服薬指導に活かす医薬品情報

アリミデックス錠

Q

何のお薬?処方目的は?

A

閉経後乳癌では、アンドロゲンをエストロゲンに変換するアロマターゼを阻害するホルモン療法を行います。ホルモン療法は女性ホルモンの作用を抑えて癌の増殖力を失わせる治療法で、ホルモン受容体陽性の閉経後乳癌の患者さまに対してはアロマターゼ阻害剤による治療が勧められます。



アリミデックス登場により生存期間延長

アリミデックスの登場以降、ホルモン受容体陽性乳癌の生存率の上昇がイギリスと日本でそれぞれ報告されています。日本における調査では、本剤の登場前後で生存期間中央値(生存者が半数になるまでの期間)が2年弱から4年半程度まで伸びていたことが報告されています。


Q

服用方法は?飲み忘れたら?

A

添付文書には「1日1回」とのみ記載があるとおり、食事に関係なく服用できます。朝昼晩どの時間帯でも効果に変わりはないため、毎日同じ時間帯に服用できるよう患者さま個々の生活リズムを把握したうえで服用コンプライアンス維持の為の指導を行いましょう。飲み忘れた場合は次の服用と8時間以上の間隔をとるよう指導しましょう。


Q

どれくらいの期間飲み続けるの?

A

乳癌診療ガイドライン2010年版では手術後の再発予防で本剤を服用する場合、継続服用期間は5年とされています。ただ、ホルモン受容体陽性の場合、再発のピークは手術後2~5年にかけてだらだら続き、5年を過ぎても、さらに10年を過ぎても再発することがあるため、アリミデックスの服用期間は5年より10年がよいのではないか、とも言われています(現在延長投与試験実施中)。


Q

注意すべき副作用は?

A

高頻度でおこる副作用のひとつに関節痛があります。女性ホルモンは関節の潤滑油としても働くため、アリミデックスの服用によりそれがなくなり、手の関節がこわばるといった症状も出やすくなります。また、骨粗鬆症についても注意が必要とされていますが、治療開始時点で骨粗鬆症が軽~中等症なら、5年間服用しても問題となるレベルまで重症化することはまずないとされています。

Q

重篤な副作用は?

A

皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、アナフィラキシー様症状、血管浮腫、蕁麻疹、肝機能障害、黄疸、間質性肺炎、血栓塞栓症が報告されています。このうち間質性肺炎、血栓塞栓症に関しては医薬品・医療機器等安全性情報285号(2011年11月30日)に掲載され、添付文書も改訂されました。服薬指導では初期症状を伝え、症状発現時はすぐに受診するよう伝えましょう。

Q

注意すべきサプリメントは?

A

本剤との直接的な相互作用はないものの、イソフラボンには注意が必要です。イソフラボンは大豆などに多く含まれるフラボノイドの一種で、化学構造が女性ホルモンと似ており植物女性ホルモンと呼ばれ、体内でエストロゲンと同じような働きをすると考えられています。乳癌発症・再発等のリスクを低下させると期待されている一方で、逆にそのリスクを高めることを示唆する報告もあります。イソフラボンの摂取に関しては、現時点ではホルモンに大きく影響を受けやすい状態にある乳癌の患者さまでは通常の大豆食品による摂取のみとし、サプリメントの摂取は控えることが望ましいでしょう。



アナストロゾールの臨床応用拡大!?

現在、アナストロゾールに関して様々な臨床試験が実施されています。

[術前ホルモン療法]

日本のガイドラインでは、ホルモン受容体陽性の閉経後乳癌の患者さまへの術前のアリミデックス投与は「推奨グレードC1(細心の注意のもとに行うことを考慮してもよい)」となっています。術前治療は、癌の縮小により手術時の切除範囲を小さくし、乳房温存手術を可能にしたり、より形の良い温存手術を可能にします。

[閉経の進行・再発乳癌患者]

再発した閉経前乳癌の患者さまでホルモン受容体陽性の場合、日本のガイドラインではゾラデックスとノルバデックスによる治療が1次ホルモン療法の標準治療ですが、この治療で効果が期待できない場合、2次ホルモン療法としてゾラデックスとアリミデックスの併用で効果があることが実際に確認されており、「推奨グレードC1」とされています。さらに現在、閉経前の患者さまへの術前、及び術後治療に対する臨床試験を実施中です。


掲載日: 2023/07/20
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります