フロセミドの血中濃度を上げる恐れがあるHIF-PH阻害薬(腎性貧血治療薬)はどれでしょうか?

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フロセミドの血中濃度を上げる恐れがあるHIF-PH阻害薬(腎性貧血治療薬)はどれでしょうか?

バフセオは有機アニオントランスポーター3(Organic Anion Transporter3:OAT3)を阻害するため、その基質となる薬(フロセミド、メトトレキサートなど)の作用が強く出る恐れがあります。

OAT3とは、腎臓に存在する輸送タンパク質で、近位尿細管上皮細胞の血管側にあり、薬物を血中から近位尿細管上皮細胞へ取り込む働きをしています。

添付文書より、フロセミド40mgとバフセオ600mg(最大用量)を併用した場合、フロセミドのCmaxは約1.7倍、AUCは約2倍に上昇しています。

バフセオの用量により血中濃度の上昇幅は変化すると考えられるため、一概に言えませんが、患者さまの病態によってはフロセミドを用量調節するなどの対応が必要となるでしょう。

例として、腎機能が低下したうっ血性心不全のある患者さまでは、利尿薬の作用が過度に出過ぎると、腎機能の悪化、血圧低下、低カリウム血症などが起こる恐れがあります。

また、HIF-PH阻害薬の一部は、多価陽イオンを含有する経口製剤(カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウムなど)と併用すると、血中濃度が低下して作用が減弱する恐れがあるため注意が必要です。

エベレンゾ、バフセオ、エナロイ、マスーレッド(モリデュスタットナトリウム)は、これらと併用する場合、薬剤ごとに時間の間隔をあけて投与する必要があります。

※エベレンゾ:前後1時間以上間隔をあけて投与。
※バフセオ:2時間以上間隔をあけて投与。
※エナロイ:3時間又は投与前1時間以上間隔をあけて投与。
※マスーレッド:前後1時間以上間隔をあけて投与。

一方で、ダーブロックはこれらの影響を受けないので、同時に服用しても問題ありません。ただし、クロピドグレルと併用すると、ダーブロックの血中濃度が上がり、作用が強く出る恐れがあるので注意が必要です。

処方監査・服薬指導のPOINT

HIF-PH阻害薬には、併用注意が多くあります。併用注意は、一律に対応するのではなく、患者さま個々に応じた対応が求められます。

とくに、多価陽イオンを含有する経口製剤との併用で間隔をあける必要がある薬が処方された時は、併用薬をよく確認してください。

併用されている場合、薬を飲む時間をずらすなどの対応が必要になります。正しく服用できるよう、患者さまにしっかり説明しましょう。

濱本 幸広(はまもと・ゆきひろ)さん
京都薬科大学卒、薬剤師。
調剤併設ドラッグストア、調剤薬局、派遣薬剤師など、数多くの経験をしながら処方鑑査の腕を磨く。
2022年10月、4分類法を活用した処方鑑査の指南書『達人の処方鑑査術』を出版、好評発売中。
▼運営サイト
https://kusuri-shidousen.com
掲載日: 2025/03/17
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります

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