- 公開日:2020.11.02
難化する国試の概要と対策-第106回薬剤師国家試験-
薬学教育「コア・カリキュラム」の改訂に併せて、新しい出題基準が適用される第106回薬剤師国家試験。高齢化社会に伴う地域医療など、時代のニーズに合わせた教育モデルが出題基準になることで注目を集めています。
今回は、第106回薬剤師国家試験の概要と近年の出題傾向、おすすめの試験対策などについて紹介していきます。
第106回薬剤師国家試験の概要
薬学教育モデル「コア・カリキュラム」が適用される試験
第106回の国試は、文部科学省が掲げる薬学教育モデル「コア・カリキュラム」(以下「コア・カリ」)の改訂に伴い、新しい国家試験出題基準が適用される初めての試験になります。
改訂「コア・カリ」では、卒業時までに修得されるべき「薬剤師として求められる基本的な資質(10の資質)を明確にし、それを身につけるための一般目標(GIO)を設定。さらにGIOを達成するための到達目標(SBO)を明示し薬学生の育成を図っています。
対物から対人へ...。これからの国家試験は、病院や薬局など様々な医療環境で対応できる資質があるかどうかを見極める試験となっていくでしょう。
薬剤師としての10の資質
①薬剤師の心構え 医療の担い手として、豊かな人間性と生命の尊厳について深い認識をもち、人の命と健康な生活を守る使命感、責任感および倫理感を有する。 ②患者・生活者本位の視点 患者の人権を尊重し、患者及びその家族の秘密を守り、常に患者・生活者の立場に立って、これらの人々の安全と利益を最優先する。 ③コミュニケーション能力 患者・生活者、他職種から情報を適切に収集し、これらの人々に有益な情報を提供するためのコミュニケーション能力を有する。 ④チーム医療への参画 医療機関や地域における医療チームに積極的に参画し、相互の尊重のもとに薬剤師に求められる行動を適切にとる。 ⑤基礎的な科学力 生体および環境に対する医薬品・化学物質等の影響を理解するために必要な科学に関する基本的知識・技能・態度を有する。 ⑥薬物療法における実践的能力 薬物療法を総合的に評価し、安全で有効な医薬品の使用を推進するために、医薬品を供給し、調剤、服薬指導、処方設計の提案等の薬学的管理を実践する能力を有する。 ⑦地域の保健・医療における実践的能力 地域の保健、医療、福祉、介護および行政等に参画・連携して、地域における人々の健康増進、公衆衛生の向上に貢献する能力を有する。 ⑧研究能力 薬学・医療の進歩と改善に資するために、研究を遂行する意欲と問題発見・解決能力を有する。 ⑨自己研鑽 薬学・医療の進歩に対応するために、医療と医薬品を巡る社会的動向を把握し、生涯にわたり自己研鑽を続ける意欲と態度を有する。 ⑩教育能力 次世代を担う人材を育成する意欲と態度を有する。 引用:文部科学省 薬学教育モデル・コアカリキュラム近年の国家試験の傾向
禁忌肢
厚生労働省が推奨する「地域包括ケアシステム」の実現に向け、チーム医療の一員として使命感と倫理観を持ち、患者さまや地域の方に寄り添える薬剤師が求められています。 そのような背景もあり、第104回の国試からは、「公衆衛生に甚大な被害を及ぼすような内容」、「倫理的に誤った内容」、「患者に対して重大な障害を与える危険性のある内容」、「法律に抵触する内容」などの「禁忌肢」を一定以上選んだ場合、総得点で合格基準の得点に達していても不合格になるなどの改正がありました。
代表的な8疾患
昨年度より薬学生の皆さんは、改訂「コア・カリ」に基づいた実務実習に参加し、病院や薬局など、現場での的確な対応や臨床体験を学んでいます。実務実習では、実際に体験してほしい代表的な8疾患(がん、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症)が提示されており、これらについての内容は過去の試験にも多く出題されてきました。今回の第106回国試でも代表的な8疾患については多く出題されることが予想されるでしょう。
「応用力」や「思考力」が問われる
近年の国試では、「応用力」や「思考力」が必要になる問題が多く、知識を丸暗記するだけでは合格基準を超えることが難しくなってきています。特に、実務・実践問題などを中心とした「臨床能力」や、実務実習の成果を意識した「実践能力」が問われる問題が多く出題されており、6年制を卒業した薬剤師に対しての期待が感じられます。
国家試験おすすめの対策は?
国試対策では、主題範囲と試験合格基準をふまえて計画的な学習をしていくことが大切です。 しかし、試験範囲も広く情報量も膨大なことから、なかなか思うように自分の学習方法が見つからないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、国試対策としておすすめしたい学習法をご紹介いたします。
過去の国家試験問題を繰り返し解く
過去10年間の国試から、約20%の類似問題が再出題されるといわれており、やはり過去の問題を繰り返し解くことが重要になってきます。解説が理解できない問題があれば、参考書を見ながら丁寧に理解できるまで繰り返し解きなおしてみましょう。 過去の問題を解くことで「試験の出題傾向」「自分の弱点」「試験全体の雰囲気」がわかるようになります。ただし、多くの問題を繰り返し解きなおすのには膨大な時間がかかるので、早いうちから計画的に学習を進めていきましょう。
参考書の読み込み
過去の問題を解いていく際に参考書を使用しますが、ある程度基本的なことが身についたら参考書をメインとして知識を詰め込むのも一つの方法です。ポイントは、ただ読むだけでなくノートや紙などに書くこと。読み終わると勉強した気分にはなりますが、完全なインプットにはなりません。また、書く際にはキレイに書く必要はなく、汚い字で構いません。そして書いた内容に関しての問題を解くことを繰り返し行ってみましょう。「インプット」して「アウトプット」する。これが読んだ内容をしっかり理解するコツになります。スマートフォンなどが普及し、いつでもどこでも多くの情報を取り入れられるようになりましたが、こういった地道な方法で内容を吸収するのも大切なことです。
問題数が多い領域に多くの時間を割く
過去の出題傾向から見ると、「病態・薬物治療・薬理・薬剤」が試験の大きなウエイトをしめ、どの分野からも均等に出題されているわけではありません。 薬学生の皆さんが、これから薬剤師となったときに、医療現場で重要とされる分野から多く出題されているのです。それらの分野に対し学習時間を多くとることが、効率よく試験勉強をすすめていくポイントになるでしょう。また、その知識は薬剤師として業務を行う際にも必ず必要になりますし、学習したことは決して無駄にはならないのです。
覚えやすい語呂で隙間時間を活用
「仲良く結合、悲しく崩壊」
これは「医薬品添加物」カルメロースNaは結合剤、カルメロースCaは崩壊剤を暗記するための語呂です。 このように、語呂を覚えているだけで解ける問題は国試の中にも多くあり、検索サイトを利用すると試験対策の語呂がたくさん見つかります。ぜひ隙間時間を利用して活用していきましょう。
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まとめ
令和3年2月20日(土)、21日(日)の二日間にわたって行われる第106回薬剤師国家試験。
皆さんが薬剤師として第一歩を踏み出す前の大きな壁です。新型コロナウイルス感染症の流行下において、不安や迷いが尽きないなか、国試に向けて一つひとつのことを習得していくのは容易なことではありません。しかし、早くから取りかかり少しでも知識を蓄えていくことはとても大切です。
この記事でご紹介した内容を参考にし、無事合格をつかみ取ってください!
ファルマラボ編集部
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