- 公開日:2021.10.28
<国試対策コラム>法規・倫理・制度の勉強法
CBT対策から薬剤師国家試験対策まで支援している、薬学生の学習塾「薬進会様」監修!国試対策に活かせる科目別学習方法や過去問解説をご紹介します。今回は、勉強を始めてみると覚えることが多く、普段使いなれない法律用語に戸惑いを感じる学生も多々見受けられる「法規・倫理・制度編」!
科目別勉強法
攻略のための3つのコツ
薬剤師国家試験における法規・制度・倫理は、「一番楽勝と思いがちな科目」「後回しにされがちな科目」です。しかし、勉強を始めてみると覚えることが多く、普段使いなれない法律用語に戸惑いを感じる学生も多々見受けられます。ここでは、法規・制度・倫理の攻略のコツを3つ紹介していきます。
1.出題範囲が決まっている
他科目と同様に、改訂されたモデル・コア・カリキュラを基本とし出題項目が定められています。しかし、その範囲が極端に偏っているのが、法規・制度・倫理の特徴になります。
具体的には、薬剤師国家試験対策の参考書の前半100ページに時間をかけたとしても、「代表的な薬害」と「コミュニケーション」の2つぐらいしか出題されません。この2つをマスターするだけなら1時間も勉強すれば終わります。つまり、いかに出題されないところに時間を費やさないかが勉強のコツとなるわけです。出題されやすい項目をピックアップしたので、まずは下記の範囲から攻略しましょう。
①代表的な薬害、②コミュニケーション、③薬剤師の社会的位置づけと責任に係る法規範、④医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保に係る法規範、⑤特別な管理を要する薬物等に係る法規範、⑥医療、福祉、介護の制度、⑦医薬品と医療の経済性。この7項目のうち、③と④はかなりボリュームがあるので、①②⑤⑥⑦を先に取り組んでから、③と④に取り組むと勉強しやすいです。
2.「キーワードひっかけ」より「ロジックひっかけ」
法規・制度・倫理といえば、用語やキーワードを覚えていけば点数が取れると思われがちです。しかし、近代国試の出題傾向は、「条文のキーワードひっかけ問題」が少なくなっており、条文を踏まえてなにが出来てなにが出来ないのかを問うてくる「ロジックひっかけ問題」が増えてきています。言葉一つひとつも大事ですが、『つまりどういうこと?』と意識をして条文を読むと、案外おもしろく学べるのがこの科目の特徴です。
3.医療現場と国試を混同しない
国試のために学んだ内容が、医療現場ではそのまま適応されていない場合も存在します。「調剤過誤の発生や再発を防ぐため」や「作業を効率化するため」など、病院や薬局がそれぞれ工夫した結果のハウスルールが存在するからです。法規・制度・倫理を全く知らないまま、5年生で実務実習に取り組んでしまうと、ハウスルールと国試にでてくる法律が混同してしまう場合も。混同しないように、常に意識して注意をしておきましょう。
合格へのアプローチ
① 勉強ついでに金融リテラシーも高める
法規・制度・倫理で出題される「医療保険制度」は、薬学生のみならず社会人として必ず理解しておかなければなりません。理解していなければ、損をする可能性が高いですし、騙されてしまうこともあり得るのです。
人生100年時代。長寿化によって、定年退職後の人生が長くなり、約2,000万円の金融資産が必要(夫婦で95歳まで生きる場合)と言われています。普通に老後を過ごすためには、だいたい2,000万円ぐらい必要だよといった話です。人が動くと連動してお金が動きます。「医療保険制度」も医療が動くことで、人やお金が動きます。その中で、少しでも損をしないように、医療保険制度の知識が必要となってきます。ここでは、国試の過去問を使って学んでいきましょう。
[例題]第105回 薬剤師国家試験問題 問149
※引用元:第105回 薬剤師国家試験問題 1日目(2)一般問題(薬学理論問題)
[解答]1,5[解法]
