- 公開日:2020.01.27
「CRA(臨床開発モニター)」ってどんな仕事?仕事内容や年収などを解説【薬剤師のお仕事ガイド】
薬の臨床試験である治験を支える臨床開発モニターを、別名「CRA(シーアールエー)」と呼びます。新薬開発の第一線で活躍したい方には憧れの職業ですが、実際にCRAがどのような仕事をしているのか知らない方も多いでしょう。
そこで今回は、【CRAの仕事内容/CRAになる方法/CRAの年収】などについて解説していきます。CRAを目指したい方、転職を考えている方はぜひチェックしてみてください。
「CRA(臨床開発モニター)」とは?
CRAとは、「Clinical Research Associate」の略称。「臨床開発モニター」や「モニター」と呼ばれることもあります。
主な仕事は、治験(医薬品の臨床開発)が医療機関において正しく治験実施計画書に基づいて行われているかをチェックすること。有効性と安全性を確かめた上で医薬品を上市するため、医療機関と企業との架け橋となって業務を推進することが求められます。
CRAに従事するには、2つのパターンがあります。製薬会社の開発部門に所属するCRA、企業から臨床試験を受託しているCRO(Contract Research Organization)に所属するCRAです。この違いについては、下部「CRAになるには?」で解説しているのでご確認ください。
「CRO」や「CRC」との違い
似た言葉に、「CRO(Contract Research Organization)」と「CRC(Clinical Research Coordinator)」があります。CROは開発業務受託機関、つまり治験を委託している企業。CRCは臨床試験のコーディーネーターで、薬剤師や看護師が務めています。
CRAの主な役割や仕事の流れについて
CRAの主な役目は、医薬品の有効性と安全性を調べるために行われる臨床試験が、あらかじめ計画された治験実施計画書に則って正しく進行しているかを確認することです。その他、治験を正しく円滑に行うためにサポートしたり、さらに実際に症例データを収集し進捗状況を管理したりすることもあります。確実に間違いなく治験が進められるようにアプローチすることで、いち早く医薬品を市場に出す責務も担っているのです。
仕事の流れ-治験開始前・治験実施中・治験終了後-
CRAには治験が行われている実施中だけではなく、その前後にも大切な業務があります。治験開始前から治験終了後まで、CRAがどのような業務に携わっているのか見てみましょう。
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▼治験開始前
・治験を実施する医療機関および治験責任医師や治験担当医師を選定
・治験の実施依頼と契約の締結
▼治験実施中
・モニタリング業務(状況確認、症例報告書(CRF)の確認、スケジュール管理など)
・モニタリング報告書の作成
・治験コーディネーターへの進捗状況確認
▼治験終了時
・治験責任医師への終了報告
・未回収のCRF回収、治験薬回収などの確認
【解説】治験開始前の業務について
まずは、治験を実施する医療機関、および治験責任医師や担当医師を選定します。対象医薬品の分野における実績やなどを加味して検討するのが基本です。治験の結果を左右する大事なステップですので、入念な調査や情報収集を経て判断します。
医療機関に治験を依頼し、承諾をいただけたら契約を締結します。「治験実施計画書」に問題がなく、合意を得られればスタート。治験実施計画書はプロトコルとも呼ばれ、結果が大きく変わることもあるので、統計解析などの専門家も入れて十分に吟味します。
【解説】治験実施中の業務について
治験の進捗を管理します。これが、CRAの最も重要な仕事・モニタリング業務です。
まず、臨床試験を行う上で必ず遵守しなければいけない国の規則「GCP(Good Clinical Practice)」が遵守されているか確認します。GCPの2大目的である、「被験者の安全性と権利の保護」「治験から得られたデータの信頼性の確保」が保証されていること、さらに治験実施計画書に則って正しく治験が進行しているかどうかを確認します。
また、症例報告書(CRF)の回収も行います。CRAは直接カルテを回収することはできないので、医師が記載したデータをカルテと直接照合して間違えがないかをチェックすることが基本です。こうした直接閲覧(SDV)も大切な仕事と言えるでしょう。
また、帰社後はモニタリング報告書を作成します。CRFに記載漏れや間違いがないかを慎重に確認の上、1日のモニタリング業務を記録します。治験の被験者が治験実施計画書から逸脱していないこと、用法用量や投与量を守って治験が行われていることなども確認します。
【解説】治験終了時の業務について
すべての被験者への投与が終了となれば、CRFや治験薬を回収します。このとき、全てのCRFなどの最終確認を行い、記載漏れや間違いがないことも徹底的に確認します。治験実施責任医師に治験の終了を報告して、晴れて治験が終了します。
CRAになる方法は?必要なスキルをご紹介
製薬メーカー所属のCRAは、採用しない企業もあることから、非常に狭き門と言われています。しかし、CRO所属のCRAとして働く方法もあるのでご安心ください。ここでは、メーカー所属とCRO所属の違いについても解説します。
CRAになるために必要なスキル
医師と対面で会話ができる知識、データを正確に収集して管理する能力、スケジュール管理能力などが求められます。しかし、CRAの場合はある特定の資格や試験を受ける必要はありません。一定以上のスキルがあれば、誰でも挑戦できる仕事なのです。
そうした中でも、理系出身者が採用される傾向にあります。薬理学や薬剤学などを学んでいる薬剤師はCRAとして活躍される方が多く、就職活動でも有利でしょう。そのほか、看護師や臨床検査技師なども経験を活かしてCRAにキャリアチェンジする方もいます。
企業所属とCRO所属の違いとは?
CRAとしてのキャリアには、製薬メーカーで働くパターンとCROに所属するパターンがありますが、どちらも実際に行う仕事に大きな違いはありません。
製薬メーカーの場合は、開発部門に所属して働くことになります。自社製品の開発に携わるので、自社で開発した医薬品の上市に貢献できることにやり甲斐を感じられるでしょう。また、製薬メーカーのCRAは、CROに所属するモニターを管理することもあります。
一方で、CROの場合は業務委託扱いになるため、自分の会社の製品を開発しているわけではありません。しかし、CRO所属の場合は、CRAの業務だけに専念することができるうえ、異動になって仕事が変わるリスクが少なくなるというメリットがあります。
CRAはどの程度の年収が見込める?
CRAは世間の平均年収と比べると年収が高い仕事であるといえるでしょう。どの程度の年収が見込めるのか、CRAの給与テーブルを参考として見てみましょう。
入社間もない時期は、一般的な薬剤師と大きな差はありません。キャリアを重ねて中堅社員やディレクター職となることで、年収は大きくアップします。中には、30代から年収が1000万円を超えるようなCRAもいます。さらに、企業によっては基本給を抑える代わりに、業績によってインセンティブを与える場合も。転職の際は、よく調べることをオススメします。
また、製薬メーカー勤務の場合の方が、開発医薬品の特許期間に大きな売り上げが見込めるため、CRO所属の場合と比べて平均収入が高い傾向にあるのがポイントです。ただし、中堅社員となるまでの大きな差が出ないこともあるので、自分がどの程度の期間働き続けたいのかキャリア形成を考えて選ぶことが大切です。
憧れのCRAになるために
今回はCRAの仕事についてご紹介しましたが、参考になりましたでしょうか?
いわゆる、「開発マン」であることから、憧れの仕事でもあるCRAは根強い人気があります。企業によっては採用人数が非常に少ないこともあり、そう簡単に就職が決まらないこともありますが、薬剤師の土台があるなら決して難しい仕事ではありません。ぜひ、積極的に情報収集を行なって、CRAへの道を切り拓いていきましょう。
ファルマラボ編集部
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