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  • 公開日:2021.11.24

【薬剤師必見】高齢者の薬物治療で気をつけるべき点とは?

【薬剤師必見】高齢者の薬物治療で気をつけるべき点とは?

総務省が2020年9月に発表した資料「高齢者の人口」によると、65歳以上の高齢者人口は3,617万人と報告されており、今後も日本の高齢化はますます加速すると考えられています。高齢者が薬物治療を受ける機会がこれまで以上に増えるため、薬剤師にも重要な役割が求められるでしょう。

この記事では、高齢者の薬物治療に注意が必要な理由や高齢者に起こりやすい薬に関する問題、服薬指導で確認するべきポイントなどについて解説していきます。

高齢者の薬物治療に注意が必要な理由は?

高齢者の薬物治療に注意が必要な理由は?

高齢者への薬物治療の際には、とくに注意すべきポイントがあります。それらを以下で確認していきましょう。

副作用を起こしやすい

生理機能が衰えている高齢者の場合は、薬を代謝・排泄する能力が低下しやすい状態です。医薬品の血中濃度の異常な上昇によって副作用があらわれる可能性が高まるため、より一層の注意が必要です。

合併症を引き起こしている可能性が高い

高齢者は合併症を引き起こしている可能性が比較的高く、併用薬も多くなりがちです。疾患によっては併用を考慮しなくてはならない薬もあるため、患者さまの既往歴を正確に把握しましょう

服薬管理が難しい

高齢者は複数の医薬品を併用しているケースが多い点に加えて、服薬管理能力が低下している可能性がある点にも注意が必要です。薬の飲み忘れによって期待する効果が得られない、反対に飲み過ぎによって効果が強く出すぎる、薬が代謝できず腎臓や肝臓などに負担がかかる、副作用が出るなどの恐れがあります。そのため薬剤師の積極的な介入が重要です。

高齢者に起こりやすい薬に関する問題

高齢者に起こりやすい薬に関する問題

前項で解説した通り、高齢者の薬物治療には注意が必要です。ここでは、とくに重要な薬に関する問題について解説していきます。

ポリファーマシー

ポリファーマシー」の概念は、厚生労働省によって以下の通り説明されています。

ポリファーマシーは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態である。

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)について」

複数の疾患を抱え、様々な診療科を同時に受診することの多い高齢者は、足し算的に服用薬が積み重なり、副作用や重複投与などのリスクが高まってしまうのです。

処方カスケード

処方カスケード」とは、服用薬による有害事象が新たな病状として誤って認められ、別の処方で対処を繰り返すことをいいます。

原因は、処方薬が漫然と投与されていることや服薬アドヒアランスが低下していること、医療機関と薬局との連携が取れていないことなどがあげられます。

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残薬

薬の飲み忘れや飲み残しによる残薬が問題となることも少なくありません。2007年に日本薬剤師会が在宅医療を受ける75歳以上の患者さまを対象に行った調査によると、残薬による薬剤費ロスは約475億円にのぼると報告されました。

高齢者は服用薬が増えやすい一方で、服薬管理能力が低下している可能性もあり、服薬アドヒアランスの低下から残薬が生じているケースも少なくありません。残薬があることを患者さまが医師に伝えていない場合、処方薬の効果が出ていないと捉えられ、治療薬の増量や別の処方が行われる可能性もあります。

処方カスケード、ひいてはポリファーマシーにつながりかねないため、薬剤師は残薬の有無を把握したうえで、服薬アドヒアランスの向上をサポートすることが重要です

高齢者への服薬指導で確認すべきこと

高齢者への服薬指導で確認すべきこと

高齢者への服薬指導時のポイントや注意点について、解説していきます。

併用薬やサプリメントの服用状況の確認

併用薬が多くなりがちな高齢者に対しては、相互作用を防ぐため、既往歴や併用薬の服薬情報について定期的に確認しましょう。健康維持のためにサプリメントを利用する方もいるため、サプリメントの服用状況に関する聞き取りも重要です

過去に発生した副作用の有無

副作用の状態を把握することは、ポリファーマシーや処方カスケードを回避するために重要です。鎮痛薬による食欲低下や胃部不快感など、「期待される効果以外の作用」が出ていないかを確認しましょう

そのほか、降圧剤による過度の血圧降下など「期待される効果より強すぎる作用」が出ていないかも確認が必要です

服薬管理能力の確認

服薬アドヒアランスが低下していないかを確認して、低下していると感じた場合は、その要因を把握し服薬支援を行うことが重要です。認知機能の低下や難聴、視力低下などによって服薬管理能力が低下していないかといったことを、本人だけでなく日常で関わる家族や介護職員にも聞くようにしましょう

