- 公開日:2021.07.14
在宅医療の現状と課題から見る多職種連携の重要性
医療の質や安全性を保ちつつ高度化する業務に対応するために、多種多様なスタッフが各々の高い専門性を発揮して業務を分担するとともに、お互いに連携・補完しながら患者さまの状況に適した医療を提供する「多職種連携」が注目を集めています。
この記事では、在宅医療の現状と課題について確認しつつ、多職種連携の概要や重要性、薬剤師の役割について解説していきます。
在宅医療の現状と課題
年々高齢化が進む日本では、自宅や高齢者施設などに医師や看護師などの医療従事者が訪問する「在宅医療」のニーズが高まっています。そうしたなかで、住み慣れた地域で安心して最期まで生活するためには、医療や介護、予防、住まい、生活支援などのサービスが包括的かつ継続的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築が重要となります。
地域包括ケアシステムは、病院や診療所をはじめ、訪問看護ステーション、薬局、歯科診療所などの多くの関係機関と、そのなかで働く様々な医療従事者によって支えられているのが現状です。しかしながら、在宅医療を必要とする患者さまは年々増え続けているだけでなく、医療技術の進歩によって求められるサービスも高度化・複雑化していることから、業務の増大が課題とされています。
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在宅医療における薬剤師の役割とは?仕事内容、求められるスキルも解説
多職種連携の重要性
増大した業務に対応しながら、患者さまの状況へ的確に対応できる医療を提供するためには、「多職種連携」が重要であると考えられています。ここでは多職種連携の概要や重要性について解説していきます。
多職種連携とは
多職種連携とは、異なる専門性を持った職種が集まり、共有した目標に向けて連携しながら役割を発揮することを指します。医療や介護の現場では、一人の患者さまに対して医師や看護師、薬剤師、ケアマネジャーなど、様々な職種の関わりが必要です。その際、職種ごとに独立したサービスを提供するのではなく、多職種がそれぞれの視点を活かし意見交換しながら患者さまをケアすることで、良質な医療サービスを提供できると期待されています。
多職種連携はなぜ重要なのか
様々なメリットのある多職種連携ですが、重要な理由について3つの観点から解説していきます。
■確実な情報共有が行えるため、治療やケアの質が向上する
それぞれの職種が患者さま対応を行う際に、治療やケアの内容を共有することで、すべての職種が患者さまの状態を的確に把握することが可能です。切れ目のないサービスを提供できるため、治療やケアの質が向上すると期待されます。
■患者さまの多種多様なニーズに対応できる
一つの問題に対する捉え方は職種ごとに異なるため、多職種連携により様々な角度からのアプローチが可能となります。患者さまの症状や置かれている状況ごとに異なる多種多様なニーズにも対応できることがメリットの一つです。
■お互いに不足している専門知識を補完できる
地域包括ケアシステムでは、医療や介護、予防、住まい、生活支援などのサービスの包括的かつ継続的な提供が重要です。専門知識を有する分野は職種ごとに異なるため、お互いに不足している専門知識を補完し合うことで、患者さまのQOL(Quality Of Life/生活の質・人生の質)向上が期待されます。
多職種連携を行ううえで注意すべき点は?
多職種連携を実際に行ううえでは、どのような点に注意すべきなのでしょうか。順にみていきましょう。
多職種間の素早く的確なコミュニケーションを心がける
多職種連携では、それぞれの異なる職種間における良好なコミュニケーションが求められます。患者さまの変化に気づいた際は、チームメンバーに素早く伝えましょう。一方で、入手した情報はしっかりと吟味し、不必要な情報を安易に伝えないよう意識することも重要です。
多職種間での知識、職域の差に留意する
地域包括ケアシステムのなかでは、異なる資格をもつ多職種が働いています。同じ職種同士では問題なく伝わる内容でも、職種が異なると前提となる知識や経験に差が生じるため伝え方に注意を要する場合も。相手の立場に立った情報共有を心がけるようにしましょう。
患者さまを含めた多職種全員で、治療の目標を明確にする
チーム医療では、一つの目標に向かって各々が専門性を発揮することにより、効率の良い治療やケアが可能となります。目標が明確になっていないと職種間で認識に食い違いが生じてしまう恐れがあるため、患者さまを含めた多職種全員のなかで、治療の目標を明確にしましょう。
多職種連携における薬剤師の役割とは?
医療技術の進歩とともに薬物療法は高度化しており、複雑な取り扱いを要する医薬品も増えています。ジェネリック医薬品の種類は増え続け、服用の利便性を高めた特殊な剤型の開発が進められるなど、薬剤全般の幅広い知識が求められるようになりました。そうしたなかで、「薬に関する対応は薬剤師にお願いしたい」という声が増えつつあります。
チーム医療において、医薬品の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することは、医療の安全を確保するうえで非常に有益です。患者さまが服用している医薬品や残薬の管理、飲み合わせの確認などは、薬物治療の最高責任者として、薬剤師の役割が期待されています。
地域の勉強会やカンファレンスに参加するなど、普段から医師や看護師、ケアマネジャーなどの多職種とコミュニケーションをとる機会を作るようにしましょう。
多職種連携において活躍できる薬剤師になるために
この記事では、在宅医療の現状と課題について確認しつつ、多職種連携の概要や重要性、薬剤師の役割について解説していきました。多くの医療従事者が多職種連携に取り組むなかで、薬局や薬剤師の参加はまだまだ十分とは言えない状況です。在宅医療をはじめとする地域医療においても、訪問看護師が薬剤管理を担っているケースも珍しくありません。
多職種連携において薬剤師が力を発揮していくためには、多職種からの依頼を待つだけでなく、提供できるサービスについて提案していくことが重要です。薬学的知識や調剤のスキルに加えて、コミュニケーション能力も身につけるようにしましょう。
ファルマラボ編集部
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