ベリキューボ錠
Q |
何のお薬?処方目的は? |
A |
適応症は「慢性心不全」で、既に慢性心不全の標準的治療を受けている左室駆出率の低下した心不全(HFrEF:heart failure with reduced ejection fraction)の患者に投与します。左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF:heart failure with preserved ejection fraction)への有効性及び安全性は確立していません。使用にあたっては、臨床成績の内容を理解し、臨床試験における患者背景(前治療や左室駆出率、収縮期血圧等)を理解した上で、適応患者を選択することとされています。 |
Q |
用法・用量は? |
|||||||||||||
A |
通常、成人には1回2.5mgを1日1回食後 から開始し、2週間間隔で1回投与量を5mg及び10mgに段階的に増量します。定期的な血圧測定、低血圧症状の有無により1回量の調節を行います。
本剤は食後投与が推奨されています。食後投与の方が空腹時投与に比べ、AUC、Cmaxが上昇し、患者間のばらつきも小さくなるためです。 |
Q |
作用機序は? |
A |
心不全の進行要因として、交感神経系やRAA系などの過剰な亢進があります。ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)や本剤はcGMP(環状グアノシン一リン酸)シグナルを介して抑制系を活性化させる作用があります。ARNIはネプリライシン阻害(作用の1つ)によりナトリウム利尿ペプチド濃度を上昇させ、cGMPを産生するのに対し、本剤は心不全の病態で障害されている、NO(一酸化窒素)-sGC-cGMP経路をターゲットとし、①NO受容体であるsGCを直接刺激する作用、②内因性NOに対するsGCの感受性を高める作用の2つの機序によりcGMPの産生を増加させます。cGMPシグナル経路を活性化して慢性心不全の進行を抑制します。 通常、血管内皮細胞より産生されたNOは、NOの受容体であるsGCに結合してsGCを活性化、これによりGTP(グアノシン三リン酸)からcGMPに変換されます。cGMPはセカンドメッセンジャーとして、血管障害、心臓リモデリング、線維化、炎症等に対して抑制的に働きます。 |
Q |
禁忌・併用注意は? |
A |
sGC刺激剤で一部の肺高血圧症に用いられるリオシグアト(アデムパス錠)を投与中の患者、本剤に対し過敏症の既往歴のある患者は禁忌です。 細胞内cGMP上昇による降圧作用増強の機序を有するPDE5阻害剤、硝酸剤やNO供与剤は併用注意です。ただし、PDE5阻害剤(シルデナフィルクエン酸塩等)の場合、治療上の有益性と危険性を十分に考慮し、治療上やむを得ないと判断された場合のみ併用とされています。硝酸剤やNO供与剤は、慢性心不全患者の併存疾患に対して処方される可能性があり、慎重に投与します。 |
Q |
症候性低血圧に注意 |
A |
前述の作用機序により低血圧(7.4%)が報告されています。めまい、ふらつき、立ちくらみ、体がだるい、疲れやすい、動悸などの症状に転倒、意識消失が続発する可能性もあります。既に降圧作用を有する薬剤を投与中の患者も多く、本剤の初回投与時や投与量の変更時等、血圧や患者の状態をより注意深く観察します。 VICTORIA試験について
標準治療を受けているHFrEF患者(左室駆出率LVEF<45%、NYHA分類クラスⅡ~Ⅳ)で、心不全増悪の既往、BNP又はNT-proBNPが高値である、再増悪のリスクの高い患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験です。 本剤により、心血管死または心不全による初回入院を有意に減少させる結果がでています。 |
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります