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  • 公開日:2024.06.26

がお流薬剤師国家試験学習法「科目横断的学習法」とは!?【薬剤師がおが解説】

がお流薬剤師国家試験学習法「科目横断的学習法」とは!?【薬剤師がおが解説】

今回は第110回薬剤師国家試験の受験生に向けた記事の第3弾です!!

全国模試4位を取得した経験のある筆者が成績を伸ばせた、「科目間のつながりを意識した勉強法」について具体的にお伝えします。

勉強法の具体性を上げるほど、合わない方も出てくるかもしれませんが、より実践しやすくなると思います。得点を伸ばすための勉強法に迷っている方は、ぜひ一度自分の勉強法に取り入れてみてください。

がお流勉強法〜科目横断的学習法〜

では早速私が成績を伸ばせたと実感した勉強法をお伝えします。

複数の科目の知識や問題を関連付けながら勉強していく学習法で、「科目横断的学習法」と呼んでいます。

科目横断的学習法をおすすめする理由

理由1:膨大な量の知識を効率的に復習できるため

複数の研究から、1つの分野を連続して学習する「ブロック学習」よりも、異なる分野を交互に学習する「インターリービング学習」の方が深い理解や長期的な記憶の形成を促進することが示唆されています。

国試の勉強法に当てはめると、ブロック学習は、物理、化学、生物...と科目ごとに問題を解いていく方法、インターリービング学習は、物理の問題を解いた後、関連する薬剤の問題を参照し、さらに関連する化学の公式をまとめる...と科目を横断して勉強していく方法と筆者は捉えています。

薬剤師国家試験の出題範囲は膨大です。その知識を定着させるためには、インターリービング学習として、科目を横断した勉強法が効率的と考えられます。

理由2:複数の科目の知識を同時に使う問題が増えているため

近年の国試では、複数の科目の知識を同時に問う連問が増加している傾向にあります。例えば以下の問題は、1つのリード文から衛生、生物、化学の3科目の問題が出題されました。

[例題]第105回 薬剤師国家試験問題 問119、120、121

第105回 薬剤師国家試験問題 問119、120、121

引用:第105回薬剤師国家試験問題及び解答(令和2年2月22日、2月23日実施)|厚生労働省

様々な角度からの出題に備えるためには、復習のやり方にポイントがあります。科目を横断して関連する内容をすべて見直し、1つのリード文からどのような内容を聞かれても答えられるようにしておくことが重要です。そうすることで、応用力を鍛えることができます。

科目横断的学習法の流れ

それではいよいよ科目横断的学習法の具体的な流れを説明していきます。

科目横断的学習法の流れ

①問題を解いて、正誤とその解説を確認する

②解いた問題からキーワードを設定する

③設定したキーワードに関連する範囲を参考書等で復習・整理する

④復習・整理した範囲から別のキーワードを設定し、そのキーワードに関する問題を探す

⑤①~④を繰り返す

②で設定するキーワードは、最初は「自分が気になるな」と思った程度のフレーズでかまいません。慣れてくると他の科目の問題と関連付けやすいキーワードを選べるようになるでしょう。強いてコツを挙げるとしたら、参考書の目次の小項目に記載があるフレーズをキーワードとして設定するのがおすすめです。目次から効率的にキーワードが記載されているページを探すことができ、復習・整理がしやすいからです。

また、④のキーワードに関する問題の探し方を2つ挙げます。1つ目は復習した参考書に載っている類似問題から探す方法、2つ目はインターネットや国試過去問演習アプリで、キーワードから問題を検索する方法です。近年は検索機能が充実したアプリもありますので、うまく利用してみるとよいでしょう。

実際の過去問を用いて解説!!

それでは実際の過去問を用いて、科目横断的学習法の流れを解説していきます。

最初に以下の問題を解いたと想定します。

  

[例題]第108回 薬剤師国家試験問題 問91

第109回 薬剤師国家試験問題 問91

引用:第108回薬剤師国家試験問題及び解答(令和5年2月18日、2月19日実施)|厚生労働省

[解答]1、5
[解説]

2:α線は物質を透過するとき、飛跡が直線状になります。

3:β⁻線やγ線の透過放射線量は指数関数的に減少します。

4:電離作用の強さはα線>β⁻線>γ線の順です。

この問題はα線、β線、γ線などの電離放射線の特徴を問われた問題です。筆者が選んだキーワードは「電離放射線」です。

キーワードの関連付けのコツは「俯瞰してみること」。この問題はα線、β線、γ線などの電離放射線がクローズアップされていますが、少し「俯瞰して」知識を確認すると、放射線には電離放射線と非電離放射線があることがわかります。こちらから電離放射線に関連するキーワードとして「非電離放射線」を設定し、次に解く問題を探します。

非電離放射線は第108回の問240の衛生の問題で問われています。

[例題]第108回 薬剤師国家試験問題 問240

第108回 薬剤師国家試験問題 問240

引用:第108回薬剤師国家試験問題及び解答(令和5年2月18日、2月19日実施)|厚生労働省

[解答]2
[解説]

