- 公開日:2022.04.13
専門薬剤師とは?転職に活かせる人気の資格や取得方法について詳しく解説
薬剤師としてのスキルアップに向けて、専門薬剤師の資格取得を目指すケースは少なくありません。専門薬剤師となれば職場によっては手当など給与待遇に影響を与えるほか、転職時に有利になる可能性もあります。
ただし専門薬剤師といっても、分野によってその種類は様々です。ここではそのなかから人気の資格を取り上げ、実際に取得するための方法を解説します。これから資格取得を考えている方は、ぜひ参考にしましょう。
専門薬剤師とは?
専門薬剤師は、特定分野の専門知識および技術をもつ薬剤師です。医療機関において医師・看護師などと共に薬物療法の点から患者さまをサポートしたり、治療法研究や新薬開発などの分野で活躍したりしています。
専門薬剤師になるには、多くの場合、各団体の認定を受けた認定薬剤師であることが前提です。そのうえで専門分野への一定の従事経験や研修での単位取得など諸条件をクリアし、初めて資格取得のための試験が受けられます。
そのため、将来的に専門薬剤師の資格を取得したいと考えているなら、まずはその分野に繋がる認定薬剤師を目指しましょう。
認定薬剤師との違いは?
専門薬剤師と同じように、特定分野における専門性を有する資格に認定薬剤師があります。専門薬剤師は多くの場合、認定薬剤師であることが資格取得の前提条件であるのに対し、認定薬剤師にはそのような条件はありません。なかには認定試験が設けられているものもありますが、研修などの単位取得によって認定を受けられるものも少なくありません。
なお、専門分野は認定薬剤師と専門薬剤師とでやや異なります。いずれか一方にしか資格が存在しない分野もあるため、薬剤師としてどのようなキャリアを目指すのかに応じて選択が必要です。
認定薬剤師にはどのような種類がある?転職に役立つ人気の資格7つを紹介
専門薬剤師の役割とメリット
専門薬剤師は薬物療法に関する特定分野での専門知識・技術をもつ薬剤師として様々な役割が期待されています。
専門薬剤師は認定薬剤師を取得したあと、さらに実務経験や論文、研修などを経て目指す高度な資格です。そのため資格取得までの道のりは険しいですが、プロフェッショナルとして周囲からも高く評価されます。
資格取得後も実務を通じてより多くの知識・技術を得られる環境に身を置けるでしょう。また、転職時にも有利に働くほか、資格手当など給与待遇が向上する可能性も考えられます。キャリアアップを目指すうえで、専門薬剤師はメリットの大きな資格です。
専門薬剤師の資格の種類は?
専門薬剤師といっても、以下のようにいくつもの種類があります。自分がどの資格取得を目指すのか、キャリアの方向性から十分に検討しましょう。
・医薬品情報専門薬剤師
・HIV感染症専門薬剤師
・栄養サポートチーム(NST)専門療法士
・外来がん治療専門薬剤師
・がん指導薬剤師
・がん専門薬剤師
・感染制御専門薬剤師
・腎臓病薬物療法専門薬剤師
・精神科専門薬剤師
・地域薬学ケア専門薬剤師
・妊婦・授乳婦専門薬剤師
・認定女性ヘルスケア専門薬剤師
・薬物療法専門薬剤師
専門薬剤師の資格の種類と取得方法
ここでは様々な専門薬剤師の資格から、人気の資格を6つ取り上げて取得方法について詳しく解説します。
がん専門薬剤師
一般社団法人日本医療薬学会により認定される資格で、がん領域の薬物療法等に関して高い知識・技術をもちます。なお、がん専門薬剤師は平成22年5月、医療法上で広告が可能な専門性に関する資格として初めて認められました。
つまり医療機関の看板や新聞・雑誌等の広告として、自身ががん専門薬剤師であることを広告できるのです。なお、日本医療薬学会によれば、がん専門薬剤師になるためには以下の要件を満たし、試験に合格する必要があります。
1.日本の薬剤師免許を持ち、薬剤師として優れた人格と見識を備えている
2.薬剤師として5年以上の実務経験がある
3.申請時において引き続き5年以上継続して日本医療薬学会の会員である
4.「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」「日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」いずれかの認定を受けている
5.日本医療薬学会が認定する「がん専門薬剤師研修施設」において、学会の定めた研修ガイドラインに従いがん薬物療法に関する研修歴が5年以上ある
6.別に定めるクレジットを5年で50単位以上取得している
7.がん専門薬剤師集中教育講座に1回以上参加したこと
8.日本医療薬学会の年会に1回以上参加したこと
9.自ら実施した5年のがん患者さまへの薬学的介入を伴った症例報告50症例(3領域以上のがん種)を提出する
10.以下の研究活動のうち、発表あるいは論文の条件のどちらか一方を満たす
11.学会発表:医療薬学に関する全国学会、国際学会あるいは別に定める地区大会での発表が2回以上ある。本学会が主催する年会において本人が筆頭発表者となった発表を含んでいる。
12.本人が筆頭著者である医療薬学に関する学術論文を1報以上有する。学術論文は、国際的あるいは全国的学会誌・学術雑誌に複数査読制による審査を経て掲載された医療薬学に関する学術論文あるいは症例報告であること(編集委員以外の複数の専門家による査読を経ていない論文や商業誌の掲載論文は対象外)
参照:一般社団法人日本医療薬学会 がん専門薬剤師認定制度規程一般社団法人日本医療薬学会「がん専門薬剤師制度」
感染制御専門薬剤師
一般社団法人日本病院薬剤師会の認定する資格で、感染制御に関する高い知識・技術をもちます。患者さまが安心かつ安全に適切な治療を受けられる、また感染症の治療において薬物療法が適切・安全に行われるよう感染制御に取り組む資格です。
日本病院薬剤師会によれば、感染制御専門薬剤師となるには、以下要件を満たして資格試験に合格しなくてはいけません。
1.申請時において感染制御認定薬剤師の資格をもち、かつICD制度協議会に加盟している学会・研究会のいずれかの会員である
2.日本医療薬学会、日本薬学会、日本臨床薬理学会、日本TDM学会、ICD制度協議会に加盟している学会・研究会、日本薬剤師会学術大会、関連する国際学会あるいは日本病院薬剤師会ブロック学術大会において感染制御領域に関する学会発表が2回以上(少なくとも1回は発表者)
3.複数査読制のある国際的あるいは全国的な学会誌・学術雑誌に感染制御領域に関する学術論文が1編以上(少なくとも1編は筆頭著者)
4.病院長あるいは施設長等からの推薦がある
▼参考サイトはコチラ
一般社団法人日本病院薬剤師会「感染制御専門薬剤師」
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『感染制御認定薬剤師』とは?概要や資格取得方法を解説【薬剤師の資格入門】
妊婦・授乳婦専門薬剤師
一般社団法人日本病院薬剤師会の認定する資格で、妊娠・授乳期における薬物療法について高い知識・技術をもちます。母体の健康および母乳保育のメリットに配慮し、胎児・乳児などに対して薬物の有害性に配慮した薬物療法を行う立場です。
日本病院薬剤師会によれば、妊婦・授乳婦専門薬剤師は以下要件を満たしたうえで、資格試験に合格することで取得できます。
1.申請時において妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師の資格をもち、かつ日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本先天異常学会いずれかの会員である
2.日本医療薬学会、日本薬学会、日本薬剤師会学術大会、上記妊婦・授乳婦領域の学会、関連する国際学会、全国レベルの学会あるいは日本病院薬剤師会ブロック学術大会において妊婦・授乳婦領域に関する学会発表が3回以上(少なくとも1回は発表者)
3.複数査読制のある国際的あるいは全国的学会誌・学術雑誌に妊婦・ 授乳婦領域の学術論文が1編以上(少なくとも1編は筆頭著者)
4.病院長あるいは施設長などから推薦がある
▼参考サイトはコチラ
一般社団法人日本病院薬剤師会「妊婦・授乳婦専門薬剤師」
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『妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師』とは?『妊婦・授乳婦専門薬剤師』との違いも解説【薬剤師の資格入門】
地域薬学ケア専門薬剤師
がん専門薬剤師と同じ一般社団法人日本医療薬学会により認定される、2020年1月に発足したまだ新しい資格です。地域医療に必要な幅広い薬物療法に関する知識・技術を持ち、地域医療や介護現場などで活躍します。
なお、日本医療薬学会によれば、地域薬学ケア専門薬剤師になるには以下要件を満たし、試験に合格する必要があります。
1.日本の薬剤師免許を持ち、薬剤師として優れた人格と見識を備えている
2.薬剤師として5年以上の実務経験がある
3.申請時において引き続き5年以上継続して日本医療薬学会の会員である
4.「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」「日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」いずれかの認定を受けている
5.日本医療薬学会が認定する「薬物療法専門薬剤師研修施設」において、学会の定めた研修ガイドラインに従い薬物療法に関する研修歴が5年以上ある
6.別に定めるクレジットを5年で50単位以上取得している
7.専門薬剤師認定取得のための薬物療法集中講義に1回以上参加した
8.本学会の年会に1回以上参加した
9.自ら実施した5年の薬学的介入を伴った症例報告50症例(4領域以上の疾患)を提出する
10.以下の研究活動のうち、発表あるいは論文の条件のどちらか一方を満たす
