服薬指導に活かす医薬品情報

ルティナス腟錠

Q

何のお薬?処方目的は

A

一般名はプロゲステロンで、適応症は「生殖補助医療における黄体補充」。生殖補助医療(ART:assisted reproductive technology)における黄体補充の効能・効果を有した本邦初の膣内投与製剤として、2014年12月に販売を開始し、2022年4月に不妊治療の保険適用に伴って薬価収載されました。プロゲステロンは子宮内膜を受精卵着床のための周期的準備状態にさせる重要なホルモンで、様々な成長因子、サイトカインの調節を介して胚の子宮内膜への着床過程、子宮内膜機能の改善等に関与しています。


Q

生殖補助医療(ART)と黄体補充

A

ARTとは、体外受精(IVF:in vitro fertilization)、顕微授精(ICSI:intracytoplasmic sperm injection)、胚移植(ET:embryo transfer)、ヒト卵子・胚の凍結保存ならびに凍結胚移植等の技術に対する総称です。胚移植には、採卵の2~5日後に移植する新鮮胚移植と、以前凍結しておいた胚を融解して移植する凍結胚移植があり、着床をスムーズに進行させ妊娠維持に必要な黄体機能を補助する目的で、黄体補充が行われます。


Q

用法・用量は?

A

1回100mg(1錠)を1日2~3回、腟内に投与します。投与期間は以下の通りです。

新鮮胚移植の場合
採卵日から最長10週間(または妊娠12週まで)
ホルモン補充周期下での凍結胚移植の場合
エストロゲン投与により子宮内膜が十分な厚さになった時点から最長10週間(または妊娠12週まで)

腟内への挿入には専用のアプリケータを用います。アプリケータの先端に薬剤をはめ込んだ後、立位、座位または仰向けになり、膝を曲げた状態で錠剤とともに、アプリケータをゆっくりと腟内に挿入します。挿入の目安はアプリケータの半分強(5~7.5cm)です。その後、アプリケータの押し出し棒を押し、錠剤を放出します。なお、濡れた手で薬に触れると崩れることがあるため、注意しましょう。


Q

主な副作用は?

A

頭痛、傾眠、性器出血(各1.9%)が起こることがあります。また、重大な副作用として、血栓症があります。血栓症は本剤での発症報告はありませんが、性ホルモン製剤の血液凝固・線溶系に対する影響から種々の血栓症等が報告されているため注意します。


Q

服薬指導実践編~チャレンジしてみよう!

婦人科を受診しているAさま(34歳 女性)が以下の処方箋をお持ちになりました。(8月30日受診)


【Rp1】エストラーナテープ0.72mg 16枚

1回4枚 下腹部、臀部に貼付 2日に1回貼り替え

【Rp2】ルティナス腟錠100mg 18錠

1回1錠 1日3回 膣内に挿入(9月1日より開始)※【Rp2】は、新規追加


Aさまは2年前より不妊治療を続けており、今回初めての凍結胚移植を予定しています。Aさまから、「エストラーナテープは月経3日目から使用しています。子宮内膜が厚くなっていることが確認でき、移植日が9月6日に決まりました。膣錠は初めてなので不安です。使用する上で注意点はありますか?」と質問がありました。あなたならどう答えますか?


A

【回答例】

ルティナスは、子宮内膜に作用して受精卵を着床しやすくする作用のある薬です。移植日から逆算して膣錠の投与開始日を決めていますので、使用を忘れないよう注意が必要です。カレンダーに印を付けたり、電子版お薬手帳で忘れ防止のアラームを設定しておくとよいでしょう。ルティナスは濡れた手で触れると崩れることがあるため、手を洗った後は十分乾かしてから薬に触れるようにしてください。専用のアプリケータを用いて1日3回、1回1錠ずつ膣内に挿入します。薬の使用により頭痛や性器からの出血が起こることがあります。気になる場合は医師・薬剤師へご相談ください。


掲載日: 2024/07/11
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