- 公開日:2022.08.31
病院薬剤師の年収は?業態・地域別のデータも比較
薬剤師の就業先には、調剤薬局やドラッグストアのほか、病院も人気の選択肢としてあげられます。では病院薬剤師として働く場合、どの程度の年収が見込めるのでしょうか。
今回は、病院薬剤師全体の年収のほか、業態別・地域別など2022年6月1日時点のファルマスタッフの掲載求人をもとに算出したデータを用いながらご紹介します。
病院薬剤師の年収は?
まずは、病院薬剤師の全体の年収について見てみましょう。ファルマスタッフの掲載求人をもとに算出したデータによると、2022年6月1日時点における病院薬剤師の全国・全業態の平均年収は538万円でした。これは、2020年の賃金構造基本統計調査による薬剤師全体の平均年収約565万円と比べると、やや少ない傾向が読み取れます。
【地域別】病院薬剤師の年収事情
国公立病院を除き、病院の年収には地域差もあります。以下に病院薬剤師の平均年収の上位15都道府県と下位5都道府県の地域をピックアップし、紹介します。
全国の病院薬剤師の年収のうち最も高いのは、茨城県の606万円。一方で、一番低かったのは宮崎県で、年収は370万円となっています。地域によっても年収は大きくバラつきがあることがわかります。
一般企業であれば大都市のほうが年収が高いイメージですが、「病院」はそうとも限りません。ここ数年は薬剤師の地域偏在が問題となっており、とくに病院薬剤師は深刻です。こうした背景からも、地方のほうが年収の高いエリアが多い傾向が見えてくるでしょう。
【業態別】病院薬剤師の年収事情
次に、業態別の年収について見ていきましょう。以下で一般病院と療養型病院、精神科病院、クリニックの全国の平均年収を比較してみます。
一般病院:523万円
療養型病院:533万円
精神科病院:545万円
クリニック:550万円
※2022年6月1日時点のファルマスタッフの掲載求人をもとに算出
データを比べると、クリニックの年収550万円が最も高く、一般病院の年収523万円が低い結果になっています。しかし、どの業態においてもさほど大きな差はありませんでした。
また、データを詳細に見ていくと、地域による年収の差が見られました。たとえば、一般病院では、沖縄県の年収600万円が最も高く、宮崎県の340万円。が最も低い。これが療養型病院になると、最も高いのが岐阜県の650万円、最も低いのが宮崎県の400万円です。ちなみに精神科病院は、最も高いのが高知県の650万円、最も低いのが滋賀県の420万円。クリニックでは富山県の750万円が最も高く、神奈川県の470万円が低い結果となりました。
大学病院の年収は?
大学病院の場合、国公立か私立かによっても年収が変わります。基本的に国公立の場合は国家公務員給与表に基づき給与が定められています。年収で言うと、国公立の初任給は年収約300万円程度、私立大は病院により異なりますが年収約350万円とされているようです。
詳しくは以下の記事で解説しているので、ぜひご確認ください。
薬剤師として大学病院に勤めたい!その魅力ややりがい、転職活動のポイントを解説
病院薬剤師の仕事と魅力
病院薬剤師の業務には、主に外来患者や入院患者に処方する薬剤の「調剤業務」があります。また、入院中の患者さまへの服薬指導や管理、入退院時の接続などを行う「病棟業務」は、病院薬剤師ならではの業務です。
調剤薬局や調剤薬局併設のドラッグストアとは異なり、患者さまのカルテや検査データを参照しながら薬物治療にあたれる点はメリットでしょう。また、病院内には医師や看護師などを始め、さまざまな専門性をもつ医療従事者が在籍しています。各分野におけるプロフェッショナルとチームとして切磋琢磨することで知識を深め、活躍の場も広がるはずです。
これからの時代、薬剤師には対人スキルが求められます。直接患者さまと接する機会が多い病院薬剤師は、対人スキルを磨くうえで経験を積みやすい環境にあると言えるでしょう。
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病院薬剤師としてキャリアアップするためにできること
では、病院薬剤師としてキャリアを積んでいくには、どういった手段があるのでしょうか。基本的には一般薬剤師として勤務し、薬剤部長(薬局長)に昇進する道がイメージしやすいかもしれません。しかし、薬剤師が病院で担う仕事は調剤業務や病棟業務だけでなく、製剤、治験、DIなどの分野にわかれて業務にあたる薬剤師もいます。それぞれの業務に対しての知識や経験を積むことで専門性を磨き、キャリアアップを図るのも一つの方法です。
そのほかにも、例えば「日病薬病院薬学認定薬剤師」などの資格を取得し、自身の強みを持つことも一つの手段として考えられます。転職時に有利となるだけでなく、現職で資格手当がもらえる可能性もあるでしょう。
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病院薬剤師の年収アップは自己研鑽と転職が近道
国立大学病院の場合、国家公務員となり給与基準が定まりますが、それ以外は病院によって給与水準もさまざまです。病院薬剤師として年収アップを考えるなら、まずは専門性を高めるなど自己研磨を図ることがキャリアアップにつなげる第一歩になるでしょう。また、年収には地域差もあるので、これまでと異なる地域への転職で年収アップも期待できます。
病院薬剤師は、多くの経験を培える仕事です。年収と言う一つの情報に左右されることなく、理想とする薬剤師に近づくために、必要なキャリア選択をしてください。
ファルマラボ編集部
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