1 国民はいずれかの公的医療保険に加入する。正 日本は、国民皆保険制度です。株式会社で働く人は被用者保険(健康保険)、自営業者は国民健康保険、公務員は被用者保険(共済保険)に加入しています。 それぞれ、公的医療保険に加入しているので、病院や薬局で被保険者証を出すと費用は3割負担でいいわけです。しかし、病気にかからない元気な人でも、給料から一定の割合で天引きされており、手取り額が減少しているのも事実です。健康な状態こそラッキーであると考えられますし、割に合わずアンラッキーとも考えられますね。
2 自らが将来使用する医療費を予め積み立てておく自助の原則による。誤 日本の医療保険制度は、「自らが将来使用する医療費を積み立てておく自助の原則」ではありません。「被保険者による相互の負担」で賄っています。現在の高齢者は、現役世代が支払っている保険料を使っていますが、これから少子高齢化がさらに進んでいくと「保険料を支払う現役世代が減る」「高額の医療費を使う高齢者が増加する」ため、被保険者による相互の負担で大丈夫?という懸念はぬぐえません。
3 被用者保険と国民健康保険とでは、現物給付される医療の内容は異なる。誤 被用者保険と国民健康保険はともに現物給付される医療内容は同じです。現物給付とは、診察・検査・投薬・入院などの医療行為として支給されるもの。これは、年収350万円の薬剤師さんも年収800万円の薬剤師さんも受ける同じです。日本は超累進課税制度なので、高所得であればあるほど支払っている保険料が高いのが現実。しかし、制度上の事なので仕方のない話です。ふるさと納税などを活かして得しましょう。
4 医療保険制度による医療の財源に、公費は含まれていない。誤 医療財源のとして現役世代が保険料を支払っているものの、それだけではお金が足りません。財源として公費(租税)や窓口での患者一部負担金もあります。
5 後期高齢者医療制度の被保険者には、75歳以上の者及び65歳以上75歳未満の寝たきり状態にある者が含まれる。正 75歳以上の者、または65歳以上75歳未満の者で、後期高齢者医療広域連合の障害認定を受けた場合、それまでに加入していた医療保険(被用者保険又は国民健康保険)を脱退して後期高齢者医療制度に加入します。
② 実務実習では見るべきところを見る
[問題]第98回 薬剤師国家試験問題 問312
※引用元:第98回 薬剤師国家試験問題 2日目(3)薬学実践問題
[解答]4[解法]
1 厚生労働大臣から麻薬小売業者の免許を取得しなければならない。誤 麻薬小売業者は、都道府県知事から免許を取得しなければならない。調剤薬局は麻薬処方箋によって調剤された麻薬を譲り渡すので、麻薬小売業者にも該当することになります。
2 麻薬の譲り受け、保管、交付等の管理を行う薬剤師は、都道府県知事から麻薬管理者の免許を取得しなければならない。誤 麻薬管理者は麻薬診療施設で施用され、又は施用のために交付される麻薬を業務上管理する者であり、都道府県知事から麻薬管理者の免許を取得しなければならない。
3 覚せい剤原料は、麻薬と一緒に麻薬保管庫内に保管することができる。誤 麻薬と一緒に麻薬保管庫内に保管できるのは、覚せい剤原料ではなく覚せい剤である。薬局に覚せい剤は存在しないので、薬局の麻薬保管庫内には麻薬しか入っていない。
4 麻薬卸売業者からの麻薬の購入は、同一都道府県内にある麻薬卸売業者に限定される。正
5 麻薬処方せんは、調剤済みとなった日から5年間、保存しなければならない。誤 薬局開設者は、当該薬局で調剤済みとなった処方箋を、調剤済みとなった日から3年間保存しなければならない。
薬学生の学習塾「薬進会」(株式会社薬進会)
2009年創立。薬剤師国家試験対策の学習塾。講師は、教室での一斉授業に加え個別指導も行い、現場で薬剤師としても絶賛活躍中。 「わかるまでやる!できるまでやる!」を企業理念に、社会に貢献でき、そして人に優しい薬剤師を輩出することを目指し、その実現のために日々取り組むプロ集団。 現在は自社での講義に加え、大学での講義、企業内定者フォロー、薬学生の学習サポートとして学習コンサルティングなど種々のかたちで薬剤師国家試験対策に携わっている。2020年より「全ての学生が自由に学べる」をコンセプトに「YouTube薬剤師国家試験大学」を運営・配信している。