服薬指導に活かす医薬品情報

エクロックゲル

Q

何のお薬?処方目的は?

A

原発性腋窩多汗症」に適応を有します。

Q

用法・用量は?

A

1日1回、適量を腋窩に塗布します。塗布する時間帯の指定はありませんが、毎日決まったタイミングでの塗布が望ましく、塗布後すぐに薬剤が洗い流されることを避けるという点から、入浴後の使用が推奨されています。塗布部位に創傷や湿疹・皮膚炎等がみられる場合は体内移行量が増加し、抗コリン作用に基づく副作用の発現リスクがあることから、使用を避けることが望ましいとされており、閉塞隅角緑内障や前立腺肥大による排尿障害がある場合は投与禁忌です。
塗布時はボトルからキャップとアプリケーターを外し、アプリケーターに薬液をのせて使用します(図2)。1回の使用量は片方の腋窩に対してポンプ1押し分が目安で、両腋窩に1押し分ずつ使用した場合、ボトル1本が14日分に相当します。
薬剤名称の由来は「エクリン汗腺(Eccrine sweat gland)をブロック(Block)する」です。

Q

開発経緯は?他の治療薬は?

A

 原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版(以下、ガイドライン)では、原発性腋窩多汗症に対する治療の第1選択は塩化アルミニウムの外用療法とされているものの、塩化アルミニウムは保険診療に適用のある外用薬がなく、院内製剤として一般的に適応外処方されており、医療現場では本疾患に対する新しい外用薬が望まれていました。2021年10月時点では、原発性腋窩多汗症に適応を有する外用剤は本剤だけです。

多汗症の有病率
厚生労働省の研究班の2011年度調査によると、原発性腋窩多汗症は人口の5.7%と非常に多いことがわかっています。しかし、これらのうち、医療機関での治療を行っているのは1割程度と推定されます。

Q

作用機序は?

A

エクリン汗腺に発現するムスカリン受容体サブタイプ3 (M3)を介したコリン作動性反応を阻害することで発汗を抑制します。

Q

注意すべき副作用は?

A

皮膚炎や紅斑、掻痒感や湿疹といった皮膚に関する副作用が報告されています。また、抗コリン作用に由来すると思われる口渇の報告もあります。第三相試験では本剤と基剤のみの2群間で比較したところ、全身性の抗コリン作用に関連する有害事象の発現割合に明らかな差は認められなかったものの、本剤の医薬品リスク管理計画書(RMP)にて重要な潜在的リスクとして「全身性の抗コリン作用」が設定され、禁忌に反映されています。

Q

塩化アルミニウム外用療法との使い分けは?

A

<適応>本剤の適応は「原発性腋窩多汗症」であり、腋窩以外の部位への使用は適応外です。ガイドラインは本剤発売前に制定されているため、推奨度合いは未設定です。本剤の薬理作用上、腋窩以外の部位であっても薬効が期待できる可能性はあり、将来適応部位が変わる可能性があります。対して、塩化アルミニウム外用はすべての部位への使用がガイドラインで推奨されています。
<薬効>本剤は抗コリン作用によって発汗そのものを抑制します。6週間を効果判定の目安とし、対症療法薬であることから、改善が認められた後も塗布を継続します。使用を中止すれば症状が治療前の状態に戻ってしまう可能性があります。対して、塩化アルミニウム外用は上皮管腔細胞に障害を与え、表皮内汗管が閉塞するという機序で発汗を減少させ、継続使用により汗の分泌機能を失わせると考えられており、一定期間の使用後、症状が落ち着いていれば使用を中止しても症状が緩和した状態を保てる可能性があります。


◆総評として、原発性腋窩多汗症に唯一保険適応を有する外用薬ですが、保険適応外の塩化アルミニウム外用の上位互換ではなく、すべてを本剤に切り替えるべきとは言えず、状況に応じて使い分ける必要がある薬剤です。

掲載日: 2022/06/23
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