マスーレッド錠
Q |
何のお薬?処方目的は? |
A |
適応症は「腎性貧血」です。CKD進行により腎臓の尿細管上皮細胞の萎縮、間質の線維化が生じ、エリスロポエチン産生細胞(REP細胞)が筋線維芽細胞へ形質転換します。腎性貧血は血液中の酸素濃度の低下を感知する低酸素誘導因子(HIF:Hypoxia Inducible factor)が関連するエリスロポエチン(EPO)産生誘導の一連のシステムがうまく作動せず、貧血状態が持続します。 本剤はHIFを分解する酵素であるHIF-プロリン水酸化酵素(HIF-PH)を阻害します。これによりHIF-αの分解が抑制、安定化するとHIF-βと結合してEPO遺伝子の転写が活性化、内因性EPOの産生が誘導され赤血球産生が促進します。 従来EPOに構造的に類似する赤血球造血刺激因子製剤(ESA:ダルベポエチン アルファ他)が用いられてきましたが、注射のため感染リスクや心身的な負担、抗EPO抗体産生を伴う赤芽球癆(ろう)の副作用やESA抵抗性貧血等の問題がありました。本剤を含むHIF-PH阻害剤は経口薬でESAと異なる作用機序を有します。 |
Q |
用法・用量は? |
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A |
1日1回、食後に経口投与します。初回投与後、腎性貧血の程度や状態等を考慮して使用量が調節されますが、最高用量は1回200mgです。 表1:開始用量
開始用量や増減については、ESA投与状況や腎機能、Hb値等により異なります。投与量調節が必要な場合、1段階ずつ投与量を増減します(表2)。 表2:投与量調節※増減する投与量mg
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Q |
ヘモグロビン(Hb)濃度と投与量増減は? |
A |
【本剤投与開始の目安】
ESAで未治療の場合、保存期慢性腎臓病患者及び腹膜透析患者ではHb濃度で11g/dL未満、血液透析患者では10g/dL未満が投与開始の目安です。 投与開始4週後は添付文書に記載されている[4週時投与量増減表]を、それ以降は[投与量増減表]を参考に増減します。 【投与開始後】Hb濃度が目標範囲で安定するまでは2週に1回程度、安定した後は4週に1回程度確認します。ESAの臨床試験においてHb濃度の目標値を高く設定した場合に、死亡、心血管系障害及び脳卒中の発現頻度が高くなったとの報告があるため、必要以上の造血作用があらわれないよう十分注意します。 【ESAからの切替え後】Hb濃度が低下する傾向があるため推移を観察し、[投与量増減表]を参考に増減します。 【減量、休薬】Hb濃度が4週以内に2.0g/dLを超える等、急激に上昇した場合は減量又休薬する等、適切な処置を行います。本剤は透析で除去されません。 |
Q |
注意するべき副作用は? |
A |
重大な副作用として脳梗塞や心筋梗塞、シャント閉塞等の血栓塞栓症(0.3%)が報告されています。血栓塞栓症は血液が急激に粘稠になることでも惹起されうるので、Hb値の上昇速度が0.5g/dL/ weekを上回らないよう、徐々に増量します。間質性肺疾患(0.5%)については呼吸困難、咳嗽、発熱等の初期症状の有無を確認します。その他、血圧上昇、血管新生亢進作用による悪性腫瘍の増悪や網膜病変のリスクがあるため注意が必要です。 鉄の補充について HIF-PH阻害薬投与により鉄の利用効率がよくなるため、鉄欠乏になる可能性があります。循環している鉄の指標であるTSAT(トランスフェリン飽和度)や貯蔵鉄の指標になりうる血清フェリチン値等、鉄パラメータの確認を行い鉄補充の必要性を判断します。鉄欠乏自体が血栓塞栓症のリスクであるという報告があるため、鉄欠乏にならないように管理します。 |
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります