プログラフカプセル
Q |
何のお薬?処方目的は? |
A |
主にT細胞からの分化・増殖因子であるインターロイキン2やインターフェロンγなどのサイトカインの産生を選択的に阻害して作用を発揮する強力な免疫抑制剤です。臓器移植の際に拒絶反応の要因となる免疫を抑えたり、自己免疫疾患で亢進している免疫を正常化します |
Q |
併用禁忌の薬剤は? |
A |
本剤は高カリウム血症の発現率が高く、カリウム保持性利尿剤との併用によりその可能性が高まる恐れがあるためスピロノラクトンやトリアムテレン等が、また、血中濃度を上昇させる可能性があるため本剤と同様にCYP3A4の基質であるシクロスポリン及びボセンタンが併用禁忌となっています。その他、生ワクチンの接種も禁忌です。 ※なお、タクロリムスからシクロスポリンに切り換える場合はシクロスポリンの最終投与から24時間以上経過後に本剤の投与を開始することが望ましいとされています。 |
Q |
重篤な副作用にはどのようなものがあるか? |
A |
様々な重篤な副作用が報告されています。主な初期症状として、尿の減少・全身のむくみ・喉の渇き(急性腎不全・ネフローゼ症候群)、動悸・全身のむくみ・胸痛(心不全・不整脈・心筋梗塞・狭心症)、口渇・多飲・多尿・易疲労感(糖尿病・高血糖)、出血傾向・易疲労感・むくみ(血栓性微小血管障害)などがありますので、これらの症状出現時は速やかに受診するように指導しましょう。 |
Q |
剤形による生物学的同等性の違い |
A |
顆粒とカプセルの生物学的同等性は検証されていません(顆粒のカプセルに対するCmax比及びAUC比の平均値はそれぞれ1.18及び1.08)。従って、両剤形の切り換え及び併用に際しては、血中濃度を測定して製剤による吸収の変動がないことを確認することが求められています。 |
Q |
飲食物との相互作用 |
A |
本剤は主にCYP3A4で代謝されます。CYP3A4の代謝を阻害するグレープフルーツジュースとの併用で作用が強くなる恐れがあり、逆にCYP3A4を誘導するセイヨウオトギリソウ含有食品との併用で血中濃度が低下する恐れがありますので、摂取を控えるよう指導します。飲食物だけではなく、サプリメントなどについても確認しましょう。 個体差と遺伝子情報 タクロリムスなどの免疫抑制剤は、治療域が狭くかつ個体差が大きいことから、TDMが必須の薬物とされていますが、この個体差は肝臓や小腸に存在する薬物代謝酵素であるチトクロムP450(CYP)の遺伝子多型や併用薬とのCYPを介した相互作用が原因のひとつとされています。 タクロリムスに関連し、CYPに着眼して適正な薬物治療を行う例として、①PPIの中で比較したときに、CYP2C19の遺伝子多型の影響を受けず、タクロリムスの薬物動態に影響を与えなかったラベプラゾールが選択されることが望ましい、②健常者や自己免疫疾患患者では、CYP3A5*1の保持者は非保持者に比べてタクロリムスのクリアランスが1.5倍高かったため、自己免疫疾患患者におけるタクロリムス投与時にはCYP3A5遺伝子多型を解析することが重要、などが報告されています。 テーラーメイド医療の推進が叫ばれて久しいですが、同じ疾患でも効果的な薬物を選択したり相互作用を含む重篤な副作用の回避など、適正な薬物治療を実施するためには、個体差の原因である薬物動態等に関わる要素の遺伝子情報の把握が必須であり、それらと様々な薬物との関係は、今後ますます明らかにされていくことでしょう。 弊社でもCYPの遺伝子多型を解析する「お薬体質検査」を取り扱っています。テーラーメイド医療を望む患者さまが保険点数の付かない遺伝子情報を薬局を介して入手し、それを基に薬局薬剤師が、より適正な薬物治療を実現すべく医師に処方変更を提言する、そのような日が来るのもそう遠くないのかもしれません。 |
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