ゼローダ錠
Q |
何のお薬?処方目的は? |
A |
適応症は乳がん、大腸(結腸・直腸)がん、胃がんです。結腸がんについては術後補助化学療法の適応があります。適応症に合わせて用法・用量が異なりますので、患者情報を収集し、適した用法・用量であるかチェックしましょう。 |
Q |
休薬期間をチェック! |
A |
本剤は14~21日間服用後、7日間の休薬を1クールとし、治療を継続します。休薬期間が設けられているのは、継続して服用することによる副作用(手足症候群、消化器症状、骨髄抑制など)の重篤化を防ぐためです。前回の処方日数や経過日数などきちんと確認しましょう。 |
Q |
薬の切り替え、残薬に注意! |
A |
効果や副作用発現状況から同じフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤に処方が変更するケースもあります。特に、ティーエスワンに含まれるギメラシルにより、5-FUの異化代謝が阻害され、著しく血中濃度が上昇することがあり、ティーエスワン服薬中止後7日間はゼローダを服用してはいけません。処方薬変更時、過去にティーエスワンを服用していた場合には残薬の有無も必ず確認し、併用しないよう指導する必要があります。また、フッ化ピリミジン系の抗真菌薬もあるため、併用薬の確認は十分行います。 |
Q |
その他注意すべき併用薬は? |
A |
併用注意となっている薬剤はワルファリンとフェニトインです。これは、本剤がCYP2C9の酵素蛋白合成系に影響を及ぼし、それらの血中濃度を上昇させるためと考えられています。特にワルファリンとの併用については、血液凝固能検査値異常や出血が発現し死亡に至った例も報告されており、これらの副作用は併用開始数日後から本剤投与中止後1ヶ月以内の期間に発現しています。警告も出ており、定期的に血液凝固能検査を行わなければなりません。併用されている患者さまには、検査値(PT-INR など)の確認、出血傾向の自覚症状(鼻血や歯茎からの出血、内出血、血尿など)の有無についても情報収集しましょう。 |
Q |
他のフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤との違いは? |
A |
本剤はまず消化管でそのまま吸収され、肝臓を通って腫瘍に届くまで、3つの段階を経て代謝酵素により代謝され、腫瘍組織にたどりついて初めて作用を発揮します。そのため、従来のフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤の持つ、下痢や嘔吐などの消化管障害や、血球の産生が低下する骨髄抑制も比較的少なく、腫瘍内における5-FUの濃度が上昇するため、効率よく悪性腫瘍に作用する薬剤といえます。 |
Q |
手足症候群に注意! |
A |
手足症候群はゼローダでは特に発現頻度が高い副作用です(承認時まで、単剤療法で59.1%)。広い範囲に皮膚の赤みや紅斑、光沢のあるむくみや水ぶくれが現れ、手がヒリヒリ・チクチクするといった自覚症状がみられます。通常であればそれほど重篤化することはありませんが、海外では手足症候群から感染症にかかり、死亡した例も報告されています。治療開始後2~3クール目に現れることが多いですが、中には投与後24時間以内という早期発現、投与後10ヶ月以上という長期間服用後の発現もあり、個人差があります。手足症候群の発生機序は明確ではありませんが、汗腺への薬剤の蓄積により皮膚細胞が直接障害されることや、抗がん剤治療に伴う皮膚におけるシクロオキシゲナーゼの過剰発現なども新たに提唱されており、適応外でセレコックスが用いられるケースもあります。予防として、治療開始時から皮膚の保湿、保護を行います。保湿剤にはヒルドイドや、ウレパール・ケラチナミンといった尿素軟膏がよく用いられ、治療開始から1日5回以上ハンドクリームを使用したスキンケアを行うことで、手足症候群の症状が現れなかったという報告もあります。また、衣類の締め付け、日常生活での雑巾絞りなどによる摩擦、日光や熱い風呂による刺激を防ぐことも予防につながります。 |
Q |
その他注意すべき副作用は? |
A |
前述の通り、消化管障害や骨髄抑制も従来の抗悪性腫瘍剤に比べると少ないですが、悪心・下痢・口内炎などそれぞれ3割程度にみられます。下痢については、通常より4~6回排便回数が増えている場合は休薬を考慮することもあるので、排便回数なども情報収集しましょう。骨髄抑制は、血球の寿命によって発現時期が異なります。中でも好中球の寿命は数時間~数日程度と短く、好中球減少に伴う感染症は初期に発症することが多く、発熱や咽頭痛などの自覚症状には注意が必要です。 |
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