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  • 公開日:2023.11.28

薬剤師の年収は低すぎる?年代・男女別・業種での違いや年収アップの方法も解説

 薬剤師の年収は低すぎる?年代・男女別・業種での違いや年収アップの方法も解説

薬剤師は世間一般に「収入が高い」と言われる職業ですが、実は現在の年収に満足できていない薬剤師の方は多くいらっしゃいます。また、薬剤師の平均年収は一般の企業と比較すると決して低くはないものの、業種や働く地域によっても年収が大きく異なります。

そこでこの記事では、薬剤師が年収を低いと感じてしまう理由や、業種・年代・男女別での薬剤師の年収の違い、また年収アップのコツについてもあわせて解説します。

薬剤師の年収が低すぎると感じる理由とは

世間一般には高年収とされているにも関わらず、薬剤師がなぜ「年収が低い」と感じてしまうのか、理由について5つ紹介します。

6年制薬学部の学費が高額である

私立大学の薬学部に入学した場合、6年分の平均的な学費は約1,100万円であり、これに一人暮らしの学生の場合、6年分の生活費や諸経費を加えると2,000万円を超えるとされています。

私立大学の平均的な学費は、令和3年の場合、約135万円。ほかの理系学部と比較しても、薬学部の学費は安くはないことがわかります。

薬学部に6年通うために、人によっては高額な奨学金を借りているケースもあるため、「学費に見合った年収ではない」と感じてしまう薬剤師が多いのかもしれません。

同じ6年制大学卒である医師との年収の差が大きい

薬剤師は医師と同様、大学での修学期間が6年間にもかかわらず、医師と比べて年収は差が開いているという現実があります。

薬学部での勉強は、決して楽なものではありません。学習量は膨大であり、学年が上がるにつれて、研究室、CBT、OSCE、実務実習、卒論、就活など、こなすべきことが増えていきます。

厚生労働省の2022年『賃金構造基本統計調査』によると、薬剤師の平均年収は583.4万円なのに対して、医師の平均年収は1428.9万円。同じ6年間の学生生活を送っても、医師とは2倍以上の差が生じています。

業種によっても年収の差が大きい

薬剤師の年収は業種によっても大きく異なります。とくに病院で働く薬剤師の場合、ドラッグストア勤務の薬剤師と比べると、収入は低くなりがちという現実があります。病院薬剤師の仕事は外来の調剤業務だけではなく、入院患者さまの薬の管理、注射薬の混注など。また多職種連携が必要であり、業務内容は決して楽ではありません。病院薬剤師であっても、ドラッグストアの薬剤師であっても、人の命に関わる薬を扱っていくという責任の重さは変わらないにもかかわらず、業種によって年収の差が生じているのです。

地域によっても年収に差がある

一般に調剤薬局や病院薬剤師の年収は、各地域による薬剤師偏在の影響を受けやすいとされています。

ファルマスタッフの求人から抽出した業種別×地域別の平均年収データによると、薬剤師が多い地域と少ない地域では100〜200万円もの差がありました。「同じ業務内容なのに地方で働く仲間と年収が大きく違っている」と不満に発展しやすい現実があります。

「薬剤師の年収が低すぎる」は本当?薬剤師の平均年収とは

「薬剤師の年収が低すぎる」は本当?薬剤師の平均年収とは

冒頭でも述べたように、薬剤師の年収は世間的な水準と比べると、決して低いわけではありません。国税庁が発表した2022年分の『民間給与実態統計調査結果』では、一般の労働者の平均年収458万円に対して、薬剤師の平均年収は583.4万円です。

以下では上記の全体平均をもとに、薬剤師の年収についてさらに深掘りしてみたいと思います。

年齢によっては年収が低い?年代別の薬剤師平均年収を比較

ここでは2022年『賃金構造基本統計調査』をもとに、薬剤師の年代別の平均年収について詳しく確認します。

年齢 男女計(万円)
20~24歳 381.2
25~29歳 464.8
30~34歳 564.1
35~39歳 608
40~44歳 630.4
45~49歳 641.2
50~54歳 665.6
55~59歳 717.3
60~64歳 582.3
65~69歳 516.4
70歳~ 557.7

※2022年賃金構造基本統計調査:職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)企業規模計(10人以上)

