腎機能に応じて用量を減量する必要がある糖尿病治療薬はどれでしょうか?

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腎機能に応じて用量を減量する必要がある糖尿病治療薬はどれでしょうか?

    オングリザ(サキサグリプチン)を中等度以上の腎障害(クレアチニンクリアランス50mL/min未満)がある患者さまに投与する場合、2.5mgへ減量する必要があります。検査値表に記載されている腎機能に関する検査値として、血清クレアチニン(S-Cr)または推算糸球体濾過量(標準化eGFR)がありますが、添付文書でよく記載されているクレアチニンクリアランス(Ccr)とは違います。では、どのように考えて添付文書と照らし合わせれば良いでしょうか?

    方法として、検査値表に記載されているS-Cr及び身長、体重、年齢、性別から個別化eGFRを計算して、個別化eGFRをCcrの推定値として用いる方法を推奨しています。日本腎臓病薬物療法学会のホームページにある「eGFR・eCCrの計算」で個別化eGFRを求めると良いでしょう。

    また、日本腎臓病薬物療法学会のホームページで掲載されている「腎機能低下時に最も注意が必要な薬剤投与量一覧」は、腎機能が低下した患者さまに注意すべき薬がまとめられていますので確認しておきましょう。

    検査値を薬歴に残しておけば、腎障害の程度に応じて減量または禁忌となる薬が処方された時に、適切に処方鑑査をできます。腎機能の数値は経時的な変化が少ないためリアルタイムの検査値でなくても、直近1年間の検査値であれば参考になると考えます。マイナンバーカードと連携した特定健診情報でも腎機能を確認できることがあるので活用しましょう。

    まったく腎機能がわからない場合、推測する方法として慢性腎臓病(CKD)の治療に特徴的に使われている薬が併用薬にあれば注意します。

    たとえば、利尿薬(主にループ系利尿薬)、経口吸着炭素薬、腎性貧血治療薬、カリウム吸着薬、CKDに適応がある薬(カナグリフロジン水和物(カナグル)、ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(フォシーガ)、エンパグリフロジン(ジャディアンス)、フィネレノン(ケレンディア)など)の併用薬があれば、患者さまに腎機能の低下がないか確認をして、用量が適切かどうか疑わしいときは疑義照会をしても良いでしょう。

    処方監査・服薬指導のPOINT

    腎機能に応じて減量または禁忌となる薬が処方された場合、患者さまの腎機能を評価して処方鑑査をする必要があります。

    また、腎機能に応じて調節された用量で処方されている場合、患者さまの腎機能が低いため調節している可能性があるので、直近の検査値表をもっていないか確認をして、用量が適切に処方されているか確認すると良いでしょう。

    たとえば、オングリザが2.5mgで処方されていれば、個別化eGFRが50mL/min未満の可能性があります。ただし、病態に応じて調節している場合もあるので注意が必要です。

    参考として、DPP-4阻害薬ではリナグリプチン(トラゼンタ)とテネリグリプチン臭化水素酸塩水和物(テネリア)は腎障害の程度に応じて減量する必要はないので、CKDの患者さまでも問題なく使えます。

    濱本 幸広(はまもと・ゆきひろ)さん
    京都薬科大学卒、薬剤師。
    調剤併設ドラッグストア、調剤薬局、派遣薬剤師など、数多くの経験をしながら処方鑑査の腕を磨く。
    2022年10月、4分類法を活用した処方鑑査の指南書『達人の処方鑑査術』を出版、好評発売中。
    ▼運営サイト
    https://kusuri-shidousen.com
    掲載日: 2024/12/27
    ※医薬品情報は掲載日時点の情報となります

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