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  • 公開日:2020.06.10

新設『地域薬学ケア専門薬剤師』とは?内容や資格取得方法について徹底解説【薬剤師の資格入門】

新設『地域薬学ケア専門薬剤師』とは?内容や資格取得方法について徹底解説【薬剤師の資格入門】

薬局において、高度薬学管理機能を提供することが求められるなかで、『地域薬学ケア専門薬剤師』の新設が話題となっています。日本医療薬学会が新設した本資格は、薬局薬剤師を対象にした専門薬剤師資格であることが特徴で、改正薬機法で制度化された「専門医療機関連携薬局」の要件を想定しています。

この記事では、【『地域薬学ケア専門薬剤師』の制度について/資格取得によるメリット/取得方法】などについて解説していきます。

『地域薬学ケア専門薬剤師』とは?

2019年11月3日、福岡市内で開催された第29回日本医療薬学会年会において、同学会専門薬剤師育成委員会委員長を務める滋賀医科大学医学部附属病院薬剤部教授・薬剤部長の寺田智祐氏により、『地域薬学ケア専門薬剤師』が新設されると発表されました。『がん専門薬剤師』や『薬物療法専門薬剤師』『認定薬剤師』などの病院薬剤師を対象にした資格とは異なり、薬局薬剤師を対象にした資格制度であることが特徴です。

厚生労働省が提示した「患者のための薬局ビジョン」において、高度薬学管理機能の提供が求められています。そうした中で、改正薬機法により、がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応でき『専門医療機関連携薬局』が制度化されました。専門医療機関連携薬局の要件として学会認定などの専門性が高い薬剤師の配置が求められており、『地域薬学ケア専門薬剤師』はこれを想定してつくられた専門薬剤師資格だと考えられています。

資格の認定を受けるには、連携施設(薬局)での研修や基幹施設(病院)でのカンファレンスなどに参加する必要があります。そうして日本医療薬学会が定めた基準を満たした薬剤師が、『地域薬学ケア専門薬剤師』として認定される流れです。また、認定申請をする際は、薬剤師だけでなく勤務先の薬局が連携施設になるための申請も同時に行う必要があります

連携施設として認定を受けるには、いくつかの要件があります。たとえば、「『地域薬学ケア専門薬剤師(暫定含む)』などの資格を持った薬剤師が1人以上常勤していること」や「研修体制が整っていること」など必須の5項目。さらには、「複数の医療機関の処方箋を持参した患者が25%以上いる」など選択要件8項目のうち4項目を満たすことが求められています

▼参考資料はこちら
「新専門薬剤師制度の発足にかかる全国研修会 ~地域薬学ケア専門薬剤師制度の運用~」に係るハンドアウト公開のお知らせ

▼参考資料はこちら
地域薬学ケア専門薬剤師、9月にも申請受付開始

『地域薬学ケア専門薬剤師』新設の目的

薬剤師イメージ

薬物治療の高度化や在宅医療への移行などを背景に、地域の薬局においても、高度な薬学的管理ニーズへの対応が求められるようになりました。改正薬機法によって「地域連携薬局」や「専門医療機関連携薬局」が制度化され、患者さまが自身に適した薬局を選択するようになるなかで、薬剤師も専門性の向上が求められています。

しかし、従来の専門薬剤師制度では、薬局薬剤師を対象にした専門薬剤師制度が存在しないため、薬局薬剤師のスキル向上が難しいという問題がありました。また、病院薬剤師にとっても、専門薬剤師の入り口である『認定薬剤師』の要件が厳しいことや、制度間の整合性が乏しいことも問題として取り上げられています。

今回、地域医療を担う薬局の薬剤師を対象とした『地域薬学ケア専門薬剤師』の立ち上げにより、薬局薬剤師が薬局に勤めながら専門薬剤師資格を取得できるようになりました。薬系大学から医療機関、そして地域医療に至る広範な領域において、それぞれの資格を取得した専門薬剤師が、国民の保健・医療・福祉に大きく貢献することが期待されています。

『地域薬学ケア専門薬剤師』の取得方法

『地域薬学ケア専門薬剤師』になるには、所定の要件を満たしたうえで申請し、委員会の選考を経て理事会で承認される必要があります。2024年までは過渡的な要件で認定予定。申請受付は2020年8~9月頃に開始され、2021年1月には初の認定取得者が誕生する見込みです。

また、資格認定申請をする際は、勤務先の薬局が連携施設になるための申請も同時に行う必要があります。以下、それぞれ申請するための必須要件です。

<地域薬学ケア専門薬剤師(暫定)の過渡的措置>

1)日本薬剤師研修センター・研修認定薬剤師、日本病院薬剤師会・日病薬病院薬学認定薬剤師、日本薬剤師会・生涯学習支援システム(JPALS)・クリニカルラダー5以上のいずれかを有していること。
2)実務歴が5年以上
3)申請時に会員であること。
4)学会発表(筆頭)が1回以上、もしくは論文(筆頭)が1報以上あること。
5)学会等参加・発表単位を、20単位以上取得していること。
6)上記の1から5の条件を全て満たす者で、本学会委員会の選考を経て、理事会で承認された者。
※当面は薬局の基幹施設は設定されないため、連携施設におけるがん、薬物療法、医療薬学、地域薬学ケア指導薬剤師の在籍も要件となります。