高齢者の健康を守るために、薬剤師にできること

高齢者の健康を守るために、薬剤師にできること

ここまでの内容を踏まえて、高齢者の健康を守るために薬剤師には何ができるのか解説していきます。

かかりつけ薬剤師としての活躍

多くの疾患を有していたり、併用薬を服用していたりする高齢者にとって、服薬情報の一元的・継続的管理は重要です。

薬や健康について豊富な知識と経験をもち、患者さまのニーズに沿った相談に応じられる「かかりつけ薬剤師」には、患者さまの正確な服薬状況の把握が求められています

患者さまの服薬管理と服薬支援

処方内容の複雑化や服薬管理能力の低下などにより、高齢者の医薬品管理は困難になりがちです。

そのため、薬剤師には服薬指導によって服薬の意義をしっかりと伝え服薬アドヒアランスを高めるだけでなく、一包化や服薬カレンダーなど調剤の工夫を行うことも求められています

処方医へのフィードバックや処方提案

薬物療法の専門家としての視点から、処方医に患者さまの服薬状況についてフィードバックを行います。

食前・食後・食間などの服用方法をできるだけまとめることや不均等投与の解消、適切な剤型の選択など、服薬における問題点を解消するための処方提案も、薬剤師に求められる役割です。

在宅医療への参加と多職種連携

高齢化にともなう医療需要の変化とともに、在宅医療に対応できる薬剤師がこれまで以上に必要とされています。あわせて、在宅医療は様々な医療従事者によって支えられているため、多職種連携が重要です。

多職種連携とは、患者さまと定めた共通の目標に向けて、異なる専門性をもった職種が連携しながらそれぞれの役割を発揮することをいいます。

医師や看護師、ケアマネジャー、栄養士など様々な職種と連携することで、患者さまへ医療や介護、介護予防、住まい、生活支援などに関する包括的かつ継続的なサポートが可能です。地域包括ケアシステムの構築においても、多職種連携は欠かせない要素といえるでしょう。

高齢者への薬物治療に関する資格の取得

高齢者の安心安全な薬物療法をサポートするために、関連する資格の取得もおすすめです。

■在宅療養支援認定薬剤師

在宅療養支援認定薬剤師は、一般社団法人日本在宅薬学会によって認定される薬剤師認定制度の一つです。在宅療養を必要としている患者さまに薬剤師の専門性を活かした医療・介護を提供する薬剤師の育成を目的としています。

在宅支援チームの一員として国民の保健・医療・福祉に貢献できる能力の習得が可能です。

■高齢者薬物治療認定薬剤師

高齢者薬物治療認定薬剤師は、一般社団法人薬局共創未来人財育成機構によって認定される薬剤師認定制度です。

合併症の多い高齢者の他科受診や生理機能の低下に起因する様々な薬物治療の問題に対して、改善に必要な基礎知識を習得できます。

■老年薬学認定薬剤師

老年薬学認定薬剤師は、一般社団法人日本老年薬学会によって認定される薬剤師認定制度です。老年症候群の主要な症状(誤嚥、転倒、せん妄、認知症、排尿障害、寝たきり、褥瘡など)を有する高齢者に対して、包括的な薬学的管理・指導を行う能力を身につけることができます。

医薬品のプロとして果たす役割は拡大していく

超高齢社会の到来により、薬剤師が高齢者に対して服薬指導を行う機会は増えています。高齢者は身体機能や認知機能が衰えやすい傾向にあるため、服薬管理においても多くの点に注意しなければなりません。今回ご紹介したポイントに配慮して、ポリファーマシーや処方カスケードなどを防ぐよう意識しましょう。

在宅医療においても、薬剤師には医薬品のスペシャリストとしての役割が期待されています。日頃から患者さまやほかの医療従事者との信頼関係を構築し、服薬情報の提供や疑義照会などを通して、積極的な介入を心がけましょう。

執筆者:ヤス(薬剤師ライター)

新卒時に製薬会社にMRとして入社し、循環器や精神科からオンコロジーまで、多領域の製品を扱う。

現在は患者さまと直に接するために調剤薬局チェーンに勤務しながら、後進の育成のために医薬品のコラムや医療論文の翻訳など、多方面で活躍中。

記事掲載日: 2021/11/24

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