非電離放射線は波長に基づいて、以下のように分類されます。

波長
UVC 100~280nm
UVB 280~320nm
UVA 320~400nm
可視光線 400~760nm
赤外線 760nm~1mm

肌が赤くなる日やけ(サンバーン)の主な原因となるのが紫外線B波(UVB)です。 一方で、長波長紫外線(UVA)は肌が小麦色に日やけするサンタンを引き起こします。

この問題で非電離放射線の分類の整理ができました。本問題から「UVA、UVB、UVC」をキーワードに設定し、それぞれの波長や特徴をしっかり復習・整理しておきます。

次にUVA、UVB、UVCから、実務の内容につなげて「日焼け止め」を次のキーワードに設定します。

日焼け止めは第103回の問222で出題されています。

[例題]第103回 薬剤師国家試験問題 問222

第103回 薬剤師国家試験問題 問222

引用:第103回薬剤師国家試験問題及び解答(平成30年2月24日、2月25日実施)|厚生労働省

[解答]1
[解説]

肌が赤くなる日やけ(サンバーン)の主な原因となるのは紫外線B波(UVB)です。 一方で、長波長紫外線(UVA)は肌が小麦色に日やけするサンタンを引き起こします。

本問題に含まれている「SPF、PA」をキーワードに設定し、その定義や適切な使用者など、患者さまに使い方の指導をするときに重要になる情報を復習します。

さらに患者さまに説明する上で重要となるのは、過敏症などの副作用のリスクです。最後に「日焼け止めの過敏症」をキーワードとして設定します。

日焼け止めの過敏症は、第102回問202の実務の問題で出題されています。

[例題]第102回 薬剤師国家試験問題 問202

第102回 薬剤師国家試験問題 問202

引用:第102回薬剤師国家試験問題及び解答(平成29年2月25日、2月26日実施)|厚生労働省

[解答]1
[解説]

本患者は以前に日焼け止めで過敏症を起こしたことがあるため、日焼け止めの成分であるオキシベンゾン(紫外線吸収剤)と化学構造が類似しているケトプロフェンを含む貼付剤を推奨すべきではありません。

本問題の答えとなる「ケトプロフェン」をキーワードに設定し、作用機序を整理するために薬理の問題を解く...とつなげられますが、今回はここまでとします。

今回は「物理→衛生→実務→実務→薬理...」という流れになりましたが、自分が復習しやすい順序で横断する科目を選んで大丈夫です。

このように1つの問題に関連する複数の科目の知識を一緒に復習し、併せて該当の問題も解いていくと効率的に学習することができます。

科目横断的学習法のポイント

ここからは科目横断的学習法のポイントを解説します。

ポイント1:関連させるキーワードが重要

科目横断的学習法では、問題からキーワードを設定し、そのキーワードに関連する範囲を参考書等で復習・整理し、次のキーワードを関連させていきます。今回用いた例で説明すると、キーワードの関連付けの流れは、電離放射線→非電離放射線→UVA、UVB、UVC→日焼け止め→SPF、PA→日焼け止めの過敏症となります。

例えば「物理」や「放射線」など、関連する範囲が広すぎるキーワードを設定してしまうと、復習するのに時間がかかってしまい、テンポよく科目横断的な復習ができません。関連させていくキーワードは、復習する際に時間がかかりすぎないように設定しましょう。

ポイント2:最初は時間がかかるもの!!根気よく学習

ポイント①と矛盾するようですが、うまくキーワードを設定したとしても、最初は科目横断的学習法にある程度時間がかかります。今回の例の場合、1つの問題を復習するために4つの科目を参照しており、その度に参考書を取り替えて学習するため非常に大変です。ですが、最初の大変な時期をぜひ乗り越えてみてください。やればやるほど科目間のつながりをイメージしやすくなり、1つの問題で多くの分野の知識を復習できるため、勉強の効率が格段に上がるでしょう。

ポイント③科目横断的学習法を行った問題にはメモを残す!!

科目横断的学習法は、同じ問題を2回目に解いたときに効果を発揮します。最初はキーワードの設定や関連する範囲の復習に時間がかかるかもしれませんが、設定したキーワードや関連させた科目などを、問題や参考書にメモするようにしておきましょう。同じ問題を2回目に解いたときに、1回目よりも効率的に復習することができます。

よくある質問

科目横断的学習法に関して、よく聞かれる質問を解説していきます。

質問1:1つの問題につき、何問の問題を関連付けるとよいですか?

同じ問題を2回目に解いたときに、復習しやすい数の問題を関連付けましょう。復習しやすい量は人それぞれですが、基本的には4〜5問程度つなげるとちょうどよいのではないでしょうか。自分が復習しやすい量を見つけてみてください。

質問2:関連性が高い科目はありますか?

私はあると考えています。以下のように、関連性が高いと感じた科目をグループに分けて、勉強を進めていました。

①物理-化学-薬剤

②生物-薬理-病態

③衛生-法規

※実務はいずれのグループにも入る。

別のグループでも関連性がないわけではないですが、最初のうちはこちらのグループを意識しながら科目横断的学習を進めていくのがおすすめです。

まとめ

今回は私が実践していた科目横断的学習法について解説しました。勉強法には人それぞれ合うものがあると思いますが、勉強法に迷っている方はぜひ部分的にでも取り入れてみてください!!

執筆者:がお さん

九州の大学を卒業。学生時の薬剤師国家試験の模試では全国4位の経験を持つ。卒業後は現場薬剤師、薬局の採用担当といった幅広い活動の傍ら、学生支援活動を広く行っている。X(旧Twitter)やYouTubeでは薬剤師国家試験の範囲からまとめ投稿や動画講義を行う。2023年11月に自身のチームで独自開発した薬剤師国家試験過去問演習ツール「Emery」をリリースし、リリース2ヶ月で約4000ダウンロードを達成。薬学生に信頼される薬剤師国試対策の発信者。

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ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2024/06/26