服薬指導に活かす医薬品情報

ダーブロック錠

Q

何のお薬?処方目的は?

A

効能・効果は「腎性貧血」です。

Q

用法・用量は?

A

①保存期慢性腎臓病患者では、赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合、通常、ヘモグロビン濃度が9.0g/dL以上で1回2mg、9.0g/dL未満で1回4mgを開始用量とします。赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合は、1回4mgを開始用量とします。
②透析患者の場合、成人には1回4mgを開始用量とします。
いずれも1日1回経口投与し、最高用量は1日1回24mgまでです。用量調節を行う場合1段階ずつ、少なくとも4週間は同一用量を維持します。

段階 1 2 3 4 5 6 7 8
投与量(mg) 1mg 2mg 4mg 6mg 8mg 12mg 18mg 24mg

Q

作用機序は?

A

ダプロデュスタットは低酸素誘導因子(HIF)-αの分解に関与する、HIFプロリン水酸化酵素(PHD1~PHD3)を阻害し、HIFαを安定化させます。その結果、HIF応答性であるエリスロポエチン遺伝子の転写を促進させて赤血球産生を誘導すると考えられます。

Q

注意すべき副作用は?

A

重大な副作用は血栓塞栓症です。脳梗塞、肺塞栓症、網膜静脈閉塞、深部静脈血栓症、バスキュラーアクセス血栓症(シャント閉塞等)等が報告されています。その他、網膜出血や過敏症、高血圧もあらわれることがあります。

Q

注意すべき患者さまは?

A

脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の重篤な血栓塞栓症があらわれ、死亡に至るおそれがある、と警告が記載されています。本剤の投与開始前に、脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓等の合併症及び既往歴の有無等を含めた血栓塞栓症のリスクを評価した上で、投与の可否が判断されます。また、血圧上昇の可能性があることから高血圧の患者や、血管新生が亢進する可能性があることから悪性腫瘍、増殖糖尿病網膜症等患者にも注意が必要です。肝機能障害のある患者には減量を考慮します。

ESA製剤との違いは?
赤血球造血刺激因子(ESA)製剤は、エリスロポエチンの作用により前赤芽球系細胞のアポトーシスが抑制され、赤血球の産生を促進します。注射薬のため経口投与ができないこと、高用量のESA使用は心血管イベントのリスク因子となる可能性があること、ESA抵抗性患者が存在することが問題点です。
一方、HIF-PH阻害薬は経口投与が可能で、ESA抵抗性を示す患者への有効性も期待されますが、新しい作用機序を持つため長期的な安全性等不明なこともまだ多く存在します。 日本腎臓学会から公表されている「HIF-PH阻害薬適正使用に関するrecommendation」も参照してください。

Q

相互作用は?

A

主にCYP2C8により代謝されるため、クロピドグレル、トリメトプリム等のCYP2C8阻害剤との併用により作用が増強されるおそれがあります。併用する場合は、本剤の減量を考慮します。また、CYP2C8誘導作用を持つリファンピシンも併用に注意が必要です。

表:HIF-PH阻害薬の比較
一般名
(商品名)
用法 併用時の注意点
①リン吸着剤(セペラマー、ピキサロマー、炭酸ランタン等)
②多価陽イオン含有経口薬剤(Ca,Fe,Al,Mg等)
③その他の併用注意薬剤
ロキサデュスタット
(エベレンゾ)
週3回 ①②とも、投与前後1時間以上あける
③HMG-CoA還元酵素阻害剤、プロベネシド等
ダブロデュスタット
(ダーブロック)
1日1回 ①②記載なし
③CYP2C8阻害剤(クロピドグレル等)、リファンピシン
バダデュスタット
(バフセオ)
1日1回 ①記載なし
②は、投与前後2時間以上あける
③プロベネシド、ロスバスタチン等
エナロデュスタット
(エナロイ)
1日1回
食前又は就寝前
①②とも投与後3時間、投与前1時間以上あける
③記載なし
モリデュスタット
(マスーレッド)
1日1回食後 ①は記載なし
②は投与前後1時間以上あける
③HIVプロテアーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤等
※薬剤により、リン吸着剤の一部との相互作用のみが検討されている。
詳細は各添付文書確認。

一方、他のHIF-PH阻害薬と異なり、多価陽イオンを含有する経口製剤(酸化マグネシウムや鉄剤等)やリン吸着剤との相互作用は報告されていません。これらの薬剤は慢性腎臓病・透析患者に使用されることが多く、併用する際に間隔をあける必要がないため、使用しやすい利点があります。


掲載日: 2022/08/04
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります