- 公開日:2022.12.22
『外来抗感染症薬認定薬剤師』とは?2022年4月からの新制度を解説!【薬剤師の資格入門】
薬剤師がキャリアアップを目指すうえで、一つの手段となる資格取得。資格の勉強を通して自身のスキルアップにつながったり、資格をもつことにより手当が支払われたり、より責任あるポジションの仕事を任されたりする可能性があります。しかし、薬剤師の資格は分野ごとにさまざまな種類のものがあり、どの資格を取ればいいのか悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
そんななか、2022年4月に新しい制度が始まりました。それが、外来抗感染症薬認定薬剤師です。本記事では、この外来抗感染症薬認定薬剤師について、制度の背景や資格の取得方法、取得するメリットなどを詳しく解説します。
外来抗感染症認定薬剤師とは
外来抗感染症認定薬剤師は2022年4月から新しく新設された公益社団法人日本化学療法学会による認定制度です。外来処方を行っている薬局薬剤師を対象とした資格で、取得することで外来診療における感染症や抗感染症薬、薬剤耐性に関して専門的な知識を有すると認定されます。
制度設立の背景と展望
そもそも、なぜ新たに外来抗感染症認定薬剤師の制度がスタートしたのでしょうか。その背景には、抗菌薬の効かない薬剤耐性(AMR)菌への対策を薬剤師が中心となり担っていくことが意図されています。病院薬剤師ではこの仕組みができつつあるものの、とくに日本における抗菌薬の使用は外来診療で用いられるケースが多いことから、外来診療や在宅医療領域における適正使用を薬局薬剤師が中核となり推進していかなければなりません。そのため、外来抗感染症薬認定薬剤師については、これを担う薬局薬剤師の専門性向上が大きな目的とされているのです。
なお、将来的には、外来抗感染症薬認定薬剤師の配置を専門医療機関連携薬局の要件とする考えも示されています。
外来抗感染症薬認定薬剤師制度 制度概要・申請方法|公益社団法人日本化学療法学会
新たに始まる「外来抗感染症薬認定薬剤師制度」|DI Online
【化学療法学会】外来感染症薬で認定制度‐薬局向け、耐性対策推進へ|薬事日報ウェブサイト
外来抗感染症認定薬剤師の取得方法
外来抗感染症薬認定薬剤師について、具体的な取得方法をご紹介します。ここでは日本化学療法学会の公表している情報をもとに取り上げますので、誤った手順を踏まないよう参考にご覧ください。
取得条件(申請基準)
外来抗感染症薬認定薬剤師を取得するには、以下要件を満たす必要があります。
- 1.日本国内における薬剤師免許を持ち、薬剤師として優れた人格及び感染症化学療法の見識を備えている
- 2.申請時に、薬剤師として抗感染症薬の外来調剤と服薬指導等の実務経験が3年以上あり、これを示す所属施設長の証明が得られる
- 3.申請時において、日本化学療法学会の正会員である
- 4.抗感染症薬の外来調剤および服薬指導、疑義照会(処方介入)等、自ら関与した15例以上の症例(在宅における3症例、疑義照会による処方介入3症例を必ず含む)を報告できる
※15例の症例報告では、同じ症例を複数の申請者が使用しないこと。使用した場合は失格となり、以後5年間新たな申請を受け付けないとされています - 5.本学会の主催する学術集会への参加および指定されるプログラムや認定委員会が指定する各地域の研修プログラムなどにおいて、申請時から遡って3年以内に必要な単位数を30単位以上取得している。
<単位取得>
「5.本学会の主催する学術集会への参加および指定されるプログラムや認定委員会が指定する各地域の研修プログラムなどにおいて、申請時から遡って3年以内に必要な単位数を30単位以上取得している。」の申請に求められる研修プログラム等の単位取得について、以下が対象となります。
▼下記にて15単位以上
日本化学療法学会総会もしくは支部総会において指定されたプログラムへの参加(各1回以上) | 5単位 |
日本化学療法学会総会への学会参加(1回以上) | 3単位 |
日本化学療法学会支部総会への学会参加(1回以上) | 2単位 |
▼下記にて選択15単位以上
外来抗感染症薬認定薬剤師認定委員会主催の研修プログラムへの参加 | 5単位 |
外来抗感染症薬認定薬剤師認定委員会が指定する感染症化学療法に関連したプログラムへの参加 | 5単位 |
外来抗感染症薬認定薬剤師認定委員会の指定する関連学会等(日本感染症学会、日本環境感染学会、日本TDM学会、日本医療薬学会、日本薬学会年会日本薬剤師会学術大会)の学術集会への参加 | 2単位 |
申請方法
外来抗感染症薬認定薬剤師の認定を受けるには、前述の条件を満たしたあと、以下書類を日本化学療法学会に提出・申請します。
<申し込み後の流れ>
申請の締め切り後に「症例一覧」の書類審査が行われ、受験資格の有無について通知があります。そして、受験資格が得られたら認定試験を受け、試験合格後に外来抗感染症薬認定薬剤師の資格が取得できます。認定試験に合格したら認定料(20,000円)を支払い、外来抗感染症薬認定薬剤師の資格を取得できます。
認定試験
認定試験の実施は年1回。出題範囲については定められていませんが、外来診療における感染症化学療法について幅広く出題されます。また、試験に不合格となっても、1回のみ翌年の再審査を受けることが可能です。その際は、とくに申請書類に提出などは不要となります。
更新申請
外来抗感染症薬認定薬剤師は、5年毎の更新が必要です。更新審査は毎年1回実施され、希望する場合は、更新申請日の時点で下記要件を満たさなくてはいけません。
※認定期間中に留学等の理由で海外に長期在住した場合は、申請によりその期間相当分の認定期間を最長5年まで延長することができます。
なお、以下書類を日本化学療法学会に提出・申請します。
外来抗感染症認定薬剤師のメリット
外来抗感染症認定薬剤師は、2022年に始まったばかりの新しい資格です。そのため、資格保有者がどのように活躍できるのかは、今後に期待される部分が大きいでしょう。しかし、昨今では感染症対策への重要性が高まっており、外来患者に対する抗感染症薬の適正使用は必要不可欠です。これに関する専門性を磨くことは、薬剤師としてのキャリアアップにつながっていくことでしょう。
そのほかにも、現在の職場に資格手当などが設けられていれば、昇給等も考えられます。周囲からも頼りにされ、より責任ある仕事を任されるようになるだけでなく、転職する際にも資格保有が有利に働くことは多いはずです。認定を受けておくことで、今後さらに薬剤師として活躍の場が広がることでしょう。
感染症領域の専門家として活躍する
今回は、2022年4月から新しく始まった外来抗感染症薬認定薬剤師の認定制度について詳しく解説しました。感染症対策の重要性が高まるなか、外来抗感染症薬認定薬剤師の資格取得は薬剤師のキャリアアップにおいて役立つものとなるはずです。
感染症領域での専門性を高めたい、また薬局薬剤師としてキャリアアップを目指す薬剤師は、本記事を参考に資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
ファルマラボ編集部
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