- 公開日:2022.08.10
- 更新日:2023-11-13
薬学部の「OSCE」対策とは?気になる合格率や評価制度を解説!
薬学部4年生の後半になると、いよいよ実務実習に向けて準備をする時期ですね。実務実習を受けるためには薬学共通試験という試験に合格しなければいけません。「CBT(シービーティ:筆記試験)」と「OSCE(オスキー:実技試験)」の2つで構成されている薬学共通試験は、薬学生が実務実習を開始する前に技能や態度が一定の基準に達しているかを評価するための試験です。
今回は、その2つのうち「OSCE(オスキー:実技試験)」について、課題の内容や合格率、対策法など詳しく解説していきます。
「OSCE」ってどんな試験?
「CBT」「OSCE」で構成される薬学共用試験は、4年生の12月1日から1月31日までの期間内で、各大学が設定した日程で行われます。「CBT」はコンピューターを用いた多岐選択試験、「OSCE」は実技試験となっており、薬学生が実務実習を開始するにあたり技能及び態度が薬剤師として一定の基準に到達しているかどうかを客観的に評価するための試験です。
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「OSCE」の課題項目と合格率
実際に「OSCE」にはどのような課題項目があるのでしょうか。ここでは課題領域や課題の項目、そして合格率について詳しく解説していきます。
「OSCE」の課題項目
以下の表の通り、各領域に準備された複数の課題から1課題のみを実施します。ただし、「薬剤の調製」の領域は調剤に関する多くの項目が含まれており、基本的な調剤技能の修得度を確実に評価するために、計量調剤(散剤、水剤、軟膏剤)や計数調剤から2つの課題を実施します。したがって、1名の受験生あたり、5領域から6課題が出題されることになります。
なお、同大学での受験生には同じ課題が出題されます。
領域 | 課題項目 | 実施課題数 |
---|---|---|
1.患者・来局者対応 | ・薬局での患者応対 | 1課題 |
・病棟での初回面談 | ||
・来局者対応 | ||
・在宅での薬学的管理 | ||
2.薬剤の調整 | ・計量調剤(散剤) | 2課題 |
・計量調剤(水剤) | ||
・計量調剤(軟膏剤) | ||
・計数調剤 | ||
3.調剤監査 | ・調剤薬監査 | 1課題 |
・持参薬チェック | ||
4.無菌操作の実践 | ・手洗いと手袋の着脱 | 1課題 |
・手指の消毒と手袋・ガウンの着脱 | ||
・注射剤混合 | ||
5.情報の提供 | ・薬局での薬剤交付 | 1課題 |
・病棟での服薬指導 | ||
・一般用医薬品の情報提供 | ||
・疑義照会 | ||
・医療従事者への情報提供(2020年度以降) |
「OSCE」の合格率
「CBT」「OSCE」の合格率は9割を超えており、極めて高い傾向にあります。「OSCE」は「CBT」よりも到達率が高く、過去に基準点到達が100%となる年もありました。
【過去の到達率】試験 | 受験者数 | 到達者数*1 | 到達率(%) | CBT・OSCE両基準点到達者 | 2022年度(74大学75学部) | CBT | 10,067人 | 9,643人(9,216人) | 95.8% | 9,639人 | OSCE | 10,084人*3 | 10,065人(9,757人) | 96.4% | 2021年度(74大学75学部) | CBT | 10,426人*2 | 9,992人(9,549人) | 95.8% | 9,983人 | OSCE | 10,441人*3 | 10,419人(10,276人) | 99.8% | 2020年度 (73大学74学部) | CBT | 10,349人*3 | 9,976人(9,557人) | 96.4% | 9,972人 | OSCE | 10,375人*3 | 10,363人(10,171人) | 99.9% | 2019年度(73大学74学部) | CBT | 10,324人 | 10,154人(9,952人) | 98.4% | 10,149人 | OSCE | 10,355人*3 | 10,337人(10,051人) | 99.8% |
---|
*1 ( )は本試験で基準点に到達した受験者数。
*2 違反行為のため本試験は採点対象外となり、再試験として受験した人数を含む。
*3 大学の判断により再試験として受験した人数を含む。
参考:薬学共用試験の実施結果(薬学共用試験センター)「OSCE」の評価制度
「OSCE」の評価については、当該大学・学部の教員、他薬科大学・薬学部の教員、病院・薬局の薬剤師から構成された2名の評価者が行います。また、薬学共用センターからモニターが派遣されます。
評価方法は「細目評価」と「概略評価」の2つ
課題の評価方法には「細目評価」と「概略評価」があり、「細目評価」は20前後の項目からチェックリスト方式で「はい(良い)」あるいは「いいえ(良くない)」で評価を行います。「概略評価」は全体の流れた円滑さなどを6段階(1~6点)で評価します。
評価は課題ごとに行われ、「細目評価」で評価者2名の平均点が70%かつ「概略評価」で評価者2名の合計点が5以上の合格基準点となります。「OSCE」に合格するためには全6課題の基準を満たす必要があります。
評価方法 | 基準点 | |
---|---|---|
細目評価 | 20前後の項目からなるチェックリスト形式で「はい(良い)」あるいは「いいえ(良くない)」で評価する | 評価者2名の平均が70%以上 |
概略評価 | 全体の流れや円滑さなどを、6段階(1~6点)で評価する | 評価者2名の合計点が5以上 |
もしも「OSCE」に落ちてしまったら?