11.医療薬学に関する全国学会、国際学会あるいは別に定める地区大会での発表が2回以上ある。本学会が主催する年会において本人が筆頭発表者となった発表を含んでいる。
12.本人が筆頭著者である医療薬学に関する学術論文を1報以上有する。学術論文は、国際的あるいは全国的学会誌・学術雑誌に複数査読制による審査を経て掲載された医療薬学に関する学術論文あるいは症例報告であること(編集委員以外の複数の専門家による査読を経ていない論文や商業誌の掲載論文は本条の対象外)
参照:一般社団法人日本医療薬学会 地域薬学ケア専門薬剤師認定制度規程▼参考サイトはコチラ
一般社団法人日本医療薬学会「地域薬学ケア専門薬剤師」
精神科専門薬剤師
感染制御専門薬剤師や妊婦・授乳婦専門薬剤師と同じ一般社団法人日本病院薬剤師会によって認定され、精神科薬物療法に関する高い知識・技術を証明する資格です。精神疾患について安全かつ適切な薬物療法を行い、その治療と社会復帰に貢献します。なお、日本病院薬剤師会によれば、以下要件を満たしたうえで、資格試験に合格すれば精神科専門薬剤師の資格を取得可能です。
1.申請時において精神科薬物療法認定薬剤師の資格を持ち、かつ日本精神神経学会、日本神経精神薬理学会、日本臨床精神神経薬理学会、日本生物学的精神医学会、日本病院・地域精神医学会、日本社会精神医学会、日本老年精神医学会、日本認知症学会、日本精神薬学会、日本精神科救急学会いずれかの会員である
2.日本医療薬学会、日本薬学会、日本薬剤師会学術大会、上記精神科領域の学会、関連する国際学会、全国レベルの学会あるいは日本病院薬剤師会ブロック学術大会おいて精神科領域に関する学会発表が2回以上(少なくとも1回は発表者)
3.複数査読制のある国際的あるいは全国的学会誌・学術雑誌に精神科領域の学術論文が1編以上(少なくとも1編は筆頭著者)
4.病院長あるいは施設長等からの推薦がある
一般社団法人日本病院薬剤師会「精神科専門薬剤師」
栄養サポートチーム(NST)専門療法士
栄養サポートチームはNSTと呼ばれ、低栄養状態の患者さまに対して医療スタッフが連携し、栄養管理のうえで治療および合併症の予防に向けたケアを行うものです。そして、栄養サポートチーム(NST)専門療法士は一般社団法人日本臨床栄養代謝学会の認定する資格で、NSTに必要となる専門的な知識・技術を持つものであり、薬剤師だけでなく管理栄養士や看護師など関係するさまざまな医療職が目指します。
日本臨床栄養代謝学会によれば、資格取得には以下条件を満たしたうえで資格試験に合格しなくてはいけません。
1.日本において以下いずれかの国家資格を持つ
・管理栄養士
・看護師
・薬剤師
・臨床検査技師
・言語聴覚士
・理学療法士
・作業療法士
・歯科衛生士
・診療放射線技師
2.上記国家資格によって医療・福祉施設で5年以上勤務し、当該施設において栄養サポートに関する業務に従事した経験を持つ
3.日本臨床栄養代謝学会学術集会に1回(10単位)以上、学会主催のNST専門療法士受験必須セミナーに1回以上参加する(この単位数を必須単位数とする)
4.30単位以上の必須単位数を持つ、もしくは必須単位数に加えて日本臨床栄養代謝学会が認める栄養に関する全国学会、地方会、研究会への参加単位数の合計が30単位以上ある(「バーチャル臨床栄養カレッジ」修了証については非必須10単位を認める)
5.下記すべてを満たすこと認定教育施設で、合計40時間の実地修練を修了している
・総合病院またはこれに準ずる病院であってNSTが稼動し、日本臨床栄養代謝学会のNST稼働認定施設である
・施設外部から実地修練希望者の受け入れが可能である
・日本臨床栄養代謝学会「認定医」が当該施設でNSTスタッフとして勤務している
・公告に基づき認定の申請した施設について認定・資格制度委員会が審査を行い、認定されたときは認定証を当該施設責任者に送付する
参照:日本臨床栄養代謝学会 栄養サポートチーム専門療法士認定規程▼参考サイトはコチラ
一般社団法人日本臨床栄養代謝学会「NST専門療法士認定資格制度」
▼関連記事はコチラ
栄養サポートチーム(NST)に求められる仕事と薬剤師が担う役割は?
自身のキャリアプランに沿った選択を
今回は、転職に活かせる人気の資格や取得方法についてについて詳しく解説しました。専門薬剤師などの資格は、特定分野において高い知識・技術をもつことを証明する資格であり、周囲から同分野のスペシャリストとして評価されます。転職でも有利になるほか、資格手当など給与待遇が向上する可能性もあるでしょう。キャリアアップを考えるなら、ぜひ取得を検討してみましょう。
専門薬剤師は基本的に認定薬剤師の資格をもつことを前提に、いくつもの要件をクリアしたうえで資格試験に合格しなければいけません。専門薬剤師といっても様々な種類があるため、自身が歩むキャリアを明確にしたうえで、目指すべき資格を選びましょう。
ファルマラボ編集部
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