参考:日本医療薬会「地域薬学ケア専門薬剤師 制度の主な特徴 」より

がん領域の要件を満たした場合には、『地域薬学ケア専門薬剤師(がん)』として認定がおこなわれます。認定要件のうち、学会発表や論文はがん領域に焦点を当てた内容が求められるほか、がん専門薬剤師集中講義の受講も必要となります。

<地域薬学ケア専門薬剤師 研修施設(連携施設)の必須要件>

(1)本学会の「地域薬学ケア指導薬剤師」「薬物療法指導薬剤師」「がん指導薬剤師」「医療薬学指導薬剤師」「地域薬学ケア専門薬剤師」「薬物療法専門薬剤師」「がん専門薬剤師」「医療薬学専門薬剤師」または下記一~四の資格を満たしている薬剤師のいずれか 1 名以上が常勤として勤務していること。
 一)本学会会員であること。
 二)「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」「日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」「その他本学会が認めた認定制度による認定薬剤師」のいずれかの認定を受けていること。
 三)日本薬剤師研修センター主催の薬剤師生涯学習達成度確認試験に合格していること。
 四)第4条の2(10)に相当する研究業績を有すること。
(2)基幹施設に所属する本学会の「地域薬学ケア指導薬剤師」「薬物療法指導薬剤師」「医療薬学指導薬剤師」「がん指導薬剤師」のいずれかによる研修ガイドラインに沿った継続的な指導の受入ができる体制を有していること。または、基幹施設での研修に参加できる体制を有していること。
(3)4領域以上の疾患患者に対する調剤業務の実施及び要指導医薬品・一般用医薬品による自己治療の支援を実施していること。
(4)月に2回以上の患者薬学管理に関する検討会を実施していること。
(5)高度管理医療機器販売業の許可を有していること。
(6)薬学的指導を行う際に患者のプライバシーの確保がなされていること。
(7)複数の医療機関の処方箋を持参した患者が25%以上いること、または直近 1 年間に受け付けた処方箋の月ごとの平均医療機関数が15以上あること。
(8)医薬品の安全性情報を含めて医療情報を収集し、管理していること。
(9)居宅療養管理指導または在宅訪問薬剤管理指導を実施している実績があること。
(10)入退院時の連携体制や医療機関への情報提供体制を有していること。
(11)麻薬処方箋の応需実績があること。
(12)クリーンベンチ等における無菌製剤の調製実施可能な体制を有していること。
(13)腎機能などの臨床検査値などに基づく処方監査や処方提案を実施していること。
※(6)~(13)のうち、4つの要件を具備していることが必要

参考:日本医療薬会「新たな専門薬剤師制度の 今後の手続きについて 」より

※研修施設は、「基幹施設」と「連携施設」に分類。基幹施設は自施設他、連携施設の薬剤師も対象に研修を行います。 なお、運用当初は薬局の基幹施設(単独型・連携型)を認めず、連携施設のみ。指導薬剤師の取得状況などを見て、基幹施設の認定が検討されます。

新設・地域薬学ケア認定薬剤師の今後

薬剤師イメージ

初の薬局薬剤師向けの専門薬剤師資格である『地域薬学ケア専門薬剤師』は、「専門医療機関連携薬局」の要件としても定められていることから、非常に注目されている資格制度です。その一方で、取得や更新を目指すための要件は厳しく、学会への参加や発表による単位の取得に加え、学会発表や論文、5年間の基幹施設での研修(更新要件)など、薬局業務が中心の薬局薬剤師にとってはハードルが高いという意見もみられます。また、診療報酬上の評価が明確でなく、費用対効果の面で取得が敬遠される可能性も否定できません。

しかしながら、抗がん剤治療が外来で受けられるようになるなど、薬物治療の変化を背景に、薬局薬剤師においても高度な薬学的管理ニーズへの対応が求められるようになりつつあります。退院時共同指導などを通じた薬薬連携や、地域の多職種と連携する会議への出席など、薬局薬剤師が地域医療に参加する機会は今後増えていくことが予想されます。がんなどの専門的な領域に携わる薬剤師にとっては、これまで以上の研鑽が求められているため、『地域薬学ケア専門薬剤師』に対する期待は高まっています

まとめ

この記事では、『地域薬学ケア専門薬剤師』とはどのような制度なのか、取得するメリット、求められる資質などについて解説していきました。

これまでは専門薬剤師は病院薬剤師が目指す資格と考えられていましたが、今後は薬局薬剤師が専門薬剤師を取得し、他職種と連携をとりながら、高度な薬学的管理ニーズへの対応を行うことが求められています

また、連携薬局にかかわる項目は、2021年秋に施行される見通しであるため、今後も動向に注目していくようにしましょう。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2020/06/10

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