ディオバン錠
Q |
何のお薬?作用機序は? |
A |
適応症は「高血圧症」です。降圧薬の中でもアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)に分類される薬剤で、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系のアンジオテンシンⅡ(AⅡ)受容体に結合し、AⅡの生理作用を阻害することで降圧作用を示します。血管調節系のみでなく心肥大や動脈硬化などの心血管リモデリングにも関与し、メタボリックシンドロームなどの合併症にも密接に関係しています。 AⅡ受容体のサブタイプ
AⅡ受容体には、全身に非特異的に発現しているAT1 受容体と、心血管疾患・障害時に特異的に発現し、AT1受容体と拮抗する作用を示すAT2受容体の2 つのサブタイプの存在が知られています。AT1 受容体はAⅡにより活性化され、神経細胞障害、血管収縮、左室肥大、体液貯留などの作用を示し、AT2 は抗酸化ストレス、抗炎症作用、細胞増殖抑制などの作用を示します。ディオバンは、AT1 受容体への選択性が高い(約30,000 倍) ことが確認されています。 |
Q |
ARBとACE阻害薬の違いは? |
A |
ARB、ACE阻害薬共にAⅡに作用して降圧作用を示しますが、ARB はAT1 受容体に直接結合してAⅡの生理作用を阻害することで、ACE阻害薬はACE活性を阻害してAⅡの生成を抑制することで降圧効果を発現させます。また、ACE 阻害薬はレニン・アンジオテンシン系だけでなく、ブラジキニンの分解を抑制することで血管拡張性プロスタノイド(PGE2、PGI2)や内皮由来血管弛緩因子である一酸化窒素の遊離を促進させ、血管を弛緩させることで血圧を下げます。ACE 阻害薬の代表的な副作用である空咳は、このブラジキニンが蓄積することで発現します。 |
Q |
服用方法は?飲み忘れたら? |
A |
1日1回の服用により24時間安定した血圧コントロールが可能です。食後服用は空腹時服用より血中濃度が有意に低下するという報告がありますが、降圧効果に有意差はないことが臨床試験で確認されています。また、服用開始から2~4週で降圧効果が得られるため、服用コンプライアンス維持の為の指導を行いましょう。また、朝昼晩どの時間帯でも効果は変わらないため、飲み忘れに気づいたらすぐに服用し、次の服用とは8時間以上の間隔を空けるよう指導しましょう。 |
Q |
注意すべき副作用は? |
A |
重篤な副作用として血管浮腫や間質性肺炎、横紋筋融解症などがあります。発現頻度の高い副作用としてはめまい、腹痛などがありますが、投与量を増やしても副作用の発現率は増加しないことが確認されています。 |
Q |
腎障害患者さまへ使用する際の注意点は? |
A |
本剤は主に胆汁排泄されるため、腎機能障害が軽度~中等度の患者さまでは投与量の調節は特に必要ないとされています。さらに、臓器保護効果も報告されていますが、血清クレアチニン値が3.0mg/dL 以上の重篤な腎機能障害のある患者さまの場合、過度の降圧などによる腎潅流圧の低下によりまれに腎機能を低下させる可能性があるため注意が必要です。患者さまから血液検査結果を聞き取り、腎機能障害の程度を把握しましょう。 インバースアゴニスト作用
インバースアゴニスト作用とは、AⅡのAT1受容体への結合を阻害すると共に、AT1 受容体の自律活性を抑制し、部分活性型から不活性型にする作用です。インバースアゴニスト作用のないARB は伸展刺激により構造変化が起こると受容体から解離し、心肥大や心筋線維化を起こしますが、この作用を持つARB は構造変化を阻害し、心肥大や心筋線維化を起こさないことから臓器保護作用を示します。ディオバンはこの作用を持ち、ブロプレス、オルメテック、イルベタン、アバプロも同様の作用を持つとされています。 |
Q |
海外ではどのように使われている? |
A |
日本では最大投与量は160mgですが、海外では320mgに設定されている国もあります。また、国内では承認取得していませんが、海外では慢性心不全に対する適応を取得し、1日2回投与とする国もあります。なお、国内および海外で、高血圧症患者さまを対象に本剤160mgの1日1回投与と80mgの1日2回投与を比較したデータがありますが、降圧効果に有意差はありませんでした。 |
Q |
合剤について |
A |
バルサルタンには、アムロジピンとの合剤としてエックスフォージ配合錠、ヒドロクロロチアジドとの合剤としてコディオ配合錠があります。ディオバンとの併用時は投与量等に注意しましょう。 |
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