服薬指導に活かす医薬品情報

ニュベクオ錠

Q

何のお薬?処方目的は?

A

「遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌」に用いられます。前立腺癌の治療では、男性ホルモンの分泌や働きを抑えることでがん細胞の増殖を抑えます。この治療法は内分泌療法と呼ばれ、進行した前立腺癌の治療に対する重要な柱となります。しかしホルモン療法を続けていくと、血清テストステロンの値が50ng/dL未満と非常に低いにもかかわらず、病勢が悪化したり、腫瘍マーカーであるPSAの値が上昇したりする状態に陥ることがあり、この状態を去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)と呼びます。

ホルモン療法開始から去勢抵抗性前立腺癌になるまでには個人差がありますが2~10年程度と言われています。


Q

用法・用量・薬物動態は?

A

1回600mgを1日2回食後に経口投与します。空腹時投与ではAUC・Cmaxともに1/3程度に低下する恐れがあります。

主にCYP3A4で代謝されますが、重度の肝機能障害があっても投与禁忌ではありません。同じ系統に分類される前立腺癌治療薬のエンザルタミド(イクスタンジ)やアパルタミド(アーリーダ)は様々なCYPやP糖蛋白の誘導作用を持ち、相互作用に注意を有する薬剤が多いのですが、本剤はCYP誘導作用を持たないため、相互作用に注意が必要な薬剤が少ないことが特徴です。


Q

注意するべき副作用は?

A

不整脈等の心臓障害があらわれることがあります。なお、心臓障害の報告はエンザルタミドやアパルタミドでも報告があります。



Q

他の去勢抵抗性前立腺癌治療薬(内服)との違いは?

A

去勢抵抗性前立腺癌の治療薬は、以前にエンザルタミドを取り上げた際には、エンザルタミドとアビラテロン(ザイティガ)の2剤が使用可能でした。現在はそこに本剤とアパルタミドが加わり、4剤から選択することになります。


【適応】

本剤は「遠隔転移を有しない」去勢抵抗性前立腺癌にしか使用できませんが、エンザルタミドやアビラテロン、アパルタミドにはその縛りがありません。アビラテロンだけは内分泌療法未治療のハイリスクの予後因子を有する前立腺癌にも使用可能です。


【用法・用量・薬物動態】

エンザルタミドやアビラテロン、アパルタミドは1日1回投与ですが、本剤は1日2回投与する必要があるため、大きな違いとなります。どの薬剤も通常1日4錠の服用が必要です(エンザルタミドのみ、高用量規格の錠剤なら1日2錠)。

重度の腎機能障害・肝機能障害があっても本剤やエンザルタミド、アパルタミドは投与可能ですが、アビラテロンは重度の肝機能障害には禁忌です。


【相互作用】

エンザルタミドやアパルタミドは様々なCYPやP糖蛋白の誘導作用を有しているために、併用薬には注意を払う必要がありました。また、この2剤は痙攣発作の閾値を低下させるという性質を持ち、重大な副作用として痙攣発作が起こると添付文書に記述がありますが、本剤やアビラテロンにはそのような作用・記述はありません。

【薬価(※1日あたり常用量、2022年時点)】

本剤やエンザルタミド、アパルタミドは9100円程であまり差はありませんが、アビラテロンだけは約15000円と差があります。



骨転移について?

前立腺癌は進行すると転移が起きやすく、特に骨への転移が多いのが特徴で、去勢抵抗性前立腺癌においてはおよそ80%もの高い頻度で骨転移が起こることが知られています。転移が起こりやすい部位は、脊椎、肋骨、骨盤、大腿骨など、からだの中心付近にある骨です。

骨転移初期には自覚症状はあまりありませんが、徐々に転移部位の痛みやしびれを起こします。また、骨が脆くなることで骨折が起こりやすくなり、骨のカルシウムが流出し高カルシウム血症を招きます。これらは内分泌療法では対処が出来ないため、ゾーフィゴ静注などを用いた別の治療が必要です。


掲載日: 2023/03/02
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