この結果から、薬剤師の平均年収583.4万円に届くのは35〜39歳頃からであることが分かります。一般労働者の平均年収458万円を基準にすると、20〜24歳を除くその他のすべての年代で、この水準を上回る結果となっています。

女性は年収が低い傾向にある?薬剤師の男女別平均年収を比較

次に男女別での薬剤師の年収を比較します。

2022年『賃金構造基本統計調査』によると、男性薬剤師の年収は637.1万円であるのに対し、女性は540.1万円と、男女で大きな違いが生じています。薬剤師全体の平均年収は583.4万円で、これと比較しても女性は低い傾向にあります。

女性は育児休暇をとったり、家庭との両立でパート勤務になったりするケースが多いことから、男女の平均年収に差が出ていると考えられます。

病院薬剤師の年収は低い?薬剤師の業種別平均年収を比較

一般に「病院薬剤師の年収は低い」と言われますが、実際に業種別ではどれくらいの差があるのでしょうか。ここではファルマスタッフ求人より抽出したデータをもとに各業種の平均年収を紹介します。

調剤薬局 591
病院 522
ドラッグストア(調剤併設) 624
ドラッグストア(OTCのみ) 629
企業 577

※2023年11月6日時点のファルマスタッフの掲載求人をもとに算出


上記のデータによると、病院薬剤師の平均年収はほかの業種と比較して低いことが分かります。病院薬剤師の年収が低くなってしまっている理由は、病院の経営状況による場合もありますが、管理職のポストが少ないという背景があります。

一般に薬局長や管理薬剤師のポストは、1つの職場につき1人しか就くことができません。そのため病院のように同じ職種の仲間が多い職場では、昇格が難しい場合も多く、年収が上がりにくいという構造になっています。

薬剤師の平均年収が最も高い業種はドラッグストアです。ドラッグストアは大手企業が経営元となっている場合が多く、店舗での管理職以外にも総務や人事、教育部門など幅広いキャリアプランやポストがあるため、昇給のチャンスが多くなっているのです。

年収1,000万は不可能なのか?年収をアップさせる方法とは

年収1,000万も不可能ではない?年収をアップさせる方法とは

上記のように年収が十分ではないと感じている薬剤師が多い一方で、実は年収を大きく伸ばしている薬剤師もいます。

ここでは年収アップを目指す薬剤師に向けて、方法を3つ紹介します。

専門資格を取得して年収を上げる

専門資格を取得することで年収アップにつながるケースもあります。たとえば研修認定薬剤師は、「かかりつけ薬剤師」になるために必要な要件の一つです。また、外来がん治療認定薬剤師地域薬学ケア専門薬剤師は、2021年8月の改正薬機法で導入された「専門医療機関連携薬局」に必要な要件にもあげられています。これらの資格を取得することで市場価値が高まり、年収アップが期待できるでしょう。

認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取得すると、資格手当によって年収が上がる場合もあります。

薬局経営で独立開業する

独立開業して、薬局経営者になることも年収を大きく伸ばせる方法です。薬局の経営が軌道に乗れば、「高収入」と言われる金額も視野に入ります。ただし、独立開業には薬剤師としてのスキルのみならず、経営やマネジメントスキルも必要になります。

転職して年収を上げる

現在の職場での年収アップが期待できない場合は、転職をして年収を上げる方法も有効です。業界専門の転職コンサルタントに相談することで、自らの市場価値を確認でき、それに見合った職場への転職で年収を上げることが可能となるでしょう。

とくに地方は都市部と比較すると薬剤師が不足していることもあり、給料が高く設定されやすい傾向にあります。僻地や離島まで視野を広げて、年収の高い求人を見つけると良いでしょう。

また全国勤務がある薬局は、地方への転職で手当がつくこともあります。ただし、地方は都市部と比べると、生活が不便になりがちです。年収アップと天秤にかけたうえで、しっかり検討することが大切です。

年収アップの転職を考えているなら、転職コンサルタントに相談

世間一般に「高収入」と見られがちな薬剤師ですが、現在の年収に満足していない薬剤師は少なくありません。理由としては、6年制薬学部の授業料が高額であること、勤務年数を重ねても昇給が大きく期待できないことなどがあげられます。

現在の年収に満足していない場合は、薬剤師専門の転職コンサルタントに相談してみると良いでしょう。年収アップのための良い解決策が見つかるかもしれません。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2023/11/28

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