「OSCE」に不合格になっても、再試験を受験することが可能です。また、進級できない事態に陥ることは基本的にありません。とはいえ、「OSCE」での実技課題は臨床実習でも必要になる部分ですので、確実に押さえておく必要があるでしょう。
参考:よくある質問(薬学共用試験センター)「OSCE」の対策は何をしたらよい?
「CBT」が学力試験であるのに対して、「OSCE」は医療面接や手技などの基本的臨床能力を評価する実技試験。では、その「OSCE」の対策としてどのような取組みを行うとよいのでしょうか。ここでは、「OSCE」の対策方法について詳しく解説していきます。
出題範囲はこれまで学んできたこと
「OSCE」の出題範囲は、学校の授業で学んできたことであり、テキストの読み込みやシミュレーションを繰り返すことが対策になります。また、友達と交代で患者役をし、手順を確認しあうのもおすすめです。「OSCE」は5年生の実務実習に入る前に、薬剤師としての態度や基本的な技能を問う試験であり、総合的な実技の復習ととらえるのがよいでしょう。
「OSCE」は加点方式
「OSCE」の試験は加点方式なので、緊張して固まってしまうと評価に大きく影響します。また、制限時間が設けられているため、時間切れを恐れて、プレッシャーを感じることもあるかもしれませんが、落ち着いて確実に対応することが大切です。
合格基準点からも分かるように、1度失敗したからといって不合格になるわけではありません。ミスを引きずらないように気持ちを切り替えて次の課題に臨みましょう。
「OSCE」当日の様子を解説!
当日は、課題ごとに用意された試験会場(ステーション)を順番に回ります。各ステーションでは、1~2分間課題を閲覧してから、5分間で課題を実施します。「患者・来局者応対」や「情報の提供」の課題では、模擬患者や模擬医師がシナリオに沿って薬学生に応対します。
課題は、同じ大学の受験生には同じものが出題されます。どのような内容だったのか、同じ大学の先輩に聞いてみるのもよいでしょう。
「OSCE」当日の様子の一部
●【領域1】患者・来局者応対
<病棟での初回面談>
入室時にあいさつをして、入室許可を得てから、模擬患者に初回インタビューをします。
評価ポイント
インタビューの内容のほか、身だしなみやふるまい、話し方(声の大きさやスピード)など
●【領域2】薬剤の調製
<計量調剤(水剤)>
処方箋にもとづいて水剤を調製します。
評価ポイント
水剤調製の基本的な技能(秤取量を計算し正確に水剤を秤取するなど)
<計数調剤>
処方箋にもとづいて薬袋を作成し、計数調剤を行います。
評価ポイント
計数調剤の基本的な技能
●【領域4】無菌操作の実践
<注射剤混合>
クリーンベンチを用い、注射処方箋にもとづいて、注射剤を混合します(アンプルやバイアルからの薬液の採取、バッグへの薬液の注入など)。
評価ポイント
無菌操作の実践の基本的な技能
●【領域5】情報の提供
<薬局での薬剤交付>
薬局で模擬患者を呼び入れ、自己紹介をして同意を得てから、服薬指導をします。
評価ポイント
服薬指導の内容のほか、身だしなみやふるまい、話し方(声の大きさやスピード)など
まとめ
今回は薬学共通試験「OSCE」について解説しました。「OSCE」は病院・薬局での実務実習前に行う実技試験であり、合格率は極めて高いといえるでしょう。制限時間や評価者の目があり、どうしても緊張してしまうと思いますが、落ち着いて対応すれば基本的に不合格になることはありません。友達と繰り返し実技練習をするなどして仲間と一緒に対策を立てておきましょう。
ファルマラボ編集部
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