不適切使用の抑制が期待されています。一方で、治療上の観点からヒルドイドの処方を希望される患者さまも少なくないでしょう。そのため、後発医薬品に対する適切な知識の啓蒙が重要です。

子供の医療費無償化と患者負担の問題点

子供の医療費の無償化は、子供たちが必要な医療を受ける際の経済的負担を軽減する政策であり、多くの自治体が取り入れている政策です。

例えば「未就学児のみ・15歳まで」など、自治体によって対象年齢は異なるものの、医療費の無償化は公平かつ質の高い医療サービスを提供する上で重要な制度だと言えます。

ただし、ヒルドイドが選定療養の対象となったことで、自己負担額の増額が生じる場合が想定されます。ヒルドイドは小児においても広く処方されている薬剤であり、ヒルドイドを希望する場合には、同薬300gで約750円~780円ほどの増額が発生する場合もあります。

先発医薬品と後発医薬品の有効性や安全性は同等であることを患者さまにも適切に理解していただき、それでもヒルドイドを希望される患者さまには、自己負担額が発生する背景を丁寧に説明する必要があるでしょう。

ヒルドイドの後発医薬品とは

ヒルドイドの自己負担額の増加に伴い、ヒルドイドの後発医薬品に対する注目が高まると予想されます。

次に、ヒルドイドの後発医薬品について、その種類や特徴について詳しく解説していきます。

後発医薬品の定義

後発医薬品は、先発医薬品の特許期間が満了した後に市場に出る、先発医薬品と同じ有効成分、同じ効能・効果をもつ医薬品のことです。後発医薬品は、先発医薬品よりも安価である一方、その有効性や安全性は先発医薬品と同等です。

そのため、後発医薬品の使用を促すことは、患者さまの医療費負担を軽減することのみならず、国全体の医療費削減に役立ちます。

ヒルドイドの後発医薬品の種類と特徴

ヒルドイドの後発医薬品は、主にローション、クリーム、ゲルなど複数の剤形で販売されています。当然ながら、どれもヘパリン類似物質を主成分としており、先発医薬品のヒルドイドと同様に、保湿作用と血行促進作用が期待できます。

しかし、剤形の種類よって使用感が異なり、使い勝手を重視する患者さまにとっては、後発医薬品を好まないケースもあるでしょう。

例えば、クリームタイプはより潤いを感じさせる一方で、ローションタイプはさっぱりとした使用感が特徴とされています。患部の状態や患部の範囲によって医師がどの剤形を使うか判断しますが、患者さまによっては塗り心地に対して不快さを感じてしまい、「やはり以前のヒルドイドが良い」と訴える状況も考えられます。

とはいえ、ヒルドイドの後発医薬品の種類は豊富であり、自己負担額とのバランスも踏まえ、処方医と連携しながら、患者さまに最適な剤形を選択・変更していくことが重要かもしれません。

薬剤師が知っておきたい!ヒルドイド後発品の剤形別使い心地の違い

薬剤師が知っておきたい!ヒルドイドの剤形別使い心地の違い

2024年10月以降、自己負担の増額を避けたい患者さまが増え、ヒルドイドの後発医薬品に対する需要が高まるかもしれません。

炎症部位にのみ使用するステロイドとは異なり、ヒルドイドは保湿剤として、体の広範囲に使用されることも多い薬です。ヒルドイドの後発品においても、先発品の時と同様に、塗り心地などの使用感を把握しておくことも大切です。

また、保湿剤における剤形の違いが保湿作用に違いをもたらすことはなく、どの剤形においても有効性は同等です。また、使用感は人によっても異なることので注意が必要です。

下記、剤形について、塗り心地、展延性、被覆性の観点から解説していきます。

クリーム

クリームは塗り心地、展延性、被覆性どの観点からみても、ローションと軟膏の中間に当たる剤形と言えるかもしれません。

しっとり感と、さっぱりしすぎない塗り心地であり、肌への伸ばしやすさもや、肌を守る被覆性も中等度です。

ただし、ローションやスプレーと比べると、広げにくさを感じる剤形のため、塗る範囲が狭く、腕や顔など塗り広げやすい部位に選択される剤形です。

ローション

ローションはさっぱりした塗り心地で、展延性も高く肌へ広げやすいのが特徴です。

被覆性は高くないものの、肌へ塗り広げやすい点やさっぱりとした塗り心地からも、背中など広範囲に塗布したい時に選択されやすい剤形です。

塗り広げやすく短時間で塗布できるため、起床時や朝の忙しい時間帯にも塗布できるのが特徴です。

スプレー

ローションのようにさっぱりとした塗り心地が特徴で、同様に展延性も高く、広範囲への塗布に選択されます。

手の届きにくい部位などへの塗布にも選択されることがあり、便利な剤形ともいえます。

また夏場など、ベタつきが気になる時期にも使いやすいため選択されやすいです。

フォーム(泡状)

ローションよりもよりさっぱりした塗り心地で、展延性も一番高い剤形です。被覆性は低いため、スプレー同様にベタつきが気になる人におすすめです。

ヒルドイドの後発医薬品の需要の増加に備えよう

記事内では、ヒルドイドの基本的な情報から、先発医薬品の負担額増加、また医療費削減の観点からも後発医薬品をさらに推奨していく必要性などを紹介しました。

ヒルドイドの後発医薬品の種類は豊富なものの、後発医薬品に対する抵抗感を持つ人も少なくありません。患者さまが安心・安全に使用できるよう、ヒルドイドや、後発医薬品に関する知識をアップデートしていきましょう。

青島 周一さんの写真

    監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

記事掲載日: 2024/